セールスフォース社が「サステナビリティ」を企業コアバリューに追加 Salesforce is making 'sustainability' a core value

※こちらは、GreenBiz ヘザー・クランシー氏著記事の日本語訳です。ぜひ原文もご覧ください。許可を得て翻訳しています。記事リンクのシェアは構いませんが、転記・転用はお控えください。


 昨今、大企業から中小企業まで気候変動の影響に対処するために、二酸化炭素(CO2)排出量の削減設定、再生可能エネルギーの調達、循環型設計と生産の採用、節水など、「サステナビリティ」を重視した経営判断をする企業が増えています。2022年2月1日の新会計年度開始を機に、企業向けソフトウェアを提供する世界的企業の1社であるセールスフォース社が、この理念を企業のコアバリューに組み込みました。

 2月16日、同社は企業コアバリューに「サステナビリティ」を正式に追加し、「信頼」「顧客の成功」「革新」「平等」と合わせて5つとしたことを発表しました。この決定については前週、セールスフォース社の取締役副社長以上の役員が、変動報酬の一部を特定のESGイニシアティブに関連付けると示唆していました。このイニシアティブには、航空機の利用を減らし炭素削減目標を設定したサプライヤーからの調達を増やすことや、米国内の黒人、ラテン系、先住民の従業員と世界の女性労働者を増やすことが示されているとされています。

 セールスフォース社が企業コアバリューを追加するのは、今回が2回目となります。数年前にも「平等」を追加しました。その際、企業コアバリューによる企業文化の転換の一環として同社は2015年以降、従業員全体の賃金において、特定の理由が明確でない差をなくすため、給与水準の調整を日常的に行うことで性別や人種を超えた平等を実現しています。2021年3月現在、同社は同課題に足して1600万ドルを投資しているということです。「平等」という企業コアバリューは、セールスフォース社が差別的とされる法律に対して声を上げる原動力にもなっています。2015年と2016年には、創業者兼会長のマーク・ベニオフ氏が、インディアナ州とノースカロライナ州で、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの人々の権利を脅かすと考えられる州法に反対を表明したことは米国では有名なニュースとなりました。

 サステナビリティを重視した新しい方針を発表した同社のプレスリリースでは、この動きを「より公正で公平、かつ持続可能な未来を築くための、セールスフォース社の10年にわたる気候変動対策の旅の自然な延長」と表現しています。戦略的な観点からは、サステナビリティをあらゆる事業戦略や製品開発の決定における基礎的な検討事項とするシフトであり、これらの目標は、セールスフォース社がV2MOM(「ビジョン、価値、方法、障害、手段」の略)と呼ぶプロセスの下で設定・管理されることになります。

 「サステナビリティをあらゆる事業戦略や製品開発の意思決定の基礎となる検討事項とするという方針転換」

 セールスフォース社の上級副社長兼グローバル・サステナビリティ責任者のパトリック・フリン氏は「これは大きな、大きな重要決定です・・・。当社では毎年、全社員が自分のV2MOMを発表し、全社員がそれを見ることができるのです。この発表は、企業レベルでサステナビリティが会社の価値として挙げられたことを意味します。つまり、社内の誰もが、その年の目標やその目標の下での意思決定、物事の優先順位付けを考える際に、サステナビリティや気候への影響、気候の緊急事態に対する当社の役割に注目しながら仕事を進めていくことになります」と述べています。

文化の交差

2022年2月15~17日にアリゾナ州で開催された世界のサステナブル・ビジネスリーダーが集まるカンファレンス「GreenBiz22」の中で、ユニリーバ社の元CEOでイマジン社の会長であり、「サステナビリティの専門家がネット・ポジティブな世界のカギを握る理由(Why sustainability professionals are key to a net-positive world)」の著者でもあるポール・ポルマン氏は気候変動対策を企業文化に組み込むことの重要性を訴えました。企業内で行動を実践するためには、それを「規範」とし、正しいことをしない人たちとは決別しましょうと述べました。「規範を買うのではなく、文化の中に規範を作るのです。文化とは2軸あり、時に私たちは1軸でしか見ることができていません。文化とは価値観のことであり、正しい価値観を持っている必要があります。しかし、文化はさらにその価値観をもとに行動すること、あるいは生きることによってのみ作られるのです。ほとんどの企業はここで間違ってしまうのです」「サステナビリティ専門家は、企業文化を実現するための執事です」とポルマン氏。

 セールスフォース社のサステナビリティの歩みを追ってきた人々にとって、同社がサステナビリティを企業コアバリューとする動きは驚くべきことではないでしょう。約1年前、同社はサプライヤーに対して炭素排出量の削減を求め、契約更新の際にそれを調達契約に組み込みました。

 フリン氏にこの取り組みについての最新情報を尋ねたところ、詳細は、会社の最終会計年度が終了し、10Kおよびステークホルダー・インパクト報告書で公表された後に明らかにできるということでしが、「これは、何よりもコラボレーションを呼びかけるものであり、それが受け入れられたのです」と。「顧客が企業にこのような行動を求めているのですぐに適応し、最初に採用されたい、という意向を示していたサプライヤーたちが喜んでくれました。この方針よって、彼らが(当初から言っていた顧客の意向が)実証されたことになります。」

セールスフォース社は、ビジネス上においてサステナビリティという概念を外の世界にもっと知ってもらうことに関心を持っています。2年前、同社は二酸化炭素排出量の削減などの情報を管理するためのソフトウェアを製品化(現在Net Zero Cloudと呼ばれるサービス)し、他の企業に販売したことはよく知られています。

 セールスフォース社は企業コアバリューの発表と同時に、この製品のアップデートに着手しました。新機能には、企業が科学的根拠に基づく目標に沿ったコミットメントを設定するのを支援するツールや、温室効果ガス(GHG)スコープ3(自社内やエネルギー源以外の企業のサプライチェーン全体で発生する間接排出)の排出量を追跡するシステムなど、多くの多国籍企業がより具体的に取り組むよう求められている課題に取り組みやすいツールとなるとみられています。

 「世界中のみんなの全力を必要としている今、私たちはどのようにベストを尽くせばいいのでしょう」とフリン氏は続けます。「私たちの場合、それは私たちのテクノロジーがお客様の手に渡り、お客様が未来へのナビゲーションを成功させることです。気候変動や各企業の脱炭素化のような挑戦は、優れたナビゲーションなしには誰も取り組めないでしょう。」

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