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神保町 神田伯剌西爾のコーヒーゼリーについて


気がつけば4月も既に半分が過ぎ、バタバタしていた新学期も少しずつ落ち着いてきた。

大学の授業開始は火曜日からだったのだが、てっきり週初めから始まるものだと思い込んでいた私は、授業開始日の一日前に意気揚々と登校してしまった。


キャンパスのなかにもほとんど人がおらず、「空いている♫やっぱあたしラッキーガール♫」などとひとりでのほほんとしていたのだが、あまりに能天気すぎる。
そのまま指定された教室まで行き、ドアを開けると、そこには誰一人としておらず動揺。
自分の勘違いを疑い、何度もシラバスを見直すが11号館の7階で正しい。さらに混乱を極め、知人に助けを求めると「授業開始は明日から」という返信が帰ってきた。

なんだ。そのときになってようやく正しい情報を得た。ほっとすると同時に、あまりの間抜けさに苦笑。
春休み最終日に意気込んで登校する馬鹿がどこにいるだろう。
情報弱者はいつだって不利だ。エンストエンスト。

さて、ここで予想外に時間が生まれてしまった。このまま帰るのも勿体ない。勉強するにしても、あいにくパソコンと本しか持ち合わせていない。折角なのでなかなか行けなかった神保町の喫茶店にでも足を運ぶことにした。

神田伯剌西爾珈琲、字面だけでもう強そうだ。さぼうるやラドリオの近くにあるが、一風変わって大人っぽい雰囲気が漂っており、なんとなく避けていた。最近になって、急に伯剌西爾の一日十食限定の珈琲ゼリーが食べたくなった。神保町と限定に弱い女。

お店へと続く階段を降りると、そこには秘密の隠れ家ような地下空間が広がっていた。喫煙ブースのほうが広くておしゃれなことは事前に知っていたのでそちらへ。まわりの客層はサラリーマンや中年の男性が多く、みんなモクモクと煙を吐きながらしゃべっている。今時、タバコが吸えて談義できる喫茶店は貴重だ。

早速、珈琲ゼリーを注文し持ってきた文庫本を開く。よりにもよって夢野久作の魔夢物語であった。まあ、よい。しばらくまっていると、主役のお出ましだ。

大粒に盛られた珈琲ゼリーは、きらきら光を反射して褐色に輝き、視覚からもその弾力を感じさせる。そして、私が驚いたのは何といっても二種のソースたち。王道の生クリーム、そして黒蜜だ。どちらもかなりの量が用意されていて、困ることはなさそうだ。今まで珈琲ゼリーに黒蜜をかけたことなんて一度もなかった私だったが、これは正解だ!と確信し、一気に投入した。黒×黒なので見た目の変化はさほどないが、珈琲のシンプルな苦みに、黒蜜のコクと甘さが加わって非常によい。おいしい。では、生クリームをかければもっとおいしいにちがいない、と箍が外れたようにソースをかける。案の定おいしい。かければかけるほどおいしい!(激甘党)   

でもこういうのって、全部使わないのがマナーなのかなとか、店員さんに笑われていそうとか考えてしまいがちだが、なんと今日は一滴残らず使いきってしまった。ほろ苦い珈琲ゼリーに黒蜜と生クリームを足すことで、甘さと濃厚さが加わり、味覚が満たされてゆく。春の日差しに汗ばむ季節になってきたが、涼し気な珈琲ゼリーで幸せなひとときを堪能することができた。

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