『マンダロリアン』の布教をするはずではなかった

去年、絶対手を出さないと思っていたスターウォーズにハマった。
正確にいうと、『マンダロリアン』にドはまりした。

スターウォーズ好きの方は石を投げないで欲しいんだけど、正直、スターウォーズに対しての興味はスニーカーに入ってきた小石くらいしか無かった。
割とコアなスターウォーズファンである彼氏の影響で、オリジナルの三部作はきちんと観た。プリクエル、シークエルは観たっちゃ観た。『ハン・ソロ』は劇場で観た。感想としてはだいたい「ドロイドが面白い」「エピソード2のオビワンっつーかユアンマクレガーが至高」「動くBB‐8が4万か……安いな」「スターウォーズの世界に『虎』っているんですか？」。

私は、物語を観るときに推しがいないと観るのを諦めるタイプなので、ドロイドが好きだとかオビワンが好きだとか言っていた。オビワンに関しては顔が好きだっただけという説が有力である。ちなみにイウォークも好きになりかけた。ちっちゃいクマ（クマではないんだが）なうえ原始的な武器だけで戦うにもかかわらず、帝国側を劣勢に追いやるパワー感がよかったのだが、鼻が好きになれなかった。あ、イウォークのみなさん石投げないで！　弓も下ろして！

とはいっても、やはり無理矢理祀り上げられた推しにさほどの力は宿らない。私がスターウォーズを好きにならないことは自分が一番悟っていた。

『マンダロリアン』との出会いは2019年、秋。日本ではまだ配信が開始されていなかったのだが、彼氏が執念の裏技（合法）で視聴していたので恩恵に与った。
最初は内心「スターウォーズか……楽しめないだろうなぁ……」と思っていた。思っていたのだが。これが、シリーズに対する知識の薄い私でも置いて行かれることなくシーズン1を楽しめたのだった。

実は、スターウォーズに対しての苦手意識の一つに「ジャンルの広さ」があった。
映画は何作も作られているし、小説、アニメとその銀河は拡張し続けている。小説なんか、広がりすぎたせいで作品によっては二次創作扱いみたいになってしまったとか。ついていけない。というより、追いつけない。それもあって、自分が手を出せるジャンルじゃないと思っていた。

シーズン1が日本でも配信され、シーズン2の日米同時配信が決まった。1話から良かったところは山ほどあるが、第4話。チャプター12。敵の船と一騎打ちするシーンで私も『マンダロリアン』に撃ち落とされた。
とはいったものの、『クローンウォーズ』や『反乱者たち』を観ても相変わらずスターウォーズ本編に対してはさして興味を持てないでいる。そのため今でも自分は「スターウォーズが好き」なのではなく「マンダロリアンが好き」という認識でいる。うわ、そのレーザーの剣振り回さないで！

今更だが、知らない人に『マンダロリアン』のあらすじをば。
ざっくりいえば、孤高の賞金稼ぎが賞金首の赤ちゃんと冒険しながら旅をする話。ちなみに「マンダロリアン」は個人名ではない。賞金首の赤ちゃんは「ベビーヨーダ」とかわいいかわいい言われてるのでググってみてほしい。説明がざっくりしすぎだが、まあ、観たら分かるって。だから観て。

主人公はヒーローのような完全な善の人でも、あくどく稼ぐ悪い奴でもない。ただ淡々と仕事をこなす、賞金稼ぎのプロ中のプロ。冷静で、頭の回転が早く、強い。最高。口数が少ないと思いきや、シーズン2でめちゃくちゃ独り言が増える（赤ちゃんに話しかけているのだが別に会話は成立していない）。

好きなところは沢山挙げられるが、私が一番憧れるのは、必ず約束を守るところ。
劇中に「約束を守るのがマンダロリアンの掟でしょ」というセリフが出てくる。
現実じゃ掟であれ何であれ、約束が守られないことなんてざらにある。

私は人付き合いのなかで、約束が果たされないことが何より許せない。
バイトで使う道具を自分から貸してくれと言ってきたくせに、当の本人はその約束を忘れていたことがある。私は無駄に待ちぼうけた。
母が大学の卒業式に来ると言っていた。母はそのことを忘れて仕事を入れていた。
珍しく自分から誘った約束も、忘れていたとドタキャンされた。

そんな思いばかりしているように感じているが、多分私が根に持っているから強く印象に残っているだけなのだと思う。果たされた約束は、「約束は果たされるもの」という私の意識では当然のことなので記憶に残らない。でも、他人に期待しなくなるには充分だった。
昨日だって「この日絶対休み取るね」と言っていた彼氏が、希望していた日には休みが取れなかったと連絡してきた。これに関して彼に非はない。会社の都合だし、「仕方ない」と切り替えるのがオトナなのだろうが、あいにくオトナにはなりきれない。「またか」と少し怒って悲しくなった。

「みんなどうせ私との約束なんか守らない」と思っている私だから、マンダロリアンの契約や約束を必ず履行する、言葉にしたことは果たすという姿勢が好きだし、尊敬する。
「他人に期待した方が悪い」と頬を引っ掻かれた、あの日の自分が救われたような気持ちになる。

やはり自然に信仰するようになった推しはオタクを救う。
現実の傷はフィクションが癒してくれる。

マンダロリアンを見返した直後に、タイムリーにも自分の地雷を踏まれたので感情のままに書いてしまった。
まあ、何が言いたかったかといえば、みんな『マンダロリアン』観てくれ。