【東京備蓄ナビ】いつか来る災害に備えよう 東京都のデジタルシフト最前線・インタビュー Vol.3
東京都のデジタルシフト推進を担当しております西村 唯と申します。
今日は3月11日、私達が忘れてはならない日です。
東京都では、いつ起こるか分からない災害に備えて家庭での「日常備蓄」の実践を呼び掛けています。この度、家族構成などの質問に答えると各家庭に応じた必要な備蓄品目・数量をお知らせしECサイトや実店舗での購入をスムーズにする「東京備蓄ナビ」を開設しました。
2020年3月からデジタルシフト推進担当として「東京備蓄ナビ」のWEBサイト構築支援をしており、今回のVol.3は本事業の担当者2名にお話を伺いました。
Vol.3の話し手
東京都 総務局 総合防災部 渡辺担当課長(左)、梶原主事(右)
唯:お二人は総務局総合防災部に所属されていますが、まず初めに簡単な自己紹介をお願いします。
渡辺:20年ぶりに防災の業務へ戻ってきました。この間、ご覧のとおりの白髪となり、仕事に励んでいます。局ごとに〇〇の渡辺さんと呼ばれ、総務局の古株の人からは「防災と予算の渡辺さん」と言われているようです。
梶原:総務局 総合防災部 防災管理課地域防災力推進担当の梶原です。現在は防災のセミナーや日常備蓄(災害に備えて普段使っているものを少し多めに備えておくこと)の普及啓発業務を担当しています。よろしくお願いします。
なぜ、「東京備蓄ナビ」のWEBサイトを構築したのか?
※撮影時のみマスクを外しています
唯:ありがとうございます。それでは、本題に入りましょう。なぜ、東京都が災害に備えた備蓄を促進するWEBサイトを構築したのでしょうか?
渡辺:頭で分かっていても実践できない、知ることと行うことは別ということへの挑戦といえば格好いいですが、これから梶原さんが説明してくれるとおりです。
梶原:備蓄実践率の上昇が頭打ちになっており、特に若年層の備蓄率が相対的に低いため、そこに向けてアプローチできるような新たな取組が求められていたところです。そこで、「都民による事業提案制度」により提案があったことも踏まえ、単に意識づけを行うことからさらに踏み込んで、備蓄品の購入までをサポートすることで、現状を打破しようと考えました。
どのような課題を解決することができるのか?
「東京備蓄ナビ」 自分にあった備蓄を調べてみようの画面
唯:なるほど。都民からのご提案もWEBサイト構築のキッカケとなったのですね。この「東京備蓄ナビ」のWEBサイトでは、どのような課題を解決することができるのでしょうか?
渡辺:「日常備蓄って特別なことじゃないよね」「備蓄ナビ! これはいい」を体感していただけるツールとなることではないでしょうか。
梶原:備蓄と言われても何をどの程度準備すればよいか分からないといった方でも、簡単に必要な品目や数量の目安を知ることができます。
しかも、従来のワンパターンではなく、家族構成や住まいの環境といった様々なパターンに応じた、品目・数量を知ることができます。
さらに、ワンストップで備蓄品が購入でき、行動までのロスがないという点で具体的な備蓄につながると思います。
難しかったことや苦労したこと
「東京備蓄ナビ」 ハザードマップの画面
唯:自分に必要な蓄品をワンストップで購入できるのは便利ですね。ちなみに、このWEBサイトを構築するのにあたり、多くの困難や苦労があったかと思います。どのようなことが大変でしたか?
渡辺:事務職なのに2つの局でホームページの新規構築や多言語自動翻訳導入を経験したことがありました。今回は、前例のない中、短期間でいかにECサイトとの連携を確保するのかという点が非常に難しいと感じました。解決すべき課題はまだまだあります。
不思議なことなのですが、毎回、難関へのチャレンジにおいて、専門家的な仲間に助けていただき打開することがとても多く、その人たちのおかげで事業が進捗することを今回も経験しました。とはいえ、毎回そのようなことばかりではありません。
また、大規模災害であれば、東京都は隣接する県をはじめ、多くの自治体と連携して災害に当たっていくことになります。都としての取組の成果を日本各地で役立ていただきたい、他自治体の皆様が同じ取組をするときには、私達と同じ苦労は不要であってほしい。
そんな思いから「東京備蓄ナビ」のソースコードはオープンソースとして誰でも自由に使える形で公開していきます。東京都以外も「防災備蓄WEBサイト」として活用することができます。
梶原:サイトの機能や構造について議論する上で、技術的な部分を落とし込みながら、ビジュアル化して説明することに難しさを感じます。加えて、構築の中で部内の若手職員から意見を募りながら進めてきたところですが、若年層からも飽きられず、より「使ってみよう」と思ってもらえるような、コンテンツや機能を実装するという点では改善の余地があると考えます。
また、サイトへのユーザビリティを高めアクセス数も増やしつつ、行政のサイト(事業)として守らなければならないルールと両立させることにも難しさを感じています。
唯:行政のサイト(事業)として守りを固めながら、UI・UXを向上させていくために新しいチャンレンジをしていく、とても遣り甲斐のある事業だと僕は思います。
また、「東京都新型コロナウイルス感染症対策サイト」もオープンソースにしたことで、多くの自治体の方々にご活用いただいていますね。東京都でチャレンジした取り組みが、日本全国の他自治体のお力になれたら嬉しいですね。
※UIとは
UIはUser Interfaceの略で、人とモノ(主にPC・スマホなどのデバイス)をつなぐ接点を意味する。
※UXはUser Experienceの略で、サービスなどによって得られるユーザー体験」のことを意味する。
noteをご覧いただいている皆様へ
唯:それでは最後に、noteをご覧いただいている皆様にメッセージをお願いします。
渡辺:あと数年で退職を迎えることになりますが、アジャイル手法で成長する姿を見ることが我が子の成長を見るようで楽しみです。これからいろいろな人がかかわり進化させてくれる最終形とははたしてどうなるのかと、考えるだけでワクワクしてきます。
梶原:構築して終わりではなく、より都民の皆様に使っていただけるようなサイトを目指すとともに、他事業との相乗効果で、都民の備蓄や防災力の向上に貢献していきたいと思います。
唯:本日は貴重なお話、どうもありがとうございました!
東京都のデジタルシフト最前線・インタビューを、現場からお伝えしました。
次回は【都庁でやってみた!1on1】メンバーのための時間をお届けします。
Vol.4に続く
総務局 総合防災部 梶原主事(左)、渡辺担当課長(中央)、戦略政策情報推進本部 西村担当課長(右)
■話し手
・渡辺 正敏 総務局 総合防災部 事業調整担当課長
1993年入庁。生活文化局での消費者行政から、総務局、知事本局、都市整備局、職員共済組合を経て現職、事務職ですが事務職らしからぬ業務に多く従事。
・梶原 優 総務局 総合防災部 防災管理課 主事(地域防災力推進担当)
2018年入庁。防災に関するセミナーや研修等を担当。
■聞き手
・西村 唯 戦略政策情報推進本部 デジタルシフト推進担当課長
2019年入庁。西新宿スマートシティPJ、東京テックチーム、都庁各局のDX支援、東京都新型コロナウイルス感染症対策サイト、つながる東京(東京2020大会会場等のWi-Fi整備)等を担当。
■撮影
・松野 友雄 戦略政策情報推進本部 デジタルシフト推進担当課長
2021年入庁。東京都新型コロナウイルス感染症対策サイト、東京テックチーム、都庁各局のDX支援を担当。