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数値に向き合うデザイナーに求められる力

スマートキャンプデザインブログ デザイナーの髙松です。

私がデザイン担当をしているBOXILでは、より多くの方が簡単にSaaSを選べる体験を作るべく、様々な施策に取り組んでいます。体験設計や画面設計が関わる場合はデザイナーも施策のメンバーとして携わります。

こういったプロダクトやサービスに関わる施策では、参加メンバーは少なからず「数値に向き合うこと」が求められます。

今回は私個人が「デザイナーが数値と向き合う上で大事だと感じていること」を書いてみようと思います。

数値と切り離せないのがプロダクトデザイン

SaaSのような製品プロダクトに限らず、Webブラウザやアプリケーションで動くサービスであれば、ユーザーの行動計測が可能です。

ユーザーがクリックしたボタン、流入経路、ページ内で最も注目されている箇所といった手がかりを集めて、プロダクトのデザインに反映できます。

施策の実行場面で見る数値たちは、KPIなどの目標や、事業インパクトへの評価といった形で意識することになります。
事業にとって影響力の高い数値をデザインで改善できれば、

数値の結果 ≒ デザインの成果

として最もわかりやすい形でフィードバックされます。

手がかりと同時に評価ももたらしてくれる数値は、プロダクトデザインの現場ではデザイナーの強い味方です。

「デザイナーも数値を意識するべき」という考えは、Webアプリ系のデザイナーにとっては一般的ですし、「もっと数値をもとにデザインしたい」といった動機でWebアプリ系を転職先として志望される人も増えているように感じます。

それほど、プロダクトに携わるデザイナーにとって『数値』は切り離せない存在です。

数値がデザイナーの味方になるために

味方につければ強い『数値』ですが、私はデザインの現場で数値を扱うときには、心得としていくつかの注意点を抑えておくべきだと考えています。

1. 数値は「結果」であり、デザインの完全なフィードバックではない

ある画面のレイアウトを検証するABテストを行ったとします。テストを行う前には、そのデザインの良し悪しを評価する指標を決めます。

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そして結果は...

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これは正しいと言えるでしょうか。

・レイアウト変更のテストを行っていた期間、ページの流入元に変化はなかったでしょうか。
・同時期にユーザー行動に影響する様な大きいニュースはなかったでしょうか。

新しいデザインには読了率以外に評価できる点があったとしたら、デザインを完全に切り戻すのは得策と言えるでしょうか。

もちろん、重要なフィードバックとして数値結果は見過ごすことはできません。ただし、デザインの評価を決めるには、計測できている定量的な結果と、その外にある定性的な要因を含めて総合的に判断するべきだと考えています。

「数値が上がったからデザインの意図は正しかった」「数値が下がったから、このデザインはもう使えない」と判断してしまうと、判断を早まったり、知らずのうちに誤った方向に進んでしまうこともあり得ます。

数値はとても重要ですが、私はあくまでデザインを評価する上で頼りになる指標のひとつと捉えています。

2. 数値を積み重ねてもデザインにロジックは生まれない

新しいデザインをリリースするとき、数値的な裏付けをとっていくことはとても大切です。

数値はデザイン評価のすべてではありませんが、前に進んでいることを定量的に確認しながらデザインする方が良いのは間違いありません。

このような場面では「数値が良いから前に進んでいる」と言う思考で終わらずに、定量的な情報を定性的に翻訳することが大切だと考えています。

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「指標にしていたボタンAのクリック率が上がったから良い状態」ではなく
「ユーザーはボタンAから商品一覧へ遷移することで、サービスのコア体験の入り口に誘導された」
といったように、その数値が意味するものを見ることが大事ではないでしょうか。

数値は現状を定点的に観測することに長けていますが、それだけではプロダクトを通しての体験やデザインのロジックを繋げていくことができません。定量的なデータを定性的に翻訳することで、次に取り組むべき改善点や、作るべきユーザーの導線が導かれていきます。

私は、数値に強いデザイナーになるためには、定量データを読み解く読解力と、数値の意味を言葉に起こす翻訳力が求められると感じています。

3. デザイン対象の大きさによって、『数値』がもつ力は変わる

私は新卒で入社した会社でWeb広告のクリエイティブ分析をしていたことがあります。広告に使用されている画像と広告文をパターンと訴求別に分類し、クリック率やコンバージョン率から次のプランニングをするというものです。

これをやっていた時は、数値結果から仮説を起こしてテストしていくことで一定の成果を出すことができていました。この頃の自分にとって「数値とは、成果を証明してくれる絶対的な評価」でした。

一方、プロダクトデザインの担当になった今、数値の捉え方は『絶対的な定量評価』から『よりよいデザインをするために参照すべき情報』としての位置付けに変わってきています。

デザインする対象が大きくなるほどに、内包される数値では測りきれない要素が増えています。プロダクトを利用するユーザーの行動理由を知るには、数値的な観測だけでなく、人の行動原理を知り、自然な感情に共感することでわかることもあります。

自分が向き合っているデザインは、どの程度、数値を頼りに組み立てていく必要があるのか、都度判断することが重要なのだと思います。デザインの対象に合わせ、定量と定性の間で重心を調整しながら進めていく判断もデザインスキルのひとつと言える気がしています。

試されるのは数値からストーリーを書き起こす力

日々、デザイナーとしてプロダクトに携わる上で気になっていた数値との向き合い方について書いてきました。

定量と定性、どちらが大事と言うことではなく、場面に応じて重く扱う要素の比重を調整しながら判断を重ね、利用者視点と設計者視点でロジックの通ったデザインを作っていくことが大事というのが現時点の私の考えです。

よりよいデザインがなにかを考えるとき、使う人や使われる状況の性質からヒントを得るデザイナーは多いと思います。デザインが定性的な視点から出発を始めることが多いため、そのデザインを評価しやすい様に定量的な指標を置いておくことはとても大切です。

そして定量評価を再び、定性的な言葉に置き換えて、次のストーリーを描いていくことが数値と共にデザインを作るデザイナーの役割でもあるように思っています。

ここまで読んでいただきありがとうございました!

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まだまだ、試行錯誤をしながらデザインに向き合っていますので、同じ様にプロダクトデザインに向き合うデザイナーさんと意見交換ができたら嬉しいです!個人的にでも会社単位でも交流してくださるデザイナーさんがいましたら、是非Twitterなどでお声かけください!!

WRITER:Yume Takamatsu ( Product Designer / TW: @dream_yt95 )

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