見出し画像

石田スイ展に行ってきた

※この記事には、スイ展のネタバレが含まれます。

石田スイ先生とは、漫画『東京喰種(トーキョーグール)』(以下、グール)の作者で、3/18発売のゲーム『ジャックジャンヌ』の原作・キャラデザ・シナリオを担当している方。

石田スイ展は、グールという作品を多数のカラーイラストや原案等から振り返りつつ、スイ先生への「100の質問」を通じてスイ先生の人柄を垣間見、ジャックジャンヌの作り込み度に圧倒される、そんな展示会だった。

特に、展示会冒頭の「はじまりの部屋」にある、17台のモニターに映し出されるコラージュ映像と「unravel」(アニメ1期のOP/TKfrom凛として時雨のヨルシカremix)が表現する、グールの世界観は鳥肌モノで、その時点でチケット代の元は取れた。

老若男女が訪れていたことも印象的。グールという作品は、世代や性別関係なく惹きつける魅力を持っているんだと体感できた。ドレスコードでもあるかのように、みんなが黒っぽい服を着ていたのも面白かった。

グッズはファン垂涎のラインナップ! ポスカやポスターの種類が豊富なのはありがたい。このご時世なので、会場に行けなかった人も買えるようにしてほしい。

東京では3/7まで、4月から博多で開催されるので、行ける人はぜひ足を運んでほしい(感染対策として全日程指定券入場なのでご注意をば)。​

---------------

『東京喰種』の雑記


スイ展を通して、「東京喰種は、カネキケンの物語だったな」と思った。

彼が主人公なのだから、それは当たり前なのだけれど、““私にとっても””ちゃんとカネキケンの物語だったのが、実感できた。

というのも、私は月山さんや、旧多さんや、ハイル嬢や、ウタさんヨモさんイトリちゃん、什造くんが好きで、基本的に彼ら彼女らの話ばかりしていた。主人公であるカネキくんの話は、あまりしてこなかったように思う。

だから、スイ展で、数々の推しよりも先に、目がカネキくんを捉え、脳がカネキくんを追った事実に、キャラ萌えに終始するのではなく、物語に惚れ込んでいた自分を見出すことができて、安堵した。

(キャラ萌えを否定しているわけではない。私もキャラ萌え優先の作品はある。でも、ことグールに関しては、物語に惚れていた自負があったので、自分の本能がそれを覚えていて嬉しかった、という話。)

グールは、この世の不条理を煮詰めて煮詰めて煮詰めたものを、カネキくんに無理やり食べさせ続けるようなストーリーだ。

カネキくんは、突きつけられる不条理の塊を、スーパーヒーローのごとくバキボコ打ち砕いていくことはしない。拒否するし、逃げる。一度口に含んだものを吐き出しもする。だんだんと、諦めたり、向き合い方を覚えていって、一部を受け入れ、大部を受け入れ、消化できるようになり、糧にすらしていく。私は、こういうカネキくんのあり方(描かれ方)が、心底好きだ。カネキくんが、スーパーヒーローとして苦難に立ち向かうのではなく、ありきたりな人間のまま、最後まで苦悩し成長していく姿に、のめり込んだんだと思う。

「この世のすべての不利益は、当人の能力不足」

※写真撮影可能コーナーにて

私はこの台詞が好き。人生の指針の1つになっている。スイ先生も好きらしくて、なんだか嬉しかった。

ネガティブな言葉「不利益」「能力不足」が並んでいるから、突き放した残酷なフレーズに聞こえるかもしれないが、私はけっこうポジティブなメッセージを見出している(スイ先生がポジティブなメッセージとして描いたかはわからない)。

現状に不利益を感じているなら、自分の能力が不足しているのだから、補えばいいんだ、と。

なんでこんな辛いんだ、何もかも嫌だ、漠然と憂鬱だ、苦しくて吐きそうだ、毎日がしんどい、となったときに、このフレーズを思い出すと、自然と息ができるようになる。わけがわからないままどす黒い水の中で溺れているとき、このフレーズは、私に水底までの距離と、水面の方向を教えてくれる。水底は慌てるほど深くはないし、自分が少し歩けば浅瀬に行けるのだ。

スイ先生の「過労死するために描いていたと言っても過言ではない」というようなコメントが印象に残った。苛烈でありながら儚げなあの筆致は、そんな心情から生み出されたのかな。

グールという作品の魅力を再確認し、自分の人生に与えた影響の大きさを再認識できた。濃密な展覧会だった。

---------------

『ジャックジャンヌ』の雑記


ジャックジャンヌの制作発表時は、「スイ先生が乙女ゲ?!」と仰天した。私の中の乙女ゲと、グールの殺伐としたバトル漫画のイメージが結びつかなかったから。

でも、スイ先生のTwitterを中心としたジャンヌジャンヌ制作状況を日々見るにつけ、これは""クリエイター石田スイ""の真髄がつまった作品になるんだろうな、と期待が高まった。

ジャックジャンヌは「歌劇」がモチーフだ。

スイ先生といえば、音楽好きなことは有名(?)だと思う。アニメのOPEDが、TKさん、People In The Box、österreich、ゲストボーカルにcinema staffの飯田くんあたりが顔を揃えていて、残響レコードファンなんだろうなあとしびれた。

音楽へのこだわりを持つスイ先生が主体となって生み出す楽曲はどんなものになるんだろう。しかも、スイ先生が作詞をしている。グールでは、北原白秋などの詩の引用も多く、詩に対して造詣が深い人なのだと感じていた。スイ先生の独特かつ難解かつ端的な音選び、言葉選びは歌詞にも存分に生かされるんだろう。

と、期待していざ、スイ展のジャックジャンヌコーナーを見て、唸った。問答無用で音楽がかっこいい! 元気な曲、切なげな曲、多彩な楽曲があって、聴いているだけで楽しい。歌詞は、物語を読み進めながら聴いたらいろいろな発見があるんだろうなと妄想が広がる。これが、スイ先生のやりたかったことか! と納得した。

そして、物語。
主人公は女性であることを隠して、男性だけの歌劇学校に入学する。まるでグールじゃん!

主人公はクラスの「歯車」として仲間と協力し舞台成功を目指すという設定も、控えめに見えて物語の主軸にかかわっていて、面白いなと思った。乙女ゲの主人公つまりプレイヤーは、““観測者””の立ち位置であることが多い印象だけれど、ジャックジャンヌの主人公・立花希佐は、もう少し積極的な立ち位置なんだろうか。主人公=実質プレイヤーでありながら、自身が主役となることを目指すのも、なんだか新鮮。

グールに織り込まれていたエッセンスが、ジャックジャンヌでも光っているようで、スイ先生の新しい作品に対する期待感が高まった! 方向転換ではなく、延長線上に広がる作品と受け取れる。

ほかには、コンセプトアートの美しさに感嘆。ニーアとかも携わっている浪人さんの美麗画は、現実感とファンタジックさが同居していて、魅入ってしまう。

キャラ紹介を見たところでは、白田美ツ騎くん推し。でも、なんだかんだ根地黒門くんも好きだと思う。クラスは圧倒的にアンバーが好きですね。変態がたくさん出てきそうでワクワクするなあ!(?)

ジャックジャンヌは音ゲーなのだが、私は音ゲーが死ぬほど苦手。つらい。お願いだからスイ先生自身に、マンガ連載もしてほしい………。

---------------

以上、石田スイ展にまつわる雑記。
スイ先生のクリエイティブに敬意を評して。期待を込めて。これからも応援しています。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?