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1000日チャレンジ 614日目 年末年始の読書記録『新解釈 コーポレートファイナンス理論――「企業価値を拡大すべき」って本当ですか?』

ゴールまで386日

★BMI:24.2

★勤務先社内で毎週発行しているメルマガで、先日掲載した年末年始のお薦め本として紹介した『新解釈 コーポレートファイナンス理論――「企業価値を拡大すべき」って本当ですか?』について、こちらでも読書記録として残しておきたい。

◎『新解釈 コーポレートファイナンス理論――「企業価値を拡大すべき」って本当ですか?』(宮川壽夫著; ダイヤモンド社;2022年)
(以下、出版社web siteより引用)
「多くのコーポレート・ファイナンスの解説書は、その初期設定が間違っている!? あまりにも「実務」や「実用」のイメージが強くなったコーポレート・ファイナンス理論を、改めてミクロ経済学から派生した理論群として学び直す入門書。実務や経営の大本を支える、「教養としてのコーポレート・ファイナンス」が身につく!」

★目次
まえがき
第1話 会社が儲かるとは、そもそもどういう状態を言うのか?
第2話 株価の変動がでたらめだったら何がうれしいのか?
第3話 なぜ人はリスクを恐れるのか?
第4話 株価はどうやって決められているのか?
第5話 どんなときに企業価値は拡大するのか?
第6話 株式市場は正しい答えを持っているのか?
第7話 価値を拡大することはなぜ困難なのか?
第8話 コスト削減の努力は報われるか?
第9話 財務分析はどこまで役に立つのか?
第10話 配当? 払ったことないですけどそれがなにか?
第11話 現金? 持ってないですけどそれがなにか?
第12話 会社は本当に株主のためだけに存在するのか?
第13話 会社はどこまで社会の持続性に貢献できるのか?
エピローグ ── ゴーギャンの絵のように
あとがき

★お薦めポイント(ネタバレあり)※可愛い表紙だけど、中身は骨太!
・株式会社は企業価値を拡大し株主に還元することが求められている。
・東京証券取引所が公開したコーポレートガバナンス・コード(CGコード)には、「自社の資本コストを的確に把握した上で」経営の方針を示すべき、保有資産について「資本コストに見合っているか等を具体的に精査」すべき、との記載があり、企業の経営者に対して、「資本コスト」を意識することを奨励している。
・上記のようなことを背景に、多くの企業で資本コストを意識した経営が取り入れられている。その際に、WACC(加重平均資本コスト)を新たな投資や事業継続の基準として用いられている。しかし、企業全体のWACCを新たな分野への投資の基準にするのはリスクがある。株主はリスクの高い事業(企業)への投資ほど、高いリターンを求めるというのが原則であり、自社の既存事業分野の評価で決まるWACCを基準に収益性との比較を行ってしまうと判断を誤るおそれがある。
・株主が、あるいは市場が経営者に求めているのは、資本コストや企業価値の概念と仕組みを正しく理解することから、なにをなすべきかを判断することである。
・株主は資本コストを低下させることを望んでいるのではなく、リスクに応じたリターンを獲得して増殖することである。
・資本コストはその事業がもつリスクによって設定されているので、企業価値を拡大するためには、同じ産業の中で他社との違いを顕在化させなければならない。
・マイケル・ポーターのファイブ・フォースのフレームワークを用いた競争理論においても他社にないものをもつことに価値があると指摘されている。
・「企業が株主価値の拡大のみを追求するのは正しいのか?」株主以外のステークホルダー(従業員や取引先など)は契約によって守られていることが多く、大きなリスクはかかえていないが、株主はステークホルダーへの契約上の支払いが終わった後の利益を配分されるのみで、株主は株価低下などのリスクもかかえる。一方で、株主は株を売却することによってリスク回避が容易である。そのような条件において、取締役会がステークホルダー間の利害を調整しながら最終的に株主の利益を拡大するという考え方は間違ってはいない。
・経営者は、以下の3つの質問にいつでも答えられなければならない。
①「あなたはどこから来たのか?」=あなたの会社はどこを出発点として、どういう理念で経営されてきたのか。=企業の理念や歴史、存在意義を問うもの。
②「あなたはここでなにをしているのか?」=あなたの会社は世の中のどんなニーズをどうやって満たしているのか?=ビジネスモデルや戦略を語るもの。
③「あなたはこれからどこへ行くのか?」=あなたの会社はこれからどこを目指してどのように成長していくのか?=企業のビジョンや将来像に関わる話。
・取締役会、とくに執行系役員を含めた経営チームに経営理念を浸透させることが重要。
・『客観性や合理性のみが重視され、過剰に秩序化された社会からは価値は生まれない。生身の企業が価値を拡大するためには、経営者を含めてそこで働く人々のウザいくらいに主観的な主張や自立的なこだわりが必要だ。疑問や思考の末に「こうしたい」「こうありたい」という主観的な強い意思を持てない人がビジネスの世界にうじゃうじゃいたらあまりいいことはないように思うのだ』

★(感想)
企業が株主から投資を受けて事業を行い、リターンをすることが大切であることは自明なことである。しかし、はっきりと姿の見えない“株主の意思”におびえ、間違った忖度を行うことが正しいことなのだろうか?株主が求める“企業価値”には様々なものがあり、企業側は自分たちが何のために存在しているのかを理解し、それを株主に管理指標をもちいることだけでなく、しっかり説明する必要がある。著者のいう“うじゃうじゃいる”主観的な強い意思をもたない人にはなりたくない。






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