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映像授業サービスの現在、未来。その4

(追記)本シリーズですが、当初の方向性とは異なってしまったこともあり、タイトルを変更しました。

映像授業サービスを展開する事業者を分析しながら、考察を進めています。
前回はこちら。

予備校業界が長く成長エンジンとして活用してきた競争主義。
しかし、その競争主義の問題点が徐々に業界のガリバーである東進に迫っていることを書きました。
また、それは広く予備校業界に当てはまることでもありました。

今回は、東進の固有の問題点について触れたいと思います。

東進は基本、ヘッドハンティングによって優秀な講師を一本釣りする戦略をとっています。この戦略にはメリットとデメリットが潜んでいます。

これまではメリットがデメリットを大幅に上回ってきましたが、時代の変遷により、デメリットが無視できない位、大きくなっていきたように思います。

そのデメリットの際たるものが、サービス力の根幹中の根幹である講師を自前で育てていないことだと思います。

これは、大変難しい問題です。東進が講師を育成できない、つまり、内製化できないのには、理由があります。

この業界で言われ続けている定説として、予備校講師は育てられないというものです。

優秀な予備校講師は、苛烈な環境で生き延びるだけの向上心とビジネススキルが高いレベルで求められます。また、才能に溢れている人でも、努力をしない、出来ない人は、講師活動の過程で程なく淘汰されていきます。

生存確率が低い苛烈な環境で、生き延びることができるのは、稀な存在となる必然的な流れがあるのです。

その生存競争を経ることで、カリスマ性も身に着け、高いギャラを得る市場性を獲得できます。

これを企業目線で、内製化できるのは難しいと言われるのことには説得力があります。

ただ、内製化まではできなくとも、育つ環境を整えることは可能です。それはつまり経験を積ませる「場」を与えることです。

これまで、塾、予備校の現場は人材を育成する場としても機能していました。

しかし、東進はライブ授業をやめたことで、育つ環境の提供を放棄したとも言えます。

これをプロ野球と比較すると分かりやすいでしょう。

プロ野球の球団を運営するにおいて、2軍をつくらず、他チームの優秀な選手を高額のギャラで引き抜いて、スーパープレーヤー集団をつくっているようなものです。

プロ野球ファンならば、かつて在京の名門球団が似たようなことをやっていたことを思いだすでしょう。そのやり方は、結果として上手くいかなかったいうのが一般の受けとめ方でしょうし、この球団は育成へ方針を転換しています。

若い講師を育てることは、コストがかかります。また、正社員でないため、拘束もできず、投資を回収できる保証はありません。育てる環境へのコストは最小化したいという気持ちはわかります。また、かつては機能した仕組みだったのだろうとも思います。

しかし、今の目線では、内製化を放棄する戦略は極めてリスクの高いもののように見えてしまいます。

このような引いた目線では、業界のフロントランナーは、危うい一面があるのかなと感じなくもありません。

提供しているコンテンツには、いささかの揺るぎがないことも事実でしょう。利用者には知ったことではないのかもしれません。

しかし、そんな危うい一面があることを理解しておくことは悪いことではないのではと思っています。

というのも、講師に向けている効率化の目線は、当然顧客にも向けているだろうと思うからです。
ここから先は、書きませんが、想像力は大切するべきかなと思います。

次回は、映像授業サービスがどのように変化していくかを考えたいと思います。


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