東京都の行政手続デジタル化の取組
1.東京デジタルファースト条例と推進計画
デジタルサービス局は昨年7月に策定した「東京デジタルファースト推進計画」に基づき、東京都が所管している行政手続のデジタル化を推進しています。行政手続のデジタル化自体は、かねてから継続して取り組んでいたものですが、コロナ禍を契機に都政のDX化が急速に進展する中で、都政を効率化させるとともに、都民や事業者の皆様にとって、行政サービスの利便性を高めていくため、令和2年度の「東京デジタルファースト条例」を契機に、取組を一気に加速させています。
東京都の行政手続をデジタル化するために、まず取り組んだことは、東京都が所管する全ての行政手続を洗い出し、現状を分析するための「棚卸調査」でした。この棚卸調査により、東京都には、都民や事業者の方を対象とする行政手続が約28,000手続存在していることが分かりました。この28,000手続を分析したところ、オンラインに対応している手続は、全体のわずか5%にとどまることが分かりました。都の行政サービスが、コロナ禍における非対面・非接触にほとんど対応できていないうえに、いつでもどこでも手続が可能な便利な行政サービスの提供を求める都民や事業者の方の期待に応えられていないことが浮き彫りになったのです。
こうした状況を踏まえ策定した「東京デジタルファースト推進計画」は、令和3年度~令和5年度の3年間で、約28,000手続のうち、70%をオンライン化することを目標としています。この目標に向けて、全庁一丸となって行政手続のデジタル化に取り組んでいるところです。
2.担当者の裏話
都の行政手続をデジタル化していく取組については、まさに都民や事業者の皆様が期待するところであり、また、都政を効率化していくことで、東京都自体の競争力向上にも大いにつながるものと思い、日々、大きなやりがいをもって取り組んでいます。
しかし、約28,000にも及ぶ膨大な手続を調査・分析し、進捗状況を管理していくことは大変手間がかかります。手続を所管している各局の担当者にとっても大変な作業だと思います。これだけの数になりますので、当然記載の不備や誤りなどもたくさんあるのですが、それらを見つけ出し、直していくだけでも大変な苦労があります。棚卸調査をどのように効率化して、作業にかかる負担を減らしていくかについては、ある意味永遠の課題だと思っていますが、改善に向けて色々と試行錯誤しつつ、詳しい話は後程しますが、様々な工夫を行っています。
また、この棚卸調査のエクセル表は、縦に見ていくと約28,000行、すなわち28000手続分存在しているのですが、横の列も128列も(DX列まで)あります。28,000手続の1つ1つについても、これだけ細かい調査を行っていますので、調査に協力していただいている各局にも分かりやすくしていこうと心がけているところですが、こちらについてもまだまだ課題は山積みです。棚卸調査は、今後も続けていくので、色々な意見を聞きつつ、少しずつ改善ができていければと思っています。
これまで、都の担当者視点でお話してきましたが、都民や事業者の皆様へ分かりやすくする取組についてもお話ししたいと思います。
「東京デジタルファースト推進計画」を策定した時に、都の約28,000手続を網羅した棚卸調査表を公開し、都民や事業者の皆様にも都の行政手続のオンライン化状況を見ていただけるようにしていました。しかし、先ほどもお話ししたとおり、約28,000行、128列にも及ぶエクセル表を公開したところで、必要な情報を探し出すのは大変だったり、また、都の行政手続の何%がオンライン化しているのか、自分が関心のある分野の手続の状況がどうなのかを調べたいと思っても自分で集計する必要があったりするなど、とても都民や事業者の方にとって分かりやすい形で公開できているとはいいがたい状況でした。行政手続のデジタル化は都民や事業者の方に直結する問題であり、関心の高い分野です。また、東京都として、都政の透明性やQOS(クオリティ・オブ・サービス)の向上に取り組んでいる以上、こうした問題を解決し、都民や事業者の方に分かりやすく、便利な見える化に取り組んでいく必要がありました。
そこで、棚卸調査表のデータから、BIツールを用いてダッシュボードを作成しました。これにより、都の行政手続のオンライン化が、今現在どこまで進んでいるのか、これからどのようなスケジュールで進捗していくのかといった全体的な情報が簡単に分かるようになりました。また、防災の分野はどうなのか、福祉の分野はどうなのかなど、自分の関心のある分野に絞ったり、個別の手続名を入力して検索したりの詳細状況までこれまでのエクセルの棚卸調査表では見えにくかった全体的な進捗状況を簡単に調べることができるようにしました。もちろん個別の手続について知りたい場合でも、手続名から検索して細かい情報が得られるようにしています。
行政手続は、東京都の行政サービスの根幹です。質の高い行政サービスの提供のためには、時間や場所に縛られず、いつでもどこでも手続が行えるようにすることは非常に重要だと思っています。まだまだ課題はたくさんありますが、引き続き、行政手続のデジタル化に一生懸命取り組んでいきたいと思っています。
執筆:寿 一則(デジタルサービス局戦略部戦略課)
三田 恭平(同上)
猪ノ口 渉(同上)
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