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「天才」に抱くイメージ〜石原慎太郎「天才」を読んだ

石原慎太郎が田中角栄の生涯を描いた「天才」を読んで考えたことを、脳内関西人の富田氏(仮名)と林氏(仮名)の会話風でお届けします。


林: 田中角栄、知ってる?

富田: そら知ってるよ。ロッキード事件やろ?
 
林: リアルタイムでは知らんけど、元総理大臣が逮捕されるって、当時はなかなかの衝撃やったやろな。

富田: 韓国の大統領は、大抵、後で逮捕されるけどな。

林: あれ何なんやろな。この前な、石原慎太郎が書いた田中角栄の自叙伝読んでん。

富田: 石原慎太郎が書いたんやったら、自叙伝ちゃうやん。

林: 確かに。ほな、なんて言うんやろ、こういうの。書いたんは石原慎太郎やねんけど、田中角栄が自分で書いてる風やねん。書き出しも、「俺はいつか必ず故郷から東京に出てこの身を立てるつもりでいた」やし。

富田: ゴーストライター?

林: それやったら慎太郎の名前は出されへんやん。

富田: あ、そうか。

林: とにかく、そういう体裁の本やってん。で、タイトルが「天才」。

富田: ちょっと俺の持ってる田中角栄のイメージとは違うなぁ。

林: お前やったら何てつける?

富田: せやなぁ。。。「ロッキー」とか?

林: ロッキードのイメージしか無いやん。

富田: ほな、「金」?

林: 露骨やなあ。でもカネの話抜きには語られへん人生ではあった。

富田: やっぱり菓子折りに札束入ってたりするん?

林: その描写はなかったけど、ロッキード事件で受け取った賄賂が5億円で、角栄に言わせたら「はした金」やって。とある選挙に使った選挙費用が300億らしいから。

富田: 5億なんかはした金やって、いっぺん言うてみたいな。

林: 子供の時に親父がどえらい借金こさえて、そんな親父のことを親戚が馬鹿にするのを聞いて、「金が人間の値打ちまで決めてまう」と思ってんて。

富田: そんな子供かわいないなぁ。

林: 三つ子の魂なんちゃらで、それが良くも悪くも金権政治につながったんかもな。で、石原慎太郎は、田中角栄の金権政治批判の急先鋒やったらしい。

富田: そんな敵にあたるような人がこんな本書いてええんか?

林: 田中角栄が生きてはったらどない思うか知らんけど、そんな小ちゃいことは気にせえへん、ザ・大物やったんちゃうかな。

富田: そういうイメージはあるな。実際に面と向かって凄まれたら、チビってまうやろな。

林: 小卒で土方して、事業やっての叩き上げやからな。政治家なってからも、「あんたら土方やって汗水垂らしてトロッコ押したことがありますかね」って開き直ったら国会ではめっちゃ効果あったっていうエピソードがあった。

富田: そら、二世三世のボンボンには太刀打ちでけへんな。

林: あと、人たらしというか、人身掌握術というか、そっちもすごかったらしい。

富田: それがないと、ああいう世界ではやって行かれへんやろな。

林: 角栄が新米議員の時に、吉田茂にみんなの前で皮肉を言われたらしいねんけど、混ぜっ返して答えたらウケて、「ああ、俺はこの男の心をつかまえたな」って思ってんて。

富田:人の心をつかまえるっていう発想が無いな。「やったぁ、ウケた」としか思わんやろ、普通。

林: ロッキード事件はアメリカに嵌められたいうトーンで描かれてるけど、ほんまにそうやったら、田中角栄の実力にあのアメリカ様もマジでびびってたってことやろな。

富田: ロッキード事件がなかったら、どないなってたんやろ。

林: 石原慎太郎もあとがきで「私たちは田中角栄という未曾有の天才をアメリカという私たちの年来の支配者の策謀で失ってしまったのだった」て言うてはる。

富田: 美化しすぎてないかとも思うけど、大人物であったんは確かなんやろな。でもやっぱり「天才」はちょっとイメージちゃうねんなぁ。「天才」はなんかシュッとしたイメージやん?イチローとか。

林: 「コンピューター付きブルドーザー」とも言われてたらしいけど、「コンピューター付き」の部分しか訳してへん感じやな。「怪物」とかどうやろ?

富田: 「怪物」は松坂やろ。甲子園決勝でノーヒットノーランやで。「松坂二世」かな。

林: タイムリープ物になってしもてるやん。

<おしまい>

#読書
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