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民間出身のICT職が挑む、行政手続28,000プロセスデジタル化

 こんにちは!東京都デジタルサービス局の江崎です。私は4月に東京都に採用となり、今はデジタル人材の採用PRを担当しています!
 
 東京都がICT職の採用を開始して今年で4年目を迎えました。東京都のICT職についてより多くの人に知ってもらうことを目的として、今回の記事を作成しました。
 ここでICT職って何?と疑問に思った方もいるかもしれません。ICT職とは、都政課題とICTの双方に精通し、ICTを活用して課題解決を図り、東京都のDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を担う都の職員です。ICT職の採用には次の2種類があります。 
 
 1.新卒・既卒者等向け(Ⅰ類B(新方式)):22~29歳の方を対象
 
 2.経験者向け(キャリア活用):61歳未満の、一定以上の職務経験のある方を対象
 
 今回はキャリア活用採用で民間企業から都庁のICT職へ転職された三田さんにインタビューをしました。ICT職のやりがいや民間企業との違いになどについて、現役職員の実際の声をお伝えできればと思います。


- プロフィール

江崎:前職の職種や業務内容を教えてください。
 
三田:前職はメーカーの社内SEで、基幹システムの開発・保守、財務報告に係る内部統制をしていました。
 
江崎:いつ都庁に入都しましたか?

三田:都庁には2021年に入都しました。なので今都庁3年目ですね。
 
江崎:民間企業から都庁へ転職しようと思ったきっかけはなんですか?
 
三田:転職のきっかけになったのは友人からの勧めですね。正直、行政にはもともと興味なかったんですけど、以前いくつかの自治体に移り住んだ時に同じような書類を何度も提出しないといけないことがあって、これがほんとに煩わしくて...
この時に思ったのが、なんでわざわざ窓口に行って手続しないといけないんだろう?って。この経験がきっかけで行政に興味を持っていて行政の世界に入ってみようかなとは思っていたんですけど、そのタイミングでちょうど友人から「ICT職ができるから受けてみたら?」って言われたので試験を受けてみました。都庁は転勤もないですし。
 
江崎:都庁での配属先と担当を教えてください。
 
三田:入都した2021年度は戦略課デジタル計画担当、2022年度はデジタル推進課デジタルシフト推進担当でした。今年度はデジタルサービス推進課データ利活用担当をしています。
 
江崎:これまでの部署ではどのようなことをされたのですか?

三田:2021年度のデジタル計画担当では、行政手続のデジタル化や、デジタルサービスに係る行動指針、デジタルデバイドの是正に取り組みました。2022年度のデジタルシフト推進担当では東京都の各局DX支援に携わりました。

江崎:都庁の業務に前職で得たスキルを活かせていますか?
 
三田:前職で得たスキルを直接活かせているとまでは言えないですけど、培ったマインドは活かせている気がしますね。前職で得た現場の声を大事にするという感覚は生きていると思います。
あと、デジタルサービス局以外の局の人とも話す機会があるんですけど、その時も相手を知ることを意識するところは前職で身に着いた感覚かなと思いますね。
 
江崎:都庁の業務で印象に残っていることはなんですか?
 
三田:印象に残っているのは行政手続の業務ですね。僕が行政に興味を持ったきっかけでもありますし。入都してすぐにこの担当になったので、最初は関連法規や条例・要綱とかの意味も分からない状態だったんですよ。


- 行政手続28,000プロセスのデジタル化

 
江崎:都庁でのやりがいはなんですか?
 
三田:今の担当ではないですが、以前、行政に興味を持ったきっかけとなった行政手続の業務を担当できたことはやりがいがありました。あとは、メディアで取り上げられるような事業に関われたことです。
 
江崎:自分が関わった事業が報道されるのは確かにやりがいがありそうですね。行政手続の業務ではどのようなことをされたのですか?
 
三田:業務内容としては都が行っている行政手続のうち何件をデジタル化できたかダッシュボードで見える化したり、都民や事業者と接点のある手続のデジタル化を一層進めるための計画の本文を作ったりしました。計画を作った後は、いつまでにデジタル化するのかを各局と話し合って調整することもありました。
 
江崎:三田さんが担当した年度では、どれくらいの手続がデジタル化されましたか?
 
三田:僕が入都する前の2020年度の9月末時点では全体の5%くらいしかデジタル化できていなかったのですが、2021年度の末には21.6%までデジタル化することができました。
 
江崎:手続のデジタル化に関して目標値などはあるのですか?
 
三田: 2023年度末までに70%のデジタル化を目標にしています。
 
江崎:デジタル化した行政手続の件数はダッシュボードに公開されているので、シン・トセイの見える化にも貢献していてやりがいがありますね!
シン・トセイダッシュボードはこちら⇩

江崎:今年度はどういった事業をやられているんですか?
 
三田:今はデジタルツイン事業でプラットフォーム基盤の運用保守や改修などを担当しています。
 
江崎:デジタルツインによって何ができるようになるんですか?
 
三田:デジタルツインは、サイバー空間に「東京都」を再現し、リアルタイムデータの分析等を行って施策に反映しようというものです。構想の第一歩として、庁内の地理空間データを庁内で共有・活用することから始めています。先ほどの手続の話や縦割ではないですが、局を超えてデータを共有するというのは難しい!でも、庁内で共有できるシステム環境をつくり、自局以外のデータも使えるようにし、局を超えたデータを掛け合わせることもできますので、新たな解決策の検討などが行えるようになります。例えば、水という切り口で水道・建設・下水・港湾が持つデータをまとめて都市整備局が使う、といったこともできるようになります。
将来的には、災害シミュレーションや都市開発といった分野にも活用される予定です。

- 誰ひとり取り残されないという考え方を多角的にとらえる

 
江崎:働き方や職場の雰囲気など民間企業との違いはありましたか
 
三田:仕事の進め方はだいぶ違いました。課長や部長へのレクって考えが前職ではあまりなかったので…
説明することがあっても、都庁ほどオフィシャルな雰囲気のものではなかったです。
 
江崎:そうなんですね。レクについては上司の方から聞いたんですけど、レクは説明の場としてだけでなく、責任の所在が明らかになったり、仕事の重大さを認識したりできる場でもあると教えていただきました。
 
江崎:転職後、職場にはすぐ慣れましたか?
 
三田:本音を言えば最初は正直戸惑いました(笑)ただ周りに民間から転職してきた人もいるので、2か月くらいすれば慣れてきますね。あとは研修制度があるので不安な人はそれを活用する、といった環境は整っているかと思います。
 
江崎:職場の雰囲気はどうですか?
 
三田:いい意味でも悪い意味でも縦割りな感じはしますね。ただ、縦割りであることで、ガバナンスが効いている実感はあります。
民間と比べると個人のタスクも明確になってますし、エスカレーションがちゃんとしてるから責任の所在が明確になっていると思います。
 
江崎:民間出身だからこそ分かる縦割りの特徴ですね。縦割りに関して、何かこうしていきたい!みたいなことはありますか?
 
三田:これは僕個人が変えていきたいことになるんですけど、僕のひとつ上の役職の課長代理とだけやり取りするのではなくて、ゆくゆくはトップマネジメント層(局長など)ともフランクに議論できる環境があればいいなとは思っています。都庁のオープン&フラットの思想です。
 
江崎:ほかに民間との違いで印象的なことはありますか?
 
三田:それで言うと、デジタルデバイドの是正ですね。前職の企業にはない考えでとても印象的です。誰ひとり取り残されないというデジタルデバイドのような考えは利益にはならないんで民間企業ではあまりないんですよ。
 
江崎:都庁にはICT職向けに様々なレベルやスキルに応じた研修がありますが、三田さんはどのような研修を受けられましたか?
 
三田:研修は色々受けましたが、特に印象に残っているのは海外派遣研修ですね。アメリカのカリフォルニアに僕含めて3人で行ったんですけど、すごく勉強になりました。
 
江崎:海外研修のなかで印象に残っていることはありますか?
 
三田:この研修ではユーザビリティなどを学んだんですけど、行ってみて思ったのは、海外の大企業でも数段階先の最先端のことをやっているのではなくて、僕も理解できる当たり前のことを積み重ねているんだなって。これはすごく印象的でした。
 
江崎:実際に行ってみなければそうしたことはわからないですよね。

San Francisco International Airport Station(サンフランシスコ国際空港駅) での三田さん
Apple ParkでのAR体験

- どのように都政に貢献できるか、何をしたいか、なぜ都庁なのか

 
江崎:続いて転職活動についてお話を聞きたいと思います。お仕事をしながら、どのような採用試験対策をしましたか?
(キャリア活用採用では1次選考で教養試験、専門試験、論文、2次選考が口述試験(プレゼン含む)、3次選考で口述試験が実施されます。)
 
三田:1次選考は試験の2,3か月前から対策しました。平日は基本できないので、土日のどちらか1日で勉強しました。実際の対策としては過去の傾向から対策範囲を絞った感じです。具体的には分析3割、暗記7割くらいのウェイトですね。教養試験は、過去の試験を参考に、数的処理とかの点を取りやすい箇所に絞って対策しました。専門試験のほうは他の専門職、事務職の試験問題から出題傾向を分析し、対象を絞ってひたすら暗記しました。都政事情とか白書、情報系は絞るのが難しいので… 
基本はIPAの試験(基本・応用あたり)対策で対応しました。
 
江崎:週に1日の対策で1次選考に合格したのはすごいですね!
私は数的処理が苦手だったので、教養試験の対策は苦労しました…
 
三田:2次選考のプレゼン選考は「自身の経験が都政にどのように貢献できるか?」のような内容だったと記憶しています。プレゼン資料は左側にこれまでの経験、右側に都政の取組、その下に自分が貢献できることみたいな構成で書きました。
 
江崎:プレゼン試験の当日はどのような感じでしたか?
 
三田:僕は資料の中でテーマを決めていたので、そこをアピールする形で話をしました。僕は、各部に寄り添ったデジタル化推進の経験と1部門だけではなく連携するシステムを考えた全体最適化の経験について面接官からの質問を想定した説明をしました。ITスキルといった技術力よりもコンサルのような方面で攻めた感じです。
 
江崎:3次選考はどのように対策しましたか?
 
三田:3次選考はどう対策していいか分からず、自分がどう都政に貢献できるか、何をしたいか、なぜ都庁なのか、だけを考えておきました。芯がぶれなければ多角的な聞かれ方をしても問題ないかなと思いましたので…

- 夢は窓口のない新しい役所のカタチ


江崎:東京をこうしていきたい、みたいな思いありますか?

三田:あらゆる行政手続がオンラインで完結できるような世界を実現したいと思っています。自分が「住民」として感じた課題を、「自治体職員」として解決していきたいなと。ただしオンラインで完結といっても、対面のチャネルが不要になるというわけではありません。むしろ、オンラインの割合が増えるとリアルな窓口業務の負担が軽減されるので、本当に対面のチャネルを求める方々に対して従来より手厚いサポートを提供できる。そしてオンラインのチャネルは、デジタルに抵抗感の無いユーザ向けに徹底的に使いやすさを追及する。そんなメリハリの効いた行政サービスを実現していきたいですね。
 
江崎:都庁に入るきっかけが、今のヴィジョンにも受け継がれているのがいいですね!


- 都庁は自分のアイデアや課題を実現する場所


江崎:どのような人と今後一緒に働いてみたいですか?
 
三田:デジタルサービス局はチャレンジできる職場なので、変革したい・それに携わりたいって思う人、多様なバックグラウンドを持っている方と一緒に働いてみたいです。あとは行政の様々な縛りの中で「できない」から入らずに「どうしたらできるか」という視点で考えられる人がいいですね。

江崎:多様なバックグラウンドを持つ人が増えれば、デジ局だけでなく都政全体の変革にもつながりそうですね!
 
江崎:最後にICT職に興味を持っている方に向けてメッセージをお願いします!
 
三田:まずは身近な行政に目を向けてみてほしいですね。気づいていない満足な点・不満足な点などを見つけて、その改善策を考えて興味があったら自身の考えを実現する場として、公務員の世界に来てみてはどうでしょうか。
 
江崎:三田さん、本日はありがとうございました!


- インタビューを終えて

 
 今回のインタビューを通じて、皆さんがICT職について少しでも興味を持っていただけると嬉しいです。
 今後はⅠ類B(新方式)のICT職にもインタビューを実施して、異なるバックグラウンドの職員も紹介していきますのでお楽しみに!

ICT職のキャリア活用採用は6月28日(水)15時まで応募受付中!

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