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熱中症は予防できる!

 今年もすでに東京では4月21日、兵庫でも22日に夏日(最高気温25度以上)をむかえています。年々、年間を通して平均気温が上昇しており、例年5月、6月になると熱中症に関するニュースも耳にするようになります。熱中症=真夏!ではなく暑さに慣れていない身体でも起こりうることなので、今の時期から意識をしておくことが大切なのです。

 1日の中で一番気温が高くなる時間帯に屋外で最大限の力を発揮する必要がある選手たちをサポートしている身としては、いかに脱水や熱中症を出さないか、パフォーマンスやコンディションを低下させないように練習や試合を終えることができるか、、、毎年頭を悩ませています。

○なぜ水分補給が重要なのでしょうか?
 私たちの身体の約60%は水です。身体の中にある水は細胞内液や血液、リンパ液などの成分として存在しており、体内での化学反応をスムースに行ったり、栄養素や酸素を全身に運んだり、老廃物を除去するなど重要な働きをしています。また、体温調節にも関係しており、生きるために重要な働きをしているのです。真夏などの暑熱環境で運動をすると、大量の汗をかきます。これは汗が蒸発する時に熱が奪われるため、その作用により体温を下げようとする働きによるものです。つまり、人の体温は生命を維持するために発汗などの働きによって一定に保たれるようになっているのです。 汗として水分が排泄されてしまうと、体内の水分が不足している状態になります。その時にすぐに適切に水分補給を行わないと、脱水や熱中症を発症してしまうのです。

○熱中症を防ぐための水分補給方法!
 熱中症を防ぐためには、常に身体の水分量を保つ必要があります。そのため、「喉が渇いた」から水分 を摂取するのではなく、早めにこまめな水分補給を心掛けましょう。

○熱中症とは
 熱中症とは暑熱環境で発生する障害の総称で「熱けいれん」、「熱疲労」、「熱失神」、「熱射病」があります。それぞれ起こる原因と症状が違うため対処の方法も異なります。予防や対処のためにもしっかり知っておきましょう。

・「熱けいれん」
熱けいれんはたくさん汗をかいた後に水だけを摂取し、ナトリウムなどの電解質を摂取しなかった場合に起こり、筋肉に痛みを伴うけいれんなどの症状がみられます。対処法としては発汗量が多いときにナトリウムなどのミネラルが入ったスポーツドリンクや飲むこと。
運動時にはしっかりスポーツドリンクを準備するようにしましょう。

・「熱疲労」
 熱疲労は大量に発汗しているにもかかわらず、水分の補給が不十分であったとき、からだが脱水状態になり、脱力感や倦怠感、めまいや頭痛、吐き気などの症状などがみられます。対処法としてはスポーツドリンクや経口補水液で水分とミネラル類を摂取することですが、吐き気や嘔吐などにより水分が摂取できない場合は点滴などの処置が必要になります。
こまめに水分補給ができる環境を整えることも重要です。

・「熱失神」
 熱失神は暑い中ずっと立っていたり、急に立ち上がったり、運動後などに起こりやすいといわれています。体の熱を覚ますために皮膚の血管が拡張し、血圧が低下してしまうことにより、脳の血流が減少して怒ります。目眩や失神などの症状が見られます。対処法としては足を高くして寝ると回復することがあります。
日陰がない屋外や閉め切りの室内など運動をする環境への配慮も必要になります。

・「熱射病」
 体温が40度以上に上昇してしまい脳機能や体温調節など中枢機能に異常をきたした状態です。意識障害(応答が鈍い、言動がおかしい、意識がない)といった症状がみられ、進行すると昏睡状態になります。この状態が続くと脳だけでなく肝臓や腎臓などの多臓器障害をおこし、死亡率が高くなりとても危険です。対処法ですが、まずはすぐに救急車を要請することが重要です。どれだけ早く体温を下げられるかが重要となるため、救急車を待っている間冷却処置をする必要があります。

○コンディション、パフォーマンスを低下させないための水分補給方法!

●運動前から水分補給を 
 運動をしていない状態でも、尿や便、呼気や汗などによって排泄される水分の量は、1日で2.5ℓほどにもなります。体内で作られる水の量は0.3ℓ程度なので残りの2.2ℓは食事や飲料からとる必要があります。気温が高くなったり運動をする場合はさらに発汗量が増えるので、普段以上に水分を意識して摂取する必要があります。運動をする前から1時間あたり 250〜500mℓ程度を目安に補給を心がけましょう。

●運動中の水分補給
 その日の気温や湿度、運動の種類や強度などに よっても異なりますが、発汗量が多い時は特にこまめに水分を摂取するように気をつけましょう。練習中の選手を見ていると、1度に500mℓ1本を一気に飲んでしまうということもあり、単純にそんなに一気に飲めるなんてすごい、、、と思いつつ、、、一度に多量に摂取しても全て吸収てできるわけではないので、15〜20分ごとに1回200〜250mℓ程度を目安に摂取するようにしましょう。選手には「ごくごくごくごくごくくらい」にとどめて!と伝えています。

●何を飲むか
 発汗量が多い時は、汗の成分であるナトリウムを含むスポーツドリンクを選びましょう。選ぶポイン トは、100mℓあたり食塩相当量0.1〜0.2g、糖質(栄養成分表示では炭水化物と記されています)が4〜8g程度含まれているかです。スポーツドリンクは甘い!と感じる方もいるかもしれませんが、糖質が含まれていることで、腸管内での水分の吸収が速くなりので脱水や熱中症予防には必ず必要な成分です。そのため糖質が少ししか含まれていない 「カロリーゼロ」や「カロリーオフ」のスポーツドリンクでは、吸収の速度が遅くなってしまいます。

 また、経口補水液を脱水や熱中症予防に摂取している人もいるかもしれませんが、経口補水液はナトリウムなどの電解質をより早く体内に吸収させるために作られた飲料です。脱水や熱中症を防ぐためには電解質だけでなく水分も素早く吸収する必要があるため、脱水や熱中症の予防にはスポーツドリンクを選びましょう。脱水や熱中症のなんらかの症状がみられた場合は経口補水液を摂取することをお勧めします。飲料に記してある栄養成分表示を必ず確認し、条件や症状に合った飲料を選ぶようにしましょう。

●自分に適した量を知る方法
 同じ環境で同じ運動をしていても、人によって発汗量は異なるため、自分に必要な水分補給量を知っておく必要があります。運動中の水分補給量の過不足を知る方法として、練習前後で体重を測定する方法があります。 運動後の体重が運動前と比較して2%以上減少していた場合、水分摂取量が不足していたことになります。実際に合宿中に7人の選手の練習前後の体重変動を測定したことがあるのですが、同じ条件だったにもかかわらず練習後の体重の減少率が0.4〜2.5%とかなり差がありました。一般的に発汗によって体重が1%減少すると約0.3℃の体温が上昇し、さらに体重の約3%の水分が失われると、体温調節能力が低下すると言われています。

 体温の上昇は熱中症の危険だけでなく、 疲労感が増すことによりパフォーマンスの低下をきたします。
 練習前後の体重、練習中の水分摂取量、飲料の種類など何度か記録をし、自分やスポーツをする環境にあった水分補給方法を知るということはスポーツ選手にとってコンディショニングだけでなくパフォーマンスを維持するためにも重要です。是非やってみてください。

            夏の暑さが苦手で春から憂鬱、、、になる長坂でした。

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