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西日本スポーツ発行休止の衝撃

福岡市の新聞社、西日本新聞社が発行するスポーツ紙・西日本スポーツ(通称西スポ)が発行を休止するとのことです。
西スポは、北部九州で発行されているスポーツ紙です。

世間では、時代の流れだとか、紙媒体の限界だとか言われています。

私は子供のころから新聞が大好きで、新聞マニアを自負しています。
今回の件については、思うところがあるので、書いてみたいと思っています。
また、世間の風潮にも異を唱えたいこともあり、別の形で新聞について今後書きます。

地方スポーツ紙の紙面構成の限界

今回の、西スポのデジタル移行については、地方スポーツ紙の紙面構成力の限界が露呈したと見ています。

「スポーツ」新聞とはいうものの、週に6回、興行を打つプロ野球あってのスポーツ紙です。プロ野球人気が「絶対的」なものであった時代から「相対的」に高い人気のスポーツになった現在、プロ野球だけで収益を得るのは難しいだろうと思います。

プロスポーツはサッカーJリーグに加えて、バスケットボールもプロ化し、国内スポーツだけでも結構幅広くなりました。また、オリンピックに紐づいた、水泳、陸上、卓球、などの世界大会のテレビ中継もあり世間のスポーツに関する関心の広がりは、地方新聞社の取材力では限界をこえていました。

そのためか、西スポは徹底的な地元主義という名で、ホークス情報の精密さを売りにしてきましたが、それは取材範囲を狭める狙いもあったんだろうと見ていました。

芸能を持てない苦しさ

西スポの基本的な紙面構成は、ホークスの独自取材の自前記事+通信社の配信記事+サンケイスポーツから買っている芸能記事からなっていると見ています。

大手のスポーツ紙は芸能記事で売り上げを出す場合もありますが、西スポはそれができない。野球のシーズンが終わると厳しいだろうなと見ていました。

芸能記事でのスクープによってボーナスのような売り上げが出せない苦しい台所事情があったのかなと思います。

コロナが大打撃になったか?

九州は鉄道網が脆弱なこともあり、いわゆる駅売りの場所が限定されています。JR博多駅、西鉄福岡天神駅、などの主要駅くらいしか売り上げを取れない。

また、スポーツ紙の性質上、一般家庭への宅配は限定的でもある。

そんな中、安定した収益を得られるのが、病院や飲食店への販売だろうと思います。

これがコロナで大打撃を受けたのではとおもいます。度重なる休業要請は、結果として西スポにも大きな影響があり、営業再開となっても定期購読が戻らない現実があるのではと思います。

コロナ対策で、新聞雑誌を置いていない病院や飲食店は結構あり、戻らない販路に見切りをつけて、今回の結論に至ったのではと思います。

デジタル化への疑問

西日本新聞は、最近、HPを一新していました。この時点で、西スポのデジタル移行は決まっていたのでしょう。

私は、この選択にはかなり懐疑的です。それは、収益面の問題が大きいと思うからです。

西スポは、公称で22年7月で7万3千部で、他の報道では20年4月で8万5千部とのこと。この間1万部以上の急激な落ち込みだったようです。だから今回のような決断となったのかもしれませんが、それでも紙で粘るメリットはあったのではと感じます。

先に指摘したように新聞の安定的な収益源は定期購読です。紙で出している限り、広告も自前の収益になります。

定期購読は、その額が少なくとも安定的な収益をもたらし、飲食店などで存在をアピールすることで、購読につながらなくてもデジタルに誘導することは可能です。何より、紙で出す限り社会的に認知されます。

デジタルは、存在を知られなければ、存在していないことと同じです。今後5年もすれば、西スポブランドの社会への浸透力は急激に落ちるでしょう。ホークス情報なら西スポというイメージは、紙で出してきたから成しえたブランドだと思うからです。

またヤフージャパンのようなポータルサイト経由で人を誘導できるだろうという姿勢も自立的な発想とは言えず、何とも心もとないと感じます。いつヤフージャパンが記事の買取価格を下げると言ってくるかわからないからです。

おそらく、デジタル移行で、情報が充実したという結末はありえず、西日本新聞自体の縮小と歩調を合わせるように小さな存在になっていくのではと予想しています。

紙を失えば、社会への存在意義を失うデメリットをもっと真剣に考えるべきではと思います。この判断は、西日本新聞社が、自分たちの価値を見誤っているのではと思わざるを得ません。

というのも、それは、そもそも新聞の価値は何かという本質に関わってくる問題だと思います。それは別の記事で書きたいと思います。


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