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商社志望動機の落とし穴

なぜ商社を志望されましたか?

面接でよく聞かれる志望動機です。

私が面接官をしている中で、多くの学生がこの質問に誤解をして取り組んでいることにきづきました。

「学生時代途上国を回って貧困地域を見てきた。水ビジネスで途上国開発を支援したい」

「ゼミで日本経済の弱点はエネルギー確保だと学んだので、エネルギー部門で投資に関わり、日本へのエネルギー安定供給に携わりたい」

全て素晴らしいモチベーションだと思います。入社後もこの気持ちを忘れないでほしい。

ですが「これだけ」では的外れです。なぜ商社か、の根幹が抜けています。

まるで航空会社のパイロット志望の方が「旅行先で多くの事を学んだので、好きな国にいつでも飛んでいけるようパイロットになりたい」と言ってるようなものです(旅客が行くところ、会社が行ってほしいところに飛んで行くのが航空会社に勤めるパイロットの仕事です)。

こういった落とし穴にハマらず、自信を持って志望動機を言えるよう、ありがちな誤解と対策を解説していきます。

この記事はいわゆる「面接で何を言うか」ではなく、ご自身がこれからの会社人生を真剣に考えた上で、働き始めてからも継続できるモチベーションを考えるきっかけとなることを目指します。


真のモチベーションと向き合うために

志望動機はありきたりな質問であるものの、納得いく形でまとめるのが難しいです。

それもそのはず。現場の商社パーソンでさえ、その多くは自分の仕事が本質的にどんな意味や機能を社会に提供しているのか正しく理解しておらず、迷走してるわけですから。

そうならないためにも、就活時からちゃんと自分の真のモチベーションに向き合うのが大切なのです。

志望動機が難しい原因

OB訪問や説明会で得られる情報では、日々の働く姿が想像しづらく、特に総合商社は事業分野も幅広いため、出会う社員によって言う事が違います。

そもそも具体的な部門や事業内容が動機であること自体に無理があります。商社の事業は部門毎に多様な歴史を持っており、商品毎にビジネス環境や業界での立ち位置が違います。同じ商社内でも働き方は千差万別です。

配属先はくじ引きみたいなもので、人事も水物、万が一生涯同じ部門にい続けたとしても、役職が変われば事業への関わり方も責任の範囲も変わっていきます。この様な、「時」や「立場」によって変化する要素を志望動機としてしまっては的が外れて当然です。

商社の根幹と真の志望動機

さて総合商社って実際何してるの?では、商社はMulti-Financeの会社だとお伝えし、総合商社の解体新書で、投資とトレードが事業分野でそれらがどんなFinance機能を提供しているのかを解説しました。

商社の社会的意義を理解した上で、先の例を見ていきましょう。

「学生時代途上国を回って貧困地域を見てきた。水ビジネスで途上国開発を支援したい」

これ自体は素晴らしい動機ですが、本気でこれを言うには、水ビジネスにおける商社の腹の底とポテンシャルを理解する必要があります。

まず、Finance企業である商社がビジネスをする上で収益性は大前提です。結局は商社の企業価値最大化に寄与することしかしません。

つまりリスクリターンが見合うからやるのであって、途上国開発を支援するためにやるわけではありません。これは紛れもない真実です。

残念に感じるかもしれませんが、諦めないでください。商社パーソンとして、商社のビジネスを通して社会貢献するためにあなたができることはたくさんあります。

収益性のあるビジネスが勝手にポッと出てくるのではなく、商社パーソンであるあなたが収益の出る案件にするんです。商社のリアルな社風とその背景でもお伝えした通り、ボロボロの案件しか来ない事業分野だってたくさんあります。


商社パーソンの社会的存在意義

では商社パーソンとして倒れそうな木を育てる為に何をするか。

その国の政治経済や社会情勢、適用可能な技術力や環境影響、法的知識等の幅広い知見を持ち、その国のビジネスの第一人者になる。各分野(例えば法律)だけに詳しい人はいますが、全て網羅し、総合的な判断を下せる人は多くありません。他地域での水事業について学習・経験したり、業界でのネットワークを広げるのもあなたの仕事です。継続的な事業を行う為に、経営について学ぶことも必要です。究極的には何も持たない商社が事業を成功させる為には、兎にも角にも学習し続けることです。

そして、商社がいるから、商社の信用力があるから参画してくれるパートナーや資金提供してくれる銀行がいる、という事実も考慮すべきです。その信用力をあなた自身が代表して体現していくわけです。

そういったひたむきな努力の先に商社の水ビジネスが誕生し、その国の経済発展につながるわけです。

外から見たら「商社がA国で水ビジネスをやっている」かもしれませんが、それはあなた個人のひたむきな努力の上に成り立ちます。そして商社には、その努力をさせてくれる環境があります。そもそも途上国の水ビジネスに関わりたいだけならば、それ専門の企業だってあるわけですから。

すると、本来商社に入ってやりたいこと、真の動機とは、ビジネスを実現するための努力を生涯し続けたいから、となるはずです。

実事業を運営する商社は、Finance企業でありながらも、金があるから信用されるだけではなく、どんな分野でも成功するまで努力し続けるから信用されるわけです。これがわかっていれば、ただ「水ビジネスで途上国開発を支援したい」と考えて入社するのとでは、覚悟が変わってきますね。

短時間の面接でここまで話す必要があるかは分かりませんが、「なぜ商社」の部分をきちんと理解していれば、自信を持って面接に臨めるのではないでしょうか。

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