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読んだ本の書評をアップしています。基本的に幅広いジャンルを読むように心がけていますが、文学、エッセイ、評論など、人文系の書籍が多めです。
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#読書感想文

【書評】"ふれる"が持つ創造性――『手の倫理』

 現在公開中の映画『ふれる。』を先日観た。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『…

【書評】放たれる「心のざわめき」――『冷たい校舎の時は止まる』

 ジャンルで言うと「ミステリー」。大雪の中、高校の校舎に閉じ込められた8人の高校生が、「…

【書評】自然の移ろいに気づく――『炉辺の風おと』

 本書は大衆小説、児童文学、エッセイなど、多彩な作品を輩出している著者が、八ヶ岳にある山…

【書評】「リアル」な異世界譚――『大転生時代』

 ライトノベルにおける人気ジャンルとして、「異世界転生モノ」が挙げられる。不慮の事故など…

【書評】違和感の連鎖――『あひる』

 昨年から今年にかけて、今村夏子の小説を多く手に取った。  デビュー作である『こちらあみ…

【書評】悪意といかに向き合うか――『ぼくのメジャースプーン』

 辻村深月は物語の中に哲学的な思索を織り交ぜることに長けた作家であるとつくづく思う。「大…

【書評】"親子愛"の本質とは――『琥珀の夏』

※本記事には物語の核心に触れる部分があります。  子どもの発育・発達過程で欠かせないのが「愛情」である。親や祖父母など、周囲の大人たちが子どもに愛情をめいっぱい注ぐことで、健全な成長が促される。  では、この「愛情」とは具体的にどのようなものを指すのだろうか。また、愛情を育むうえで欠かせない要素とは何か。本作『琥珀の夏』は、この「親子愛」(便宜上「親子」と表現したが、これには祖父母・親族など大人全般を含んでいる)の本質について、ストーリーを通して思索を展開している。 過

【書評】ハライチ岩井が活字でラジオする!――『どうやら僕の日常生活はまちがってい…

 エッセイとはさしずめラジオのフリートークのようなものだと思う。いずれも日常生活で体験し…

【書評】現実とフィクションの"あわい"――『SFアニメと戦争』

 本書は近現代の戦争や国際政治の動向を、日本のSFアニメーション作品を参照しながら解説し…

【書評】永久不変の価値観を疑え――『殺人出産』

 非常にセンシティブな表題だが、作品そのものは示唆に富んでおり、読者の想像力を刺激する仕…

【書評】「普通」という価値観への疑問――『コンビニ人間』

 本作が投げかけるのは伝統的価値観への疑問だ。学校を卒業したら正社員として働く。結婚・出…

【書評】五里霧中の社会を生きる「道標」――『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出…

 書店に行くと、「課題設定」「問題解決」系のフレームワーク本が多く平積みされている姿が目…

【書評】巷間の「仕事術」を破壊――『ありえない仕事術 正しい"正義"の使い方』

 巷には「仕事術」に関する書籍であふれているが、本書が凡百の書籍と一線を画すのは「理論」…

【書評】クリアな視線でビジネスを見つめる――『逆・タイムマシン経営論』

 欧米企業の成功事例という「未来」を日本に持ち込み、ビジネスに実装する「タイムマシン経営」。ソフトバンクグループの孫正義会長が実践者として名高いが、本書が提示するのはこの真逆をいく理論である。その名もずばり、「逆・タイムマシン経営」。10~40年という近過去にさかのぼり、当時のビジネスシーンで称揚されていた手法や技術を紐解くことで、経営の本質を見極める「目利き力」を鍛える。ここに、逆・タイムマシン経営の効用がある。   「最先端の〇〇」「これからは××」といったように、経済