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アシストスーツ導入の目的と選び方

当社はアシストスーツの企画・開発・販売を20年近くやってきました。正確に言えば、最初の数年は、私が経営する農業コンサルティング会社で開発をしていましたが、農作業以外にも介護や製造業など多くの需要があるのではないかと考え、2008年に当社をベンチャー企業(今風に言えば、スタートアップ)として立ち上げました。

開発のきっかけは、農家のお父さん、お母さんたちの多くが腰痛に悩まされていて、農作業が立て込んでいる時に腰痛を発症すると経営を圧迫するような状況になりかねない。という声を聞いたからでした。

農家は他産業以上に高齢化が進んでいて、加齢とともに体力が低下した働き手がこれまでと同じような作業負荷を受け入れることに無理が出てきていたのです。

アシストスーツというと、自分の持っている筋力などを増力することとイメージしがちです。しかし、現場では重作業の多くはすでに道具や機会が工夫されていて、それほど身体に大きな負担はかかる作業はありません。

カイゼンのために、一般的には作業のやり方を工夫し、できることなら、負荷を減らし、ケガを防ぐというのが優先的にやられているからです。一方で、身体に負荷がかかるのは、作業の効率を優先させようとするからです。

一度の動作でより多くのものを動かしたり、より短時間で終わらせたい。と考えれば負荷は高まります。特に、若くて体力のある人はこの傾向がありますが。高年齢の作業者は、その代償として腰痛や怪我による休業などのリスクを知っていますので、無理はしない傾向にあります。多くの人はできるだけ長く働くために健康でありたいと考えているのです。

アシストスーツが解決すべき課題は腰痛を発症させないように、身体にかかる負荷を軽減する。そして、継続的に負荷がかかると疲労しますが、疲労も軽減することであって、これを解消するためには筋力を増強するのではなく、負荷を受け流して、腰に負荷を集中させない。ことなのです。

私たちは、これを「軽労化」と言っています。

ところで、増力を目的とするアシストもありますが、本来、持っている以上の筋力を発揮しようとすると、外部からの動力(パワー)を導入しなければならなくなります。そのために電力や圧縮空気(コンプレッサ)などが必要になります。機械的、電気的な構造はより複雑になり、故障などの原因も増えてしまいます。

また、筋力を増強しても、その増力分に耐えられる骨格があるかということが新たな課題となります。大きな力を得ても、それに耐えられる骨格がなくて脱臼したり、骨折したら意味がありません。

それで、増力系のアシストスーツには剛性の高いフレームなどを身体の外側に配置するのです。これを外骨格と言います。

当社でも、増力化に取り組んだ時期がありましたが、外部動力の確保、コストなどを考えたときにあまり効率的ではないと考え、現在は開発を停止しています。

当社は北海道大学でロボットや人間工学などを研究している先生(技術顧問)と共同で設立した大学発ベンチャー企業です。アシストスーツからロボット要素(センサ、コントローラ、アクチュエータ)を取り外すことには抵抗があったと思いますが、困っている人たちを助けるための技術として、これを受け入れたのでした。

作業者が現場で大きな力を必要とするケースは実はあまりなく、大きな力を必要とする仕事は作業機械や道具に置き換えられています。今後は、単純な繰り返し作業であれば人の代わりにロボットや働くことになるでしょう。

しかし、経験に基づく判断と複雑で多様なプロセスが必要な仕事。農作業だったり、介護、育児、理美容などの一部の仕事は、人の手を必要としています。人手不足が定常化するなかで、そのような人たちが安心して長く働くことを手伝うのもアシストスーツと言えるでしょう。

そのコンセプトによって生まれたのが、私たちの企画・開発・販売するスマートスーツです。

スマートスーツの動力源は弾性体(ゴム)です。ゴムを引き伸ばすと収縮力が発生します。この収縮力が自らの筋肉とともに働き、筋肉への負荷の一部を引き受けるのです。

ゴムを伸ばすのに力が必要ではないか?とのご指摘があります。確かに収縮力を得るために、ゴムを引き伸ばさなければなりません。スマートスーツは、かがみこむ(上半身を前に倒す)とき、同時にゴムを伸ばします。

人の上半身の重さは体重の6割です。これを前に倒す、すなわち、おじぎをしようとすると身体の重さと重力で、自然にゴムは引っ張られます。むしろ、ゴムが引っ張れつつ、縮もうとする力が、腰まわりの筋肉が伸展する際の負荷(エキセントリックな負荷)を軽減することができます。筋力は収縮する時だけでなく、伸展する時にも負荷になるのです。

前屈姿勢から直立に戻るためには、腰回りの筋肉(特に背筋)は収縮して、上半身を持ち上げようとします。この時、スマートスーツの背中に張ったゴムの収縮力が作用し、腰回りの筋発揮力の一部を補償するのです。

スマートスーツの効果はこれだけにとどまりません。

上半身を前に倒す時、腰回りの筋肉が伸展しつつ、収縮するエキセントリックな反応をしていますが、背中だけではなく、同時に腹筋が働き、腹圧を上げて、体幹を安定化させています。

お辞儀をするときに、無意識にお腹にも力が入っているのを、実際に動作してみると感じることができるでしょう。

腹圧を高めて、体幹を安定化させることで、腰椎への圧迫力を下げているのです。つまり、前屈動作の場合、背筋だけでなく、腹筋も協調して働いているのです。

だから、前屈時には腹筋もアシストしなければなりません。スマートスーツは背面に張ったゴムが腰ベルトに連動していて、収縮力を腹筋のアシストにも使っています。しかも、動力なしで。

これにより、安定した姿勢での作業が可能になり、腰部負荷を軽減することを実現しています。

実際に、前屈時に一連の動作は、無意識のうちにやっている動作です。だからスマートスーツを着用しても、自分の筋力で仕事をしているような気になって、あまり効果を実感することはできないかもしれません。

しかし、筋力の活動を調べると、スマートスーツを着用していない場合と比較して。25%も活動量が低下することがわかっています。つまり、10kgのものを持った時には、7.5kgのものを持った時と同等の負荷になっているということです。(多少、乱暴な説明です)

これにより、連続して作業した場合の身体の負荷と疲労を軽減するというわけです。なお、この機構についてスマートスーツは特許を取得しています。

もし、あなたの作業で腰痛の発症を予防するために、アシストスーツをお探しならば、増力化ではなく、軽労化をお試しください。また。背筋だけではく腹筋も同時にアシストするスマートスーツがおすすめです。