彼女はそれでも海を嫌いになれないと言った
海沿いのその家は、ふたりの生き方が全部詰まっていた。
笛を吹き、絵を描き、物語を作りながら暮らしていた彼女が選んだのは、地元の土にこだわり、焼き物を作る陶芸家だった。昔から決められていた事としか思えないほど自然に、ふたりが出会って、結婚するのを目撃した。
海沿いの新居は、一階は土間が広めに取られていて、旦那さんの作業場になっていた。家の漆喰は職人さんと一緒に、ふたりで塗ったと聞く。階段を上がると、大きな窓のある、ひと続きの部屋に出る。
台所でもあり、居間でもあり