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心技体(心編)

前回、通訳で一番大切なのは①体、②心、③技と考えている話を書きました。前回は体について書いたので、今回は心(メンタル)について考えてみたいと思います。


「え、知らない・・・」に動じない心


通訳に入る会議ではその日の議題が決まっていたり、事前に資料をもらったりしていますが、突然トピックとは関係のないガンダムのモビルスーツの話になったり、目の手術の話になったり、スピアフィッシングのコツの話になったりします。

ちょっと時間が余った時の「雑談タイム」は、知らない分野&語彙のオンパレードだったりするので結構ドキドキします。
皆、好きな話をユーモアを交えて話すので、通訳がショボいと話者が期待していた反応が返ってこない残念な結果になってしまいます。
そうなると、話者と聞き手の間に妙な距離が生じてしまうので、通訳者は必死に対応するしかありません。

以前、通っていた通訳学校の先生が「笑いが取れたらこっちのもんよ!」と冗談で言われていましたが、あながち間違っていない気もします。

何が来てもいいように、日頃からどんな話題が来てもいいように語彙力を増やすしかないのですが、それでも自分の知識にない話が次から次へと出てきてしまうのが現実です。

手薄にしている分野が急にでてくると、脳の動きがどうしても止まってしまいます。頭が真っ白になる状態です。
そうなると、止まった脳みそを再起動するのに余計なエネルギーと時間を費やしてしまい、どんどん通訳が遅れ、聴き落とし・訳漏れが増え負のスパイラルに入ってしまいます。

通訳中に知らない話題が出てきたら、無理やりすぐ訳そうとせず、手元でヒントとなりそうな言葉を探り、あたりを付けてから訳し始めるようにしています。

スピアフィッシングの話が出てきたときは、恥ずかしながら「スピアフィッシング」という言葉自体を不勉強で知らず、「~~fishing」としか聞こえませんでした。
そのため、「釣りが好きなのですが」と、とりあえず正答ど真ん中を外しすぎない範囲で訳してその場をしのぎました。

幸い、その後、「海底に潜って、spearを獲物に向かって静かに投げてね・・・」みたいな説明が続いたので、「ああ、テレビでよゐこの濱口さんがやってる『とったどー』のやつね、ああ、じゃあさっきの『~~fishing』はspear fishingと言っていたのかも!」と少しずつ分かってくるようになりました。

なるべく通訳のためにフル回転している脳の動きを止めないように、慌てず、落ち着いて待つ心が必要だといつも感じます。
あとは、「知らないことは必ず出てくる」とあきらめるのも大切な気がします・・・
(ただ、知らない内容に対応するのに慣れると、知らないことをなくす努力を怠るようになるので要注意だなと最近反省しています。。。)

トラブルがあってもすぐ切り替える心

通訳は、時間厳守で現場に現れ、会議が始まったら進行の妨げにならないようにする必要があります。
自他ともに認めるうっかりものの自分ですが、この原則は何が何でも守らねば・・!と思っています。
・・・が、どうしてもこの基本原則を守るのが危うくなることがありました。

今の職場にお世話になる前、自宅からオンラインでつなぐ遠隔通訳の仕事が朝10時から入っていました。
子どもの送迎バスが自宅付近のバス停に来るのが9時くらいだったので、余裕で間に合うと思っていたのですが、なんとその日に限って送迎バスのタイヤがパンクし、送迎中止になってしまったんです。

急いで自家用車で園まで送ろうと思ったら、なんと車がエンストを起こしてエンジンがかからず・・・。
もう涙目でタクシーに電話し、2回目に電話した会社に来てもらえ、なんとか間に合いました。

・・・ただ、一連のトラブルで動揺が止まらず、予定のログイン時間ギリギリに入ったため心を整える間もなく会議が始まってしまいました。
前日にも同じお客様の対応をさせていただき、その時はつつがなく業務をこなせていましたが、その日の対応は明らかに精彩を欠いたものになってしまいました。

幸い、クレームなどにはなりませんでしたが、おそらくパフォーマンスの低下はお客様にも伝わってしまったと思います。

トラブルがあっても、本番が始まったらカチッとモードを変えてプロに徹したいものです・・・。
同様のトラブルはこれまでにも何度かありましたが、まだまだ、切り替えが下手だなぁと反省しています。

自信を失ったときにも立ち直れる心

これは通訳や翻訳に限った話ではないと思いますが、私はよく落ち込むほうだと思います。
しょっちゅう、うまくいかなかったことを思い出しては「ああ、私はなんてアホなんだ」「才能ないのかも・・・」とじめじめ考えてしまう性分です。

ネガティブな気持ちのまま現場に入ると、声が小さくなってしまったり、いかにも自信がなさそうな声や態度が出てしまいます。
そして、話者の発言を自分が理解できているのかも疑心暗鬼になってしまい、ますます自信がなさそうな訳出になり、、、と負のスパイラルでいいことがないんです。。

前は、ネガティブな考えが頭をもたげてきたら「そんなことない!私はできる!!」とか無理やり考えるようにしていたのですが、なんかうまくいかないんですよね。

うまくいっていないものを無理に上書きしようとしても、自分の脳はそう簡単には騙されてはくれないようです。
うまくいかなかったと感じたときは、素直に感じたことを認めて、どこがうまくいかなかったのか、どうすれば次からできるようになるかを分析するようにしてから、少し立ち直りが早くなったような気がします。

ポジティブな考えでネガティブな出来事をかき消そうとすると、ネガティブなことは何が何でも抹消しなければいけない対象になります。
しかし、今後の対策として生かせば、ネガティブな出来事は学びの材料となります。

幸い?、今年もたくさんの学びの材料が集まったので、来年はさらにパワーアップできるようにがんばりたいです。


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