看護師の給料を上げるべき10の理由

看護師の給料を上げるべきだと思いませんか?
以下に、看護師さんの給料を上げるべき理由を列挙してみました。

ただ、私は医師資格は持っていますが、医療従事者ではありません。(研究者です)
また、医療経済の専門家でもありません。
なので、以下の内容は医療従事者でも医療経済の専門家でもない、一国民の雑感としてご理解いただければと思います。

看護師の給料を上げるべき理由

1.若者・現役世代を大切にすべきだから

多くの方が指摘しているように、今の政治はまるで『シルバー民主主義』のような状態です。
詳細はこちらのNOTE記事をご参照ください。

もっと若者・現役世代を大切にすべきでしょう。
看護師さんの給料を上げることは、まさにその若者・現役世代を大切にする施策の一つです。


2.医療提供体制に余裕が必要だから

コロナ禍では、感染拡大の波が来るたびに医療崩壊が問題になっています。特に、看護師不足は繰り返し指摘されてきました。
それは、コロナ禍前から医療現場がギリギリの状態で回っていたからです。

コロナ禍など医療ニーズが拡大する緊急時に対応するためには、平時にマンパワーに余裕を持たせておく必要があります。
看護師の給料を上げることは、離職の防止や入職者の増加につながります。
それは危機対応能力の向上にもつながるのです。


3.他職種の人も得をするから

これは言われてみれば当たり前のことですが、看護師に給料として支払われたお金は消えるわけではありません
多くの場合、そのお金は消費にまわり、他の誰かの手に渡ります。
つまり、看護師の給料を上げれば、消費の増加、売り上げの増加という形で、他職種の人の得にもなるのです。


4.生産性を高めるから

生産性とは、ある一定のお金や時間を与えた時に生み出せる付加価値の効率のことです。
付加価値は、売上から原価を引いたものにほぼ相当し、これは粗利とも呼ばれます。

日本の生産性が低い理由は「日本の人々にお金がなくて消費をしないから」と言われています。
前述したように、看護師の給料を上げれば消費が増えます
消費が増えれば粗利が増える、すなわち付加価値が増大し、生産性向上につながるのです。


5.社会保険料を上げる必要はないから

看護師の給料の原資は医療費です。
医療費の財源の内訳は、約3割が国費、約1割が地方自治体の公費、約5割が社会保険料、約1割が患者自己負担です。したがって、決して社会保険料だけで賄われているわけではなく、国費も2番目に大きな財源です。
看護師の給料を上げるには国費を上げればよく、社会保険料を上げる必要はないのです。


6.税金を上げる必要はないから

国費の財源(歳入)の内訳は、約6割が税金で、約4割が国債です。
したがって、国費は決して税金だけで賄われているわけではなく、国債も重要な財源になっています。
そして、国債は償還期限はあるものの、償還時には新たに国債を発行して償還にあてればよく(これを借り換えといいます)、国債の償還に税金を使う必要はありません
なので、看護師の給料を上げるには国債の発行を増やせばよく、税金を上げる必要はないのです。


7.GDPが増えるから

前述したように国費の支出を増やして看護師の給料を上げると、実はGDPが増えます
国費の支出(政府支出)には大きく分けて以下の3種類があります。

  1. 建物や道路など形に残るものを作る公共事業など(公的固定資本形成といいます)

  2. 形には残らないサービスを提供する医療、介護、福祉、行政サービスなど(政府最終消費支出といいます)

  3. 労働は伴わず国民にお金を供給する給付金など(所得移転といいます)

このうち、1と2の政府支出は、その額がそのままGDPに反映されます。
もちろん、3も給付されたお金を国民が使えば(消費すれば)、その額がGDPに反映されます。

看護師の給料を上げるための国費の支出は、2の政府最終消費支出に相当します。
ですから、看護師の給料を上げた額がそのままGDPに反映されて、GDPが増加するのです。
もちろん、給料が上がった看護師がそのお金を何かに使えば(消費すれば)、さらにその使った分もGDPに反映されます。

このように、看護師の給料を上げると、GDPが増える、すなわち経済成長につながるのです。


8.経済波及効果が大きいから

政府支出乗数(財政乗数)という指標を聞いたことがある方もいるかもしれません。
政府支出を1単位増やしたときにGDPがどのくらい増えるかを表す指標です。
「どのくらい経済波及効果があるか」を表していると理解できます。(乗数効果とも言います)

実は、医療分野への政府支出はこの政府支出乗数が高いことが知られていて、3.61とする報告もあります。(Reeves et al. 2013 Globalization and Health)
なので、例えば全国の看護師128万人全員の給料(年収)を300万円ずつ増やすために4兆円を国費から支出すると、結果的にGDPが14.4兆円増えるということになります。
看護師の給料を上げることは、経済にも大きくプラスの効果があるんですね。


9.日本にはお金があるから

私たち国民一人一人がどれだけ実感できているかは別としても、日本(日本政府)にはお金があります。
つまり、「財政余力がある」ということです。

例えば、与党自民党の安倍晋三元総理大臣は2021年3月24日に「まだ財政出動の余地はある」と述べています。
日本政府には財政支出の余力がある、まだまだ出せるだけのお金があるということです。

また、野党第一党の立憲民主党の枝野幸男代表(当時)は、2021年9月27日に政策の財源について「国債に決まってるじゃないですか」と述べています。
日本政府には国債を発行して資金調達する余力がまだまだあるということです。

このように、日本政府には財政余力がある、すなわち「お金がある」ので、看護師の給料を上げる分を国費で支出することができるんです。


10.日本にはお金がないから

一方、日本(市場)にはお金がありません。
つまり、日本の世の中を流通しているお金が少なすぎるのです。

これは物価の変動から見て取れます。
日本は約30年もの間、デフレや低インフレに苦しんできました。
デフレ・低インフレとは、物の値段がなかなか上がらないということ。
「物」と「お金」を比較して、「物」の価値が相対的に低く、「お金」の価値が相対的に高いときに、物の値段がなかなか上がらないデフレ・低インフレ状態が生まれます。
「物」の価値が相対的に低いから、値段が上がらないんですね。

では、「お金」の価値が相対的に高くなるのはどんな時でしょうか。
お金の量が少ない時ですね。
「物」にせよ、「お金」にせよ、量が少なければ価値が上がるというのはイメージがしやすいと思います。

つまり、長年デフレ・低インフレ状態であった日本は、流通しているお金の量が少ない状態だったのです(今もそうです)。
最近は、食品や生活必需品の値段が上がって家計を圧迫し、「インフレ」が問題視されていますが、これは海外の石油・エネルギー価格の高騰の影響を受けたものであり、国内的な要因のインフレではないため、日本国内に流通しているお金の量が少ない状態は変わっていません。

世の中に流通するお金の量を増やすには、政府が財政出動という形で世の中にお金を供給するしかありません。(実は、他に減税という方法もありますが)
看護師の給料を上げるために国費から支出することは、少なすぎるお金の量を増やすことにもなるんですね。


11.労働に対する正当な対価だから

コロナのことを差し引いたとしても、医療現場は万年人手不足ぎみで、長時間労働、過重労働が蔓延していることと思います。
いっぱい働いたらいっぱい給料をもらう、これは当たり前のことです。
むしろ、大変な労働環境、高度なケアの提供に対して、今の給料が低すぎるのです。
労働に対する正当な対価を支払う・受け取ることは、健全な社会の基本です。
看護師の給料を上げるべき理由がここにもあります。


ということで、勢い余って11個書いてしまいました。
看護師さんの給料を上げるべき理由がそれだけあるということです。
いかがだったでしょうか。

もちろんこれは看護師だけでなく、他の医療従事者や、介護従事者、福祉従事者にも当てはまることです。
皆さんの給料は上げるべきなのです。
そして上がった給料を使って経済をまわしましょう!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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