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新規事業の成功率10%未満に対する処方箋

新規事業の成功確率は10%未満と低いですが、成功確率が低いこと自体が問題なのではありません。成功確率は10%未満だと理解してないことが問題です。
低いから取り組まないほうが良いという意味でもありません。その現実を受け止めて、どうすれば良いか学んで適切に理解することが大切です。

成功率が10%未満と知っていれば、普段通りにやってはダメで、「新規事業のやり方や物事の捉え方」を探らねばならないと誰もが理解するでしょう。しかしその現実を知らないと、やり方を変える必要性を感じることさえありません。
いつも通りの良かれというやり方で(それではダメだと知らぬまま)進め、予定通りに失敗してしまいます。

成功確率が低いからこそ、それが必要とされるかなり前から、継続的に新規事業に取り組み続ける必要があります。5年10年と取り組み続けることで、新規事業を経験者が増え、新規事業にチャレンジする文化やプロセスが社内に根付きます。
必要なのは、いつものやり方とは異なる、新規事業特有のやり方や捉え方を学んで理解することです。そして5年10年と継続的に新規事業に取り組み、会社として新規事業経験を蓄積することで、10%未満の新規事業の成功率を10%、15%、20%と高めることができます。

新規事業が既存事業の仕事と全く異なる3点

新規事業に関する仕事が、既存事業の仕事と全く異なるのは大きくは次の3点です。
 ① 事業がない・決まっていない
 ② やる作業が決まっていない
 ③ その作業をやってうまくいくかどうか、誰も知らない

① 事業がない・決まっていない
企業に就職したサラリーマンは、いかなる会社であれ、必ず「既存事業が1つ以上」あり、既存事業に配属されます。異動やグループ企業への出向などよって、多様な業務や仕事経験した人であっても、必ず「自分が携わる事業がある」状態だったはずです。
一方、新規事業開発は、新たに事業を開発する仕事のため、既に事業があるわけではありません。「自分が携わる事業がない」ということは、売るものがありません。顧客が誰かも決まっていません。競合も考えようがありません。広告宣伝しようにも対象がなく、サポート部門も存在しようがなく、開発エンジニアがいても何もすることがありません。
「自分が携わる事業がない」というのは、どれだけ会社勤めの経験が長くとも、新規事業の担当になって初めて経験する状態であり、既存事業の仕事と全く異なる点です。

② やる作業が決まっていない
既存事業の場合は、いかなる商品やサービスであれ、やるべき作業が既に存在しています。販路や営業体制、販売接客や顧客サポート業務、商品企画と顧客調査、設計や製造プロセスなど、必要な形で既に組織化・部署化され、既存の社内標準的なやり方やルールがあり、それに則り作業を進めるはずです。
一方、新規事業開発では、どのような作業をする必要があるか、予め決まっているわけではありません。「新しい事業の企画をし、それを具体化し、販売する必要がある」くらいの大まかな”作業フェーズ”はわかっても、それは作業内容ではありません。
新しい事業の企画をし、具現化するためにどういう作業が必要か。作ろうとする事業や、自社保有資産などによっても全く変わります。 既存顧客向けの事業か周辺市場を狙うかによって営業方法は変わります。知らない顧客のことはどう知れば良いでしょう。対象顧客や市場によっては、新たな販路や代理店網を構築する必要があるかもしれません。売ったことがないものを売ってくれる代理店はいるのでしょうか。自社単独で実現できない場合、開発パートナーや研究機関との提携や契約が必要な場合もあります。売り切り商品ではなく継続利用型サービスの場合は、サポートセンターの形態も変わり売上計上も変わります。事業計画を作ろうにも、過去の実績数字はありません。
あの作業も必要、この作業も必要と思いつけばまだ良くて、必要作業が何かほとんど思いつけない可能性もあります。
「やる作業が決まっていない」というのは、どれだけ会社勤めの経験が長くとも、新規事業の担当になって初めて経験する状態であり、既存事業の仕事と全く異なる点です。 

③ その作業をやってうまくいくかどうか、誰も知らない
既存事業では、あらゆる業務が一定以上に標準化され、うまくいかない方法は既に排除されており、効率的に作業を進められるようになっています。 かける時間やリソース量に対する期待効果や歩留まりは予め計画・予測できる状態にあり、営業的な売上数字であれ、製造や技術開発であれ、予実管理で90〜110%になることが期待されるレベルで取り組まれています。つまり、その作業をやれば、高確率でうまくいくことが既にわかっている状態です。
一方で、新規事業の場合は、計画に沿って作業を進めて、うまくいく(うまく進む)こともあれば、うまくいかないこともあります。 どれだけ精緻に作業計画を作っても、計画通りに進むことは滅多にありません。
作業を進めたら、別の新しい問題が発生したり、取り組む必要のある作業に新たに気づくこともあります。必要な技術を持つ外部企業や研究期間を半年探しまわって見つからず、計画が頓挫することもあります。作業はいい感じで進み、顧客の声も踏まえて時間とリソースをかけて順調にサービス開発しても、いざテスト販売したら全く顧客に刺さらず、ゼロまで逆戻りすることもあるでしょう。
「その作業をやってうまくいくかどうかわからない」のは新規事業ではごく普通のことであり、既存事業の仕事と全く異なる点です。

新規事業の仕事への対応

新規事業に関する仕事は、既存事業のそれとは全く異なります。「事業的な側面」と「組織的な側面」のそれぞれで、既存事業とは異なる新規事業固有のやり方をする必要があります。
「事業的な側面」は新規事業開発の仕事の進め方であり、どのような作業をどう進めるかです。社外向きの側面でもあり、新規事業開発そのものです。
「組織的な側面」は社内向き側面でもあり、組織ルールや仕組みの面、新規事業を担当する人、経営者の観点があります。

企業内の新規事業担当者は「組織的な側面」にまず目がいきがちです。「顧客が買う新規事業が作れるか」という事業的な重要課題に直面する遥か手前の段階で、新規事業の企画を社内で通すための作業が発生するため、社内向き視点が先立ちやすいのです。
もちろん組織的な側面なしに、適切な新規事業の推進は難しいです。しかし、新規事業を成功させるには、「事業的な側面」への適切な対応がより重要で、より難しい。社内的な側面への言及は少なめに、なるべく社外的な側面について情報をまとめたいと思います。


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