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「あやうく一生懸命生きるところだった」を読んだ

ハ・ワンさんの「あやうく一生懸命生きるところだった」を読んで思ったことを、脳内関西人・林氏(仮名)と富田氏(仮名)の会話形式でお届けします。

あやうく一生懸命生きるところだった | ハ・ワン, 岡崎 暢子 |本 | 通販 | Amazon

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林: 「あやうく○○○するところだった」を使って、例文作ってみて。

富田: 大喜利?

林: 自信あるんやったらボケてもええで。

富田: お題がシンプル過ぎて、ボケるにボケられへんわ。普通はまぁ「あやうく事故るとこやった」とか、さっきカレー食ったばっかりでアレやけど、「あやうく△△△漏らすとこやった」とやろなぁ。

林: △△△は、「個人情報」やな?

富田: お、おぅ。。。

林: まぁそんな感じで、普通は「あやうく○○○するところだった」言うたら、○○○にはネガティブな意味が入るよな。それがこの本のタイトルは「一生懸命生きる」や。どういうこっちゃ。

富田: 一生懸命生きるんは良うない、っていうメッセージ性を感じるな。一生懸命に生きとったら、褒められこそすれ怒られることはないから、変な感じはするけど。その違和感をフックにしようっていう魂胆も感じるな。

林: お前、今、「褒められる」とか「怒られる」とか言うてたけど、誰に?

富田: え?まぁ、上司とか?親とか?世間様とか?

林: 世間様って、具体的に誰やねん。

富田: お前も日本人やったらそこは分かるやろ。

林: ほな、「一生懸命生きる」って具体的に何をどうすることや思う?

富田: そらまぁ、仕事とか勉強とかを必死にやることやろ。それにしても、今日のお前はとりわけ面倒くさいな。

林: 一生懸命って、元々は「一所懸命」って言うてて、「武士が自分の領地を命懸けで守る」いう意味やったらしいけど、どっちにしても、なんか重たない?

富田: 重たいなぁ。俺が最後に一生懸命になったんは、大学受験の頃かなぁ。

林: 楽しかった?

富田: いや、しんどかった。一浪やったし必死やった。絶対あの頃には戻りたない。

林: 受験生の時は、大学合格のために、とにかく「今」を犠牲にしとったもんな。せやけど、大学入ったら入ったで、さらに、社会に出たら社会に出たで、将来のために「今」を犠牲にしてるとこない?

富田: キリギリス派を自負してる俺ですら、そういうとこはある。アリンコなお前はもっとやろな。会社から受けろ言われた訳でもないくせに英検受けたり。

英検1級の振り返り<その1>|スムジー@読むPodcast|note

林: せやねん。ええように言うたら、向上心あるように見えるかもしらんけど、なんか不安がベースにあんねん。今を犠牲にしてでも頑張っとかんと後で苦労する、みたいな。この本書いた人も、そこは俺と似てるような気した。

富田: 読んでへんけど大体わかった。「あやうく一生懸命生きるところだった」いうんは、「あやうく今を犠牲にするとこやった」いう意味やな。ほんで、どう生きるんがええとか教えてくれてんの?

林: ひと言で言うたら、将来のために我慢ばっかりせんと今に目を向けよう、結果がどうあれ過程を楽しもう、っていう感じかな。

富田: こう言っちゃなんやけど、何も目新しさは無いな。

林: まあそうかも知らん。「足るを知る」とか「無いものよりある物に目を向けて感謝しろとか」とかいう教えも聞くけど、なんか説教くさいよな。

富田: せや、その説教くささが俺は嫌いやねん。そう言うてる人らは、ほんまに常にそういうモードなんやろか。悟り開いてもうてるやん。釈迦でも無いくせに。

林: でもこの本は、その説教くささがなくてスーッと入ってきたな。作者の価値観が俺と似てそうやからかも。特に、「強烈にやりたい仕事はないけど、やりたくない仕事はあるタイプだ」という自己分析が俺と一緒やなって思った。俺の場合は、特にやりたいことが無いんは、仕事に限らずやけど。お前、バケットリストって知ってる?

富田: フランスパンをお洒落に言うたやつやったっけ?

林: それバゲットな。バケットリスト。死ぬまでにやりたことを書き出して、実際にひとつひとつやっていきましょう、みたいなやつやねんけどな、俺あれ嫌いやねん。やりたいことって言われても特にないから。「やりたくないことリスト」やったらなんぼでも書けるけど。満員電車乗りたない、とか。せやから、「夢を具体的に書き出せ、日付も書け」とかいうタイプも苦手やな。

富田: それは言い方の問題ちゃう?満員電車乗りたくない生活をしたい、に言い換えたら「やりたいこと」になるんちゃうん?

林: 満員電車に乗りたくない生活をする、っていうのは、なんていうか、行為やなくて状態やから、「達成する」とか「実現する」という概念には馴染まんような気がする。

富田: そんでも、小ちゃい頃はやりたいことあったやろ?

林: 野球したい、プラモ買いたい、とかはあったけど、将来何になりたいとかは苦手やったなぁ。小学校の卒業アルバムに、将来の夢を「年金生活」って書いたもん。

富田: 「将来」の時間軸が独特過ぎるやろ。小学生やったら、普通20年後くらいのこと答えんねん。50年後のこと言うてるやん。

林: いや、とにかく早く、何にもせんでええ年金生活がしたかった。残念ながら、少子高齢化のおかげで先延ばしされる一方やけど。何もせんでええ状態を満喫したいねんけど、何もしてへんと、将来しっぺ返し喰らうんちゃうか思って、完全にボケーっとはでけへんねん。年金生活になったら、そういう心配とか無しにボケーっとできるようになるかなって。

富田: お前のやりたいことは「ボケーっとしたい」いうことやな。ほな今直ぐにでもボケーっとして、ボケーっとに飽きたら考えたらええんちゃう?

林: それができたら苦労せえへんねん、俺のような、悪い意味で向上心に溢れたタイプは。この作者がすごいんは、ノープランで会社をふと辞めて無職になってから、一日中ぼーっと過ごして「満ち足りた気分になった」「充実感がハンパない」って言うてはるとこや。

富田: パスカルやったけ?この前の暇と退屈の話で「人間は退屈に耐えられへん」言うてたんは。ある意味、パスカルの想像を超えてきてるやん。

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林: ボケーっとしてても、暇ではないが退屈してへん、って言う状態やってんやろな。羨ましい限りや。

富田: せやけど、作者の人も、それで充実感あったんはその日だけかも知らんで?毎日毎日それやったら、さすがに退屈もするやろ。

林: それは確かにそうかも知らん。あの人はこういうタイプ、この人はこういうタイプとか言うて型にはめがちやけど、その時々でみんなモードがあるもんな。一生懸命、何か目的に向かって邁進したい時もあるし、ボケーっとしたい時もあるし。

富田: 長い人生、ずーっとやる気のある人間なんか居らんやろ。

林: 作者も、「やる気はすり減るから、やる気のない時に無理に絞り出すんは良くない」って言うてはる。世の中、1週間とか1日っていう短い時間の中でON/OFFの切り替えを求められるけど、これが年単位で認められるような社会になったらええのにな。3年頑張ったら、2年休んでても普通に食っていけるような。

富田: それええな。俺は寒いの嫌やから、12月から3月は毎年冬眠したい。

<おしまい>


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