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全部観たいクエンティン・タランティーノ

 Quentin Jerome Tarantino

 気に入った映画と出会ったら、同じ監督の作品を追いかけるのも楽しいもので、自分は、好きになった映画監督の作品は、全部観たくなるタイプなので、そんな監督さんを "note" していきたいと思います。


 マニアックな映画や日本のアニメ、音楽に精通していて、シネフィルを自称する最強のB級映画監督 ”クエンティン・タランティーノ” について


【監督作品】
1.レザボア・ドッグス (1992)
2.パルプ・フィクション (1994)
3.ジャッキー・ブラウン  (1997)
4.キル・ビル Vol.1(2003)Vol.2(2004)
5.デス・プルーフ in グラインドハウス (2007)
6.イングロリアス・バスターズ (2009)
7.ジャンゴ 繋がれざる者  (2012)
8.ヘイトフル・エイト (2015)
9.ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド (2019)


(タランティーノが観たくなる理由)

【予測不能性】

 タランティーノ映画の楽しみのひとつは、ストーリーが予測不能なとこなんですよね。
 観てるうちに、え、こんなところに着地させるの!? みたいな......
 この、思っても見なかった感が魅力なのです。

『パルプ・フィクション』

 カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した、タランティーノの傑作です。この映画の特徴は、本来の時系列の出来事が、順序をバラバラにして構成されているところで、たとえば、主人公の服装が急に変わってたりするのですが、その事情が後のエピソードで理解できる。みたいな感じなのです。
 観る側は、そんな違和感を感じながら、最後は、え、ここにたどり着くの!って感じで終わるのですが、最後まで観ると、もう一回、最初から観たくなっちゃうのです。


『デス・プルーフ in グラインドハウス』

 これは、B級感満載のなかなか酷い作品なんです。(誉め言葉です。)
 大半が下品なおしゃべりか、カーチェイスという、タランティーノ映画の極北みたいな感じなのですが、観てる側としては、後半、何じゃこりゃ~って気持ちになります。
 カート・ラッセルがサイコ・キラーを演じてるのですが、いかれてるんですよね~、ほんと。ただ、物語として、最後はどうなるの?と、思っていたら、まさかの展開でした。
 まあ、くだらない最後なんですが、やっぱりこうでないとねって感じで、そのくだらさなさを楽しんでもらいたい映画なのです。


『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

 予告編を観ても、どんな話か、よくわからないんですが、実は本編を観てみても、結局、何の話だったのかよく分かりません!
 実在の人物も出てきて、有名な「シャロン・テート事件(カルト集団マンソン・ファミリーによる殺害事件)」が関係するんだろうということは分かるのですが、最後の展開は予想外でしたね。
 そして、ああ、だから『ワンス・アポン・ア・タイム〜』ってタイトルなのね.....と。
 長い時間をかけて、そこにたどり着くのです。


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 タランティーノ作品の予測不能性に慣れていくと、なんか、普通の話では満足しきれなくなっちゃったりするんですよね。
 タランティーノの第3監督作品の『ジャッキー・ブラウン』なんかは普通に面白い映画なのに、タランティーノ作品として観ると、物足りなく思っちゃうんですよね。
 原作付ということもあって、タランティーノ臭が薄い感じがするんでしょうね。

『ジャッキー・ブラウン』



【大衆文学性】

 タランティーノ作品って、決して高尚なものではなく、消費されていった娯楽小説みたいな味わいがあるんですよね。
 狙ってやっているのですが、それがハマる人とハマれない人がいるような気がしますね。

◆小説のような"章立て"

 タランティーノ作品では、時々、小説みたいな"章立て"がされているものもあって、物語だということを強く強く意識させてくれます。

イングロリアス・バスターズ

 物語は5章に分けられています。

 第1章『その昔…ナチ占領下のフランスで』
 第2章『名誉なき野郎ども』
 第3章『パリにおけるドイツの宵』
 第4章『映画館作戦』
 第5章『巨大な顔の逆襲』

 こんな感じの5章なんですが、タイトルだけでも、ベタな感じですよね。
 少し、狙いすぎてる感が出過ぎて、『イングロリアス・バスターズ』はアメリカでは大ヒットしたんですが、日本ではあんまり....という感じでした。

 同様の"章立て"風味は、『キル・ビル』や『ヘイトフルエイト』にも見られます。


◆ミステリーとして楽しめる2品

 『レザボア・ドッグス』と『ヘイトフル・エイト』は、物語自体が、裏切り者を探す 犯人当てのような感じで、最後に真相が明かされるまでの緊迫感が魅力的な作品です。
 けっこう、ミステリー小説を読んだ気持ちにさせてくれるので、タランティーノを見始める人なんかには、入りやすい作品じゃないかなと思います。

レザボア・ドッグス

宝石強奪のために集められた、互いの素性は知らない6人の男たち。彼らは計画どうり宝石店を襲撃するが、逆に包囲していた警官隊の猛攻撃を受ける。彼らの中に警察の「犬」が紛れていたのだ。

 物語の大半が逃げ込んだアジトの室内劇なんですが、裏切者を探しながら、疑心暗鬼になっていく強盗団の心理が面白いんですよね。
 真相が判明してからの展開がまた.....て、傑作です!


ヘイトフル・エイト

猛吹雪の夜、ロッジに閉じ込められた7人の男とひとりの女。全員がワケありで見るからに怪しげだが、やがて偶然集まったかに見えた8人の過去が重なりはじめ、互いの疑心暗鬼が頂点に達したとき、最初の死体が出る。

 『レザボア・ドッグス』の変奏曲的な作品なんですが、雪に閉ざされたロッジという舞台に、密室ミステリーの雰囲気が高まります。
 さて、誰が殺したのか.......タランティーノの脚本が冴えてます!



【音楽性】

 タランティーノの映画は、できるだけ映画館で観たいと自分は思っています。その理由の一つが

 音楽のセンスが最高だから!

 映画に使われる楽曲については、タランティーノのマニアックな趣味が炸裂していて、知ってる曲こそあまりないんですが、すごく映画とマッチしていてかっこいいんですよね。
 この音楽を堪能するには、やっぱり映画館が1番なのです!


『レザボア・ドッグス』
 「Little Green Bag」by George Baker Selection

 冒頭のおしゃべりが終わった後、男たちが歩き始めるシーンが渋いんですよね。微妙にコマ数を落としてたりして、そして背景で流れる「Little Green Bag」!、ジョージ・ベイカー・セレクションという、自分にとっては聴いたこともないバンドの曲なんですが、すごくカッコいい!
 曲に合わせてクレジットのタイミングを合わせてると思うのですが、その間の感覚が抜群に気持ちいいのです。
 今でも、時々、CMとかに使われてますが、決まって思い出すのは、このオープニングです。


『パルプ・フィクション』
 「Misirlou」by Dick Dale & His Del-Tones

 「ミザルー」なんて曲、知らないですよね。
 でも、一度聴いたら忘れられない一曲です。
 この曲をバックにタイトルが、ゆっくりせり上がってくる様はカッコ良過ぎです。
 『レザボア・ドッグス』に続いて、この『パルプ・フィクション』でもやられてしまって、以降、タランティーノ映画のオープニングは、映画館で観る楽しさのひとつになってしまったのです。 


『キル・ビル Vol.1』
 「悲しき願い」by Santa Esmeralda

 劇中でもタランティーノ趣味満載です。特に『キル・ビル Vol.1』では、新・仁義なき戦いの布袋さんの主題歌や、グリーンホーネットの主題歌なんかが流れて楽しいのです。

特筆すべきは、雪舞う庭園での、オーレン・イシイとの日本刀による闘いのシーン。
 静寂の中、緊迫感が高まり、背景で流れ始めるのが「悲しき願い」!、本気ですか? このシーンでフラメンコ・スタイルのディスコソング!
 まさかと思ったけど、むちゃくちゃカッコいいんですよね、このシーン。
 そして決着がついた後は、梶芽衣子の「修羅の花」が流れるという....もう、脱帽ですよね。



引用多用何でもあり性

 タランティーノって、自分が好きな音楽を使ったり、好きだった俳優さんを使ったり、当然、好きな映画の雰囲気を引用したりと、もう、好き放題な感じがするんですよね。
 ここまでやると、観客というよりも自分のために作ってんじゃないかって思っちゃいますよね。

 キャスティングの例でいうと、『パルプフィクション』のジョン・トラボルタや、『ジャッキー・ブラウン』のパム・グリア、また、『キル・ビル』のソニー千葉やゴードン・リューなど、自分の憧れの俳優さんを起用しています。

ソニー千葉

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ゴードン・リュー

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 そうかと思えば、ブルース・ウィリスやロバート・デ・ニーロをそれまでのイメージとは違った役で登場させたりしてるので、なかなかスゴいキャスティングだったりするのです。
 特に『ジャンゴ 繋がれざる者』では、あのレオナルド・ディカプリオを悪役にしてみたり、さらに、あのドン・ジョンソンをしょうもないチョイ役にしたりで、ほんと、びっくりさせられるのです。

 ただ、そんなキャスティングであっても、みんな不思議と、楽しんでる感があるんですよね。ノリ....なんですかね。


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 また、タランティーノ映画には、過去作品からの引用が多いんですよね。
 1960年代中盤の戦争アクションっぽい『イングロリアス・バスターズ』やマカロニウエスタン調の『ジャンゴ 繋がれざる者』などなど、それっぽさを無邪気に表現するのがタランティーノ作品の味わいです。

 過去作品のオマージュにしろパロディにしろ、いわゆる"パクり"にならないのは、その作品に対する愛があるからなんだと思うんですよね。
 そんな、過去作品や監督へのオマージュや引用が、これでもかってくらいてんこ盛りだったのが『キル・ビル』だと思うんですよね。


 スタッフを見ても、剣術指導が千葉真一で、武術指導がワイヤーアクションのユエン・ウーピンと、日本の任侠映画や香港のカンフー映画など、私たちにとってはお馴染みのアクションシーンが展開されるのは圧巻です。

 「影の軍団」やブルース・リーの「死亡遊戯」や「グリーン・ホーネット」など、小ネタが満載だし、「攻殻機動隊」のアニメ制作会社プロダクションI.Gによるアニメパートまであって、1歩間違えばパロディになるギリギリのラインで楽しませてくれるのです。


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 監督作品10作で監督を引退するとの話もあって、次の10作目が注目されているタランティーノ監督ですが、次回作には『スタートレック』?とともに『キル・ビル』や『ジャンゴ』の続編などの噂もあって、どうせなら、全部やってくれたらいいのにって思っちゃうのでした。



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