「製造現場でもクラウドが当たり前の未来を実現したい」Smart Craft共同創業者が語るプロダクト開発の今までとこれから
製造現場DXプラットフォーム「Smart Craft(スマートクラフト)」のプロダクト開発を、創業時から代表の浮部とともに推進してきた、株式会社Smart Craft共同創業者・Smart Craftプロダクトマネージャーの村重 司(むらしげ つかさ)さん。
2023年6月に総額1.1億円の資金調達を実施し、ペーパレスSaaSから製造管理業務を包括的にDXする製造現場DXプラットフォームにSmart Craftのプロダクトリニューアル&β版リリースを行った今、現在に至るまでのプロダクト開発の裏側、実現したい未来について聞いてみました。
ラクスルで2つの新規事業立ち上げを経験。ゼロから作る“面白さ”
━━まずはこれまでのキャリアと現在の業務内容について教えてください!
大学卒業後、当初はミュージシャンを目指して音楽活動に取り組んでいましたが、途中で挫折を経験し、エンジニアへと転身しました。
エンジニアとしての最初のキャリアとして、大企業向けのコーポレートサイト制作などを手がける会社でフロントエンドエンジニアを務めていました。その後、「事業会社でWeb開発に携わりたい」という思いが強まり、ラクスルへと転職しました。
ラクスルでの3年間の勤務を経て、フリーランスとしてDrobeなどのスタートアップ企業でプロダクト開発の経験を積みました。そして、2021年6月に株式会社Smart Craftを代表浮部と共同で創業し、現在は製造現場DXプラットフォーム「Smart Craft」のプロダクトマネージャーを務めています。
━━ラクスルでは、どんなことをされていたんですか?
ラクスルに私が入社した時はまだ社員数約50名、シリーズBの調達後でさらに成長しようというフェーズでした。
在籍していた3年間で、新規事業の立ち上げを2つ担当しました。一つはチラシや名刺などのデザインをオンライン上で作成できるサービスで、もう一つはノベルティ用のECサイトで、Tシャツやマグカップなどをオンライン上でデザイン可能なサービスです。
新規事業に関われることはとても面白く、優秀なメンバーも多く、多くの学びがありました。「ゼロから事業を創り上げる」ことの魅力と面白さを強く感じた時期でもありました。
━━3年で2つの新規事業立ち上げに関わる中で感じたその“面白さ”とは、具体的にどういったものでしたか?
元々できあがっている事業に入ると、あまり自分が与えられる影響は少ないじゃないですか。誰かが作ったモノに乗っかってPDCAがある、というか。しかし、新規事業では「UI/UXをどのように設計するか」「事業の方向性をどう決めるか」といった要素をゼロから構築できる点に、魅力を感じました。
今振り返ってみると、大学卒業後の音楽活動も、最初2人だけだったところからメンバーを集めて、表現していくプロセスを純粋に楽しんでいたので、単に「言われたことをやる」よりも「自分で何かを創造する」というのは昔から好きだった気がしますね。
代表との出会いを経て創業。Smart Craftの開発に着手
━━そんな中、どのようにSmart Craft創業へとつながっていったのでしょうか?
ラクスル退職後、フリーランスとして仕事をしている時に今Smart Craftで一緒に働いているエンジニアのメンバーに手伝ってもらって、toC向けのアプリを企画・開発していました。当初、収益化が実現できれば起業しようと考えていましたが、道のりは思っていた以上に厳しく、徐々に「起業するなら営業力のあるパートナーと共に進むべきだ」という考えに至りました。
そんな時に出会ったのが、当時コンサルティングファームに所属していた、現Smart Craft代表の浮部さんです。
「起業を考えている。一緒に創業するメンバーを探している」と誘いを受け、「営業に強く、人としてとても信頼できる浮部さんなら」と思い、一緒に起業することを決めました。
━━そのような出会いがあったんですね!現在β版を提供している製造現場DXプラットフォーム「Smart Craft」はどのようにして生まれたのでしょうか。
創業当初は、社会人が聞きながら学べる音声アプリを開発していました。しかし、アクセラレータープログラムで厳しい評価を受け、方向転換を余儀なくされ、そこで考え直した結果作ろうとなったのが「製造業向けのクラウドサービス」でした。
「製造業向けクラウドサービス」を選んだ理由は2つあります。1つ目は、共同創業者の浮部さんが以前キーエンスで働いていたため、製造業界とのつながりや知識があり、高品質なプロダクト開発・事業構築が期待できたからです。2つ目は、toC領域での失敗が続いたことから、「自分たちが取り組むなら、toC向けよりもtoB SaaSに成長の余地があるのでは」と直感的に感じたためです。
当時、私は製造業についてほとんど知識がなかったため、顧客解像度を上げるべく、浮部さんの知り合いの企業やLinkedInで「製造業」と検索し、コンタクトを取り、アポイントメントを通じて、何十社も製造業現場の訪問し、ヒアリングを重ねるところから始めました。
「普段どういう仕事をしているのか」「どういう課題感があるのか」など何度もヒアリングを重ねる中で浮き彫りになったニーズを基に、「日報のペーパレス化」と「製造データの見える化」の2つの機能を持つSmart Craftの開発に着手しました。
「作り直し」の試行錯誤。顧客の声に向き合いながら“使いやすさ”を追求
━━現在とは少し違うコンセプトでSmart Craftの開発が始まったんですね。
はい、実は、Smart Craftは一度「作り直し」を経験しています。「日報のペーパレス化」と「製造データの見える化」に絞っていた当時のSmart Craftに対して、次のような顧客からのフィードバックがあったんです。
・製造現場では基本的に、生産の計画をもとに計画通りに生産が進んでいるのかを管理している。そのため、計画データを取り込まずに実績の収集だけをペーパレス化するだけだとあまり意味がない
・製造の実績だけではなく品質の記録や設備の状況のデータを統合して分析することにより改善活動に活かせるのであって、ただ紙をなくすだけだとデジタル化する意味が半減してしまう
また、Smart Craftを活用する製造現場には高齢の方も多く「文字が小さくて見づらい」「現場では軍手をしていてタッチペンで操作したいのでキーボード入力の必要なく操作できるようにして欲しい」といった声もありました。
そうした声を受けて、「ただ紙をなくしたり、製造実績のデータだけを収集して見える化するといっただけでは不十分。難しいかもしれないが、リアルタイムで工程管理が可能な、かつ現場の皆様にとってストレスフリーな操作で、初めて使う人でも問題なく使える、製造現場全体のデジタル変革(DX)プロダクトに向けた作り直しを行う必要がある」と考えました。
それから約1年間、長年製造業システムに携わった経験豊富な方々やプロのデザイナーの協力を得ながら、試行錯誤を繰り返しました。
そうした試行錯誤の中でできたのが、現在の製造現場DXプラットフォームとしてのSmart Craftです。β版リリース後にプロダクトをトライアル利用いただいている製造業のお客様から「本当に見やすく、使いやすいです」と言っていただけた時は、本当にうれしかったですね。
クラウドサービスとしての汎用性を維持しながら顧客ニーズに応えることは、プロダクトマネージャーとして頭を抱えることも多いですが、そういった声は自分たちだけではなかなか気づきにくい点です。「製造現場で本当に使いやすいプロダクト開発」を追求する上で、こうしたお客様からの一つひとつの意見はなくてはならないものだと感じています。
製造現場でもクラウドが当たり前の未来を実現したい
━━Smart Craftのプロダクト開発の面白さは何ですか?
まず、これまでECやtoC向けのプロダクト開発をやってきた自分からすると、全然知らなかったようなディープな領域について学べることは新鮮で面白いですね。
また、toC向けのプロダクトでは一般的な、使いやすくスマホやタブレットなどのモバイル端末に最適化されたUI/UXを持つシステムが、製造現場向けのシステムではほとんど存在しません。そのため、自分たちがこれから製造現場向けのユーザー体験を新たに創造していく過程にも、大きな魅力を感じています。
━━Smart Craftのプロダクト開発を通して、どのような未来を実現したいですか?
自分たちが普段の業務でGithubやSlack、Notionなどのデジタルツールを使うことによってリアルタイムにコミュニケーションが取れたり、開発を効率的に進めることができているように、そうしたデジタルツールを製造現場で導入してもらうことによってまだまだ生産効率を上げていける部分は多くあると考えています。
本当に現場が使いやすいSmart Craftというクラウドサービスをより磨き込みながら提供することで、製造現場でもデジタルツールを使い、当たり前のように製造現場の見える化・データ活用、生産性向上に取り組めるような未来を実現していきたいですね。
━━では最後に、今後どのような人にSmart Craftへ挑戦してもらいたいですか?
開発やプロダクト作りが好きなことはもちろん、製造現場で働く人たちの課題やニーズをしっかり理解した上でプロダクト開発をしていく必要があるので、自分から進んで製造業のことや現場のことを学ぶ姿勢がある方に、Smart Craftに飛び込んできてもらいたいです。
今の組織はプロダクト開発において経験豊富なメンバーが多く、それぞれがオーナーシップを持ってスピーディーに開発が進んでいるところがいいと思ってます。
いちエンジニアやデザイナーでも現場や顧客のことを具体的にイメージすることができて、各機能やUI/UXについてそれぞれのメンバーがどうあるべきか考えられたり議論しながらプロダクト作りをしていけるような組織にしていきたいと考えているので、そのようなプロダクト開発に共感いただける方に挑戦してもらえたらうれしいですね。
▼Smart Craftについて、さらに詳しく知りたい方は下記をご覧ください!
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