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新幹線のタダ券と共に、ある意味贅沢な旅をした話。

突然だが、みなさんは「どこかにビューン」というサービスをご存じだろうか。
これはJR東日本が行なっているもので、Suicaを使って電車に乗ったり、JR東日本管内の駅ビルやコンビニで買い物をすると貯まる「JREポイント」を6000ポイント貯めると、ランダムで東日本の新幹線駅のどこかへの往復きっぷをプレゼントしてくれる、素晴らしいサービスだ。


現状は、出発駅が東京〜大宮のどこかに限定されたりと色々と条件はあるが、いつもなら1万円以上お金を出してどこかへ行く東日本へ旅行が、JREポイント6000ポイントを献上すれば「タダ」で行けてしまうという、素晴らしいものだ。

自分もこれでもかとNewDays駅ナカで買い物をし、JR東日本の定期券を買い、JR東日本の列車に乗り、少しでもポイントを貯める努力をしまくった。
4ヶ月くらいで貯まっただろうか。今回は「燕三条」が行き先に選ばれた。
これまで何度も別の旅で足を運んでいる新潟だが、今回は思わぬ形で向かうことになった。
そんな旅の雑記をここに記したい。

1日目
最初から結構な寝坊をかました。
でも大丈夫。どこかにビューンの乗車券、特急券は指定の列車に乗り遅れたり、別の駅から乗車したとしても、当日に限り後続の新幹線の自由席に乗る事ができる。
東京14:40発のとき325号に乗車することにした。
土曜日ということもあり、指定席、自由席共にかなり混雑していた。
それでも、始発駅である東京駅からなら、15分前くらいから並んでいれば難なく座る事ができた。

E7系の上越新幹線にもだいぶ慣れた。



突然話が飛ぶが、最近iPadを買った。読書やら動画視聴やら仕事の資料へのメモ書きに大活躍しているが、ここにApple Pencilが加わったことで、その便利さは格段に増したように思う。
新幹線に乗車中の約2時間は、iPadの使い方に慣れようと活用法の動画を見ていたり、Apple Pencilで仕事の資料へのメモ書きの続きをしたりなどしていた。

新しいことをやっていれば、時間なんてあっという間に過ぎていく。
とき325号は燕三条駅に定刻で到着した。
新潟県内へは新幹線で何回も来ているが、前述の通り、燕三条に降りたのは今回が初めてだった。

燕三条駅初上陸

3年前まで走っていた走る美術館こと「現美新幹線」で使用されていたソファを横目に、改札を抜けると、JRE Local Hubなるものが現れる。
ここ、燕三条でのものづくりにインスピレーションを得たであろう、何やらシェアオフィスのようなもので、乗り換えのために急いでいたので室内には入らなかったが、「らしい」雰囲気のおしゃれな空間が広がっていた。

現美新幹線で使われていたソファ。これでも自由席。

指定席券売機で、「えちごツーデーパス」を購入する。
新潟県内の鉄道路線が、JRと第三セクター含めて乗り放題で、別で特急券を用意すれば新幹線、特急列車にも乗れるというコスパのいい切符だ。
切符のデザインも特別感のあるもので、記念に取っておきたくなる。

村上も、糸魚川も、十日町も、越後湯沢も全部新潟。改めてすごい。

在来線ホームに降り立つと、新幹線とは打って変わって一面一線のシンプルなホームが出迎える。元々は一面二線だったのか、片側には線路一本分のスペースが見て取れる。
弥彦線E129系に乗り換え、東三条へ向かう。


東三条からは、また同じくE129系の信越線に乗り換え、長岡を目指す。
夕方の東三条駅は下校途中の学生さんが多く、駅も賑わいを見せていた。
新潟支社の駅は、伝統を大事にするデザインに拘った駅舎が多い気がする。

東三条駅

何回も来た街だ。しかも時間は夕方、しかも今月はお金もあまりないため、新しく店を探して孤独のグルメをかます余裕もない。
駅ナカプロントで、パスタをつまみながらビールを飲んだ。
どこにいても同じ味を食べられるチェーン店も、個性や味がないと思いつつも、なんだかんだで心強かったりする。しかも地方で、旅先で食べるチェーンの食べ物は、なぜかやたら美味い。
レストランといいコンビニといい、なんでチェーンの食べ物にこんなに惹かれるのか。
その、言ってみれば不思議な感覚も、「旅情」と呼ぶのだろうか。

長岡のプロントでまったりしたらホームに降りて、たまたま止まっていた信越線の新潟行きに乗車する。理由は特にない。フリーパスの元を取りたい、それだけだ。

新津駅は古くから鉄道の車両基地や車両工場があり、「鉄道の街」と呼ばれている。
何度も「通り過ぎた」駅ではあるが、降りたことはない。
夜も遅いが、ホームから見える車庫の景色は撮り甲斐があるだろうと思い、降りてみた。

この駅は、かつていろんな寝台特急が止まっていたっけか。
あけぼの、日本海、トワイライトエクスプレス…今の列車たちにはそぐわない長いホームが、過去の栄光の列車たちの記憶を伝えているのかもしれない。
それでも今なおやってくる長編成の列車、「SLばんえつ物語」は貴重だし、新津が鉄道のまちとして今もなお輝きを放っているのは、この列車による影響も大きいだろう。
駅構内の車庫、キハ110系の奥にチラリと見えた12系客車が、ちょっと頼もしく思えた。

ずらりと並ぶ信号機に目が無い。
SLばんえつ物語の停目もある。イラストのなんとも言えない昭和感?レトロ感?がかわいい。


1時間くらい撮影しただろうか。腕に蜘蛛の巣のような感触もあり、9月とはいえ体にべったりまとわりつく湿気の感触に嫌気が差したあたりで、戻りの長岡行きの電車に乗って帰った。

宿泊は駅近くのカプセルホテル。かなり久々に泊まる。旅行が活発になりホテルがコロナ禍と比べて随分と高値になってきたが、こういう類のホテルはかなりリーズナブルに泊まる事ができる。
設備も清潔感があり、Wi-Fiも速くて快適だ。
よく来ているとは言え、旅先での夜はなんかテンションが上がる。
コンビニでついついお酒も買ってしまう。
流石に次の日も寝坊は嫌気がさすので、深夜1時には寝床についた。


2日目
休日の自分にしては早く、9時前には起きた。
特にあてはなかったが、どうせならフリー切符のまで行ってみたくなった。
シャワーを浴び、カプセルホテルを出て、長岡駅へ向かう。


ホームには丁度良く、まもなく出発する直江津行き普通列車が止まっていた。
長岡から直江津、特に鯨波から柿崎の間は日本海沿いを走ることもあり、車窓がとても美しい。
大学生の頃から、青春18きっぷ等で何度も乗っては写真に収めていた区間だ。
その時はこの区間のどこかの駅に降り立って、じっくり撮り込むこともあったが、今回はもうちょっと先へ向かう。

新潟で活躍するE129系。何度も乗って愛車のよう。
景色の移ろいを眺め、その土地の美しさを再認識するのが乗り鉄の醍醐味。

直江津から先は、旧北陸本線のえちごトキめき鉄道日本海ひすいラインへ乗り換える。
JR時代よりも現在の方が余程乗っているが、1、2両のディーゼルカーが力強い音を唸らせながら綺麗な日本海沿いを走る様子はとても楽しい。新幹線に取って代わられて、かつての特急列車が軒並み廃止になったことはさておき、ここに関しては、個人的にはJR時代よりも楽しく思える。
えちごトキめき鉄道では、JR西日本から譲り受けた413系455系も土休日に運行しており、往時の雰囲気を味わいたい人には、こちらもおすすめだ。

いつかの記憶は随所に残る。
引退直前に見に行ったのがもう8年半も前。信じられない。
それでも、未だにいつかの時代の片鱗に会えるのが嬉しい。
日本海と言うと荒らしいイメージだけど、穏やかなのもいい。
定期列車では今は無くなった富山方面の列車。
会社は分かれても、線路は繋がっているのが分かる。


待ち時間の間、駅前のホテル「ハイマート」にて、名物駅弁の「鱈めし」を購入した。
10年ほど前に駅弁コンテストでを獲得したこの駅弁は、車窓を眺めながらの酒のアテにピッタリだ。弁当というより、酒のつまみな感じだ。

新潟に来たら、ずっとこのセットな気がする。


鱈めしをつまみながら車窓を眺め、1時間と少しで列車は新潟県の最西端、市振駅へ到着する。
路線名の通り、この列車も日本海を掠めながら各駅で糸魚川方面へと足を進める。
新潟県の西の果て。何度も通過はしたが、立ち寄ったのは今回が始めてだ。

市振駅の木造駅舎。


木造の駅舎は、おそらく年10年も前から大切に使われ続けて来たのだろう。
運営の会社が変われど、地域にとってはかけがえのない鉄道であり、はその象徴だ。
近くの神社だろうか。えちごトキめき鉄道とコラボした絵馬が掲示されており、会社の一商品としての、この路線の注目度の高さ、また愛され具合がひしひしと伝わってきた。
駅舎からホームに向かうときの構内踏切。奥にチラリと見える日本海が美しい。

構内踏切が良い感じ。


あまりにも好物な駅舎過ぎてずっと写真を撮っていたら、折り返しの列車はすぐにやって来る。
案の定、泊駅から折り返しの同じ列車がやってきた。
1両だからか、はたまた日曜だからか、列車は全席埋まっている。
地方の鉄道路線の厳しい状態を連日聞いているからか、この混み具合を見て、ちょっとだけ安心出来るような気もする。

元本線を走る1両のディーゼルカーもすっかり馴染んだ。
青海駅脇のJR貨物駅。鉄道からトラックに変わり、草が生え荒れた線路がエモい。

直江津に到着し、そのまま信越線で来た道を戻ってもよかったが、せっかくのフリー切符なので、ほくほく線に乗ることにした。
乗り換えの時間は6分ほど。案外ゆっくりはしていられない。

可愛らしいのに実は凄い列車、ほくほく線。

ほくほく線は、今年春のダイヤ改正で快速列車の消滅と、最高速度の引き下げで話題になった。2015年春の北陸新幹線金沢延伸まで、時速160km特急はくたかが走っていたことを考えれば、結構寂しいものがある。しかし、昨今の地方ローカル線の事情と、この3年のコロナの情勢を考えれば無理もない。この路線の将来の行く末が気になりつつも、最高速度が下がったことにより乗り心地は以前よりも良くなったように思える。これは誤算だった。

この後に乗った上越線がほぼ同じ最高速度で割と揺れていたことを考えれば、ほくほく線は地方私鉄だということを考えれば、かなり優秀な路線だと言える。
とはいえ、取り巻く情勢は厳しいと言わざるを得ない。
取り巻く環境が変わっても好きな路線に心の中でエールを送りながら、列車を後にした。

雨は降ったが、快調に飛ばす列車が頼もしく思えた。

ほくほく線で六日町まで下り、ここまで来たらと、この切符の別の果ての越後中里駅まで向かった。
冬ならスキー客で賑わうこの駅も、この時期は人もまばら。
途中の岩原スキー場前でかなりの乗り降りがあったのは意外だったけど。なんだったんだろう。

越後中里名物、客車を活用した休憩所。
今回の旅の南端。越後中里駅。
夕刻、旅も終盤だ。

折り返しの長岡行きにそのまま乗車し、1時間と少し同じ列車に揺られ、長岡駅に再び降り立った。写真の整理もそこそこに、昨日と同じ駅ナカのプロントで食事を済ませ、帰りの新幹線に乗った。面白みがないと言えばそれまでだが、勘弁してほしい。

この2日間、思い返せばほぼ列車に乗ってばかりだった。
初めてのどこかにビューンだったが、割と来ていた場所という性質上、ある意味贅沢な時間の使い方だった。それでも、初めて最西端の市振駅を訪問したり、観光もそっちのけでひたすら列車に乗ったり、いつもとは少し違う趣の旅で、結構楽しかった。
とはいえ、車窓の中から、駅前で見た景色から、行ってみたいお店は結構発掘した。

旅をおぼろげに振り返るながら、列車は歩みを進める。

次回新潟を訪れるときは、友人と飲み明かしつつ、そのお店群を少しずつ探訪できたらいいな。
そうぼんやり考え、新潟ご当地ビール「風味爽快ニシテ」をぐびぐび飲んで微睡んでいたら、列車は上野を過ぎ、東京駅に着こうとしていた。
新潟って、思ったより全然近い
鉄道って、新幹線って偉大だな。

肝心の蛇口はないが、この看板が旅情をかき立てる。
一昨年までは、乗車位置案内も賑やかだった。
統一されても、E7系は好きな新幹線。カッコいいし、コンセントも全席になる。

何度も乗ってもそんなことを考えてしまう。
そんな感じで、今回は終幕。

あ、そうそう最後に。
今回の旅では、iPhoneのカメラアプリ「NOMO CAM」をPENTAX K-3 MarkⅢと共に多用した。
年間2700円のサブスク制だが、自分がいいなと思うコンパクトフィルムカメラプリセットがたくさん収録されていて、使っていて飽きのこないアプリになっている。
個人的なおすすめは、Nikon 35Tiっぽいプリセットだ。
FUJIFILMSUPERIAと言うフィルムが装填されているイメージで、右下には日付まで入る。
元々ポテンシャルの高いiPhoneのカメラにこのアプリが組み合わされれば、個人的に最高に取り回しのいいコンパクトカメラが仕上がってしまう。
そりゃ一眼レフの方が絶対的な性能がいいことは百も承知だけど、圧倒的な軽さがそれを凌駕する、そんな恐ろしい性能を、今回の旅は垣間見れたかもしれない。

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