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最後のヴィーナス
4月半ばの休日。
揺れるカーテンに散る春の日差しを見ながら、冷蔵庫に入った小さな箱に手を伸ばす――。
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フジカラーのVenus 800。
2019年に生産終了となった高感度カラーネガフィルムです。
ISO800にも関わらず粒状感が少なく、室内でも極端な色かぶりの出にくい優等生フィルムだと言われていました。
その、手元にある最後の1本を、カメラへ。
使用期限は2021年2月。
「富士フイルムのフィルムは1年ぐらい期限を過ぎてもどうってことない」と言われてはいますが、何か大切な出来事をこれで撮ろうとして失敗したらいやなので、なんでもない日に使い切ることにしました。
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結局2か月ほどかけて27枚を撮り終え、今月現像から戻ってきました。
もともと高感度フィルムはそこまで使うほうではありませんが、選択肢が減るというのは純粋に寂しい気持ちです。
以下、Venusで残した日常です。
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1枚目はいちごパフェ。
奈良市にあるみやけさんのパフェです。
春先に出る限定のいちごパフェが好きで、なるべく毎年通っています。
夏場に出るかき氷もボリュームたっぷりでとても良い。白玉をトッピングで増やせるんです。
ことしの夏も楽しみです。
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店先には葉桜。枝垂れの清楚な桜が1本、中庭に植えられています。
カフェスペースの隣の建物(離れ的な)では、持ち帰り用のお菓子が売られています。大福など、ぜひ。
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あっという間に、5月。
桜の姿は消えて、代わりに街は緑、緑、緑です。
ゴールデンウィークは2日間だけお休みがありました(あまり暦関係ない仕事なので)。
天王寺で行われていたドイツビールのお祭りに行ってきました。
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ビールおいしかったです。
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最後は夕暮れの散歩道を。
フィルムのせいかレンズのせいか、随分ときめ細やかな写りをします。
日中でも夕刻でも見た目通りの素直な色が出ているし、あらためて素晴らしいフィルムだったのだなと感じます。
これがもう味わえないのは、かなしいですね…。
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夕暮れに始めた散歩も、あっという間に夜の闇へと変わっていきます。
36枚撮りだと勘違いしていたので、最後の1カットは随分とあっけなく終わりました。
手元のEOS55がフィルムを巻き上げるウィーンという音を聴きながら、あぁ、さよならヴィーナス…なんて思っても後の祭りでした。
こうして幕を閉じた「ぼくとヴィーナスの思い出」。
使えるフィルムの選択肢がどんどん減る中、わたしのような「にわかフィルムカメラユーザー」にできることといえば、かろうじて手元に残るフィルムをどんどん使って楽しく写真を撮ること、なのだと思います。
次はPRO400H、そして業務用100。
幸い冷蔵庫にはまだ何本かストックがあります。
たくさん、撮ろうっと。
おわり。
<写真>
Canon EOS55 + EF40mm F2.8 STM
フジカラー Venus800
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