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サークルの後輩とディズニーランドに行った日は、小雨が鬱陶しく感じられる日だった。

降ったり止んだりを繰り返すという予報だったので、折り畳み傘を持参した。

2月末の平日にもかかわらず、開園前の手荷物検査エリアにはたくさんの人が並んでいた。

何とか入場を果たしたところで、少し雨足が強くなってきた。

僕は両手が塞がっていたので、自分の折り畳み傘を後輩の子に開いてもらおうとした。

彼が傘を広げようとした瞬間だった。

「あっ」

小さく漏れた彼の声に目を向けると、広がったままの傘の上部と、すっぽりと抜けてしまった持ち手の部分。

あまりの間抜けな壊れ方に僕は笑ってしまった。

そもそも傘の劣化が起きていたのか、元には修復できなかったので、その時は他の人が使っている傘の中に入れてもらうことで難を逃れた。


数日後。


僕の傘を壊してしまった後輩が言った。

「今度一緒に、傘買いに行きませんか」

どうやら、傘を壊してしまったお詫びに新しい傘をプレゼントしたいとの事だった。

弁償みたいなことは気にしなくていい、と言ったのだが、傘を見にいくだけでも一緒に行こうと言ってくれた。

新しい傘を欲しているのは事実だったので、一緒に買いに行く事にした。


当日。
店に並ぶ傘はどれも前持っていた傘の半分ほどのサイズのものばかりだった。

コンパクトすぎる見た目に「本当に雨風を凌げるのか?」という疑念を抱きながら傘を開くと、以前の折り畳み傘と遜色ない広がりを見せた。

これはすごい。

決して安くない傘だったのに、後輩は僕のためだと言ってプレゼントしてくれた。


そこで、僕からも何かプレゼントを渡そうと思い、靴下屋に向かった。

僕は持っている靴下全てが五本指ソックスという、熱烈な五本指ソックス信者だ。

サークル員に対して「いかに指の分かれた靴下が快適であるか」を説いてきたが、彼らは一向に興味を示さなかった。

ならば、体験させるまで。

傘のお礼だという口実のもと、彼に好きな柄の五本指ソックスを選ばせてプレゼントした。

これで彼との関係はより深まり、尚且つ五本指ソックス信者を増やす事にも成功した。

雨降って地固まるとはよく言ったものだ。

雨によって傘は壊れたが、彼にはよく固まった地面を5本の指で逞しく踏みしめていただきたい。

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