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読んだ本の書評をアップしています。基本的に幅広いジャンルを読むように心がけていますが、文学、エッセイ、評論など、人文系の書籍が多めです。
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2024年8月の記事一覧

【書評】ある行旅死亡人の"存在証明"――『ある行旅死亡人の物語』

 2020年4月、兵庫県尼崎市のアパートで、高齢の女性とみられる遺体が発見された。部屋に…

【書評】SFアニメの金字塔を読み解く――『攻殻機動隊論』

 折に触れて見直すアニメーション作品がいくつかある。その一つが『攻殻機動隊』だ。  内務…

【書評】1945年8月15日の攻防――『日本のいちばん長い日』

 8月15日は言わずと知れた終戦記念日である。混迷を極める戦時体制にピリオドを打った節目…

【書評】世界は「編集」でできている――『知の編集工学』

 動画編集、画像編集、雑誌編集……。「編集」という言葉には、どこか職人気質なイメージが纏…

【書評】融通無碍な書評――『経営読書記録 裏』

 読み手から見た「書評の価値」として、本を選ぶための判断基準となる点が挙げられる。  総…

【書評】「読みたくなる」書評集――『経営読書記録 表』

 著者は一橋ビジネススクール特任教授を務める経営学者。専門は競争戦略で企業が長期的に利益…

【書評】「純粋さ」ゆえの「異常さ」――『とんこつQ&A』

 ほのぼのとした表題。白を基調にしたポップな装丁。その牧歌的な印象に引きずられ、ハートフルな物語を期待して読み進めれば、きっと痛い目を見ることだろう。本書に収録されているのは、いずれも不気味で背筋が寒くなる作品ばかりだから。  表題作『とんこつQ&A』は「とんこつ」という名前のラーメン屋が舞台。店主である「大将」と大将の息子(「ぼっちゃん」)の2人が切り盛りする店に、ある日アルバイトを志願する「わたし」が訪れる。お客と満足にコミュニケーションが取れないわたしは、『Q&A』と

【書評】繊細な心理描写と「覆る」快感――『ツミデミック』

 文学作品には作者の個性や感性が多分に反映されている。いわゆる「作風」と呼ばれるものだ。…

【書評】語り手の「おかしさ」を察知できるか――『むらさきのスカートの女』

 近所で有名な「むらさきのスカートの女」。頬にはシミが浮き出ており、肩まで伸びた黒髪はツ…

【書評】ニュートラルな視点で世界を見つめる――『成瀬は信じた道をいく』

 完全無欠で唯一無二――。あの成瀬が帰ってきた。本作は昨年3月に出版された『成瀬は天下を…

【書評】「天下を取る」少女の物語――『成瀬は天下を取りにいく』

 成瀬あかりは“浮世離れ”した人間である――。物語に触れるなかでそんなイメージが沸き上が…

【書評】一方通行化する「言葉」への警告――『東京都同情塔』

 東京2020オリンピック・パラリンピック大会のメイン会場に使用された新国立競技場。その…

【書評】読書を阻む原因は「ノイズ」にあり――『なぜ働いていると本が読めなくなるの…

 本を読みたいのに、ついスマホを触ってしまう。多くのビジネスパーソンがこうした経験をして…

【書評】批評とは「思考を深めること」――『批評王 終わりなき思考のレッスン』

 大胆不敵なタイトルである。「批評」の「王」。自らの著書に「王」という言葉を冠するなんて、並大抵の度胸ではできない。もちろん、著者は文筆家・批評家として十分すぎるほどの実績を誇っているわけで、このタイトルもうべなるかなと思う。  そう思って「前書き」に目を移してみると、そこには次の文章が書かれてあった。  ……すべては冗談だったのである。  ただ、内容は批評本の「王」にふさわしく、著者のテリトリーである音楽から文芸、アート、映画、演劇、思想、漫画、ライトノベルまで、イエ