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明智小五郎を読むためのノート

 


 50代を越えてから、少しずつ江戸川乱歩を読み進めています。

 自分は、ミステリーの名作については、海外翻訳物を中心に読んできていて、国内ミステリーは、80年代以降の現代作家さんが中心だったのです。

 海外ミステリーの古典は、ある程度読んでしまったので、今度は国内ミステリーをと思って、ちょこちょこ読んでるとこなのです。


 江戸川乱歩を読み始めて思ったのですが、すでに著作権フリーとなっている乱歩作品は、様々な傑作選が編まれているのですが、近年のものだと、意外と「探偵:明智小五郎」シリーズが含まれていないことも多いのです。

 もちろん、「探偵:明智小五郎」が出てこない名作も多いので、乱歩を読んでいくにはその方がいいのかもしれませんが、ポプラ社の「少年探偵」シリーズで育った者としては、やっぱり ”明智小五郎” シリーズを読んでみたくなるのです。


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 私のミステリー好きのルーツは、小学生の頃に読んだ「少年探偵」シリーズに間違いないんです。
 そして、最初に出会ったのが、夏休みの推薦図書の一つが、シリーズ第1巻『怪人二十面相』だったんです。

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 柳瀬茂さん画の表紙カバーが印象的なこのシリーズですが、あまりにも巻数が多くてコンプリートはできていません。
 ただ、自分が買ってもらってたのは 『青銅の魔人』や『透明怪人』、『サーカスの怪人』、『魔人ゴング』など、名探偵VS怪人の活劇が中心だった気がしますね。

 「少年探偵」シリーズを読み漁った後は、ルブランやドイルを読むようになっていくのですが、中学生になると、ミステリーとしてはアガサ・クリスティーやエラリー・クイーンなどの黄金期の本格ミステリーへ、傾倒していくようになります。

 また、「土曜ワイド劇場」での天知茂さんが明智小五郎役を演じた『江戸川乱歩の美女シリーズ』を観るようになるのですが、ヌードシーンも多くて、小学生にはちょっと早いドラマだったのです。
 でも、そのおかげで、江戸川乱歩の ”明智小五郎” シリーズには、どうやら子ども向けと大人向けがあることを理解していくわけなのです。

 大人版の江戸川乱歩も読んでみたい気もしてたんですが、エロティックなイメージが強かったり、より本格的な作品に趣向が向いていったので、乱歩作品を読む機会を逸していたんですよね。


”明智小五郎” シリーズ一覧

 *印は短篇、( )は発表時期~または連載終了時

1.『D坂の殺人事件』*(1925年1月)
2.『心理試験』*(1925年2月)
3.『黒手組』*(1925年3月)
4.『幽霊』*(1925年5月)
5.『屋根裏の散歩者』*(1925年8月)
6.『一寸法師』(1927年2月)
7.『何者』*(1929年12月)
8.『蜘蛛男』(1930年6月)
9.『猟奇の果』(1930年12月)
10.『魔術師』(1931年5月)
11.『黄金仮面』(1931年10月)
12.『吸血鬼』(1931年3月)
13.『黒蜥蜴』(1934年11月)
14.『人間豹』(1935年5月)
15.『悪魔の紋章』(1938年10月)
16.『暗黒星』(1939年12月)
17.『地獄の道化師』(1939年12月)
18.『兇器』*(1954年6月)
19.『月と手袋』*(1955年4月〜)
20.『化人幻戯』(1955年10月)
21.『影男』(1955年12月)

 シリーズは全部で21編ですが、長編と言っても、大長編はなく、中編と言ってもいい長さのものもあります。


 ようやく読み始めた江戸川乱歩なのですが、とりあえず、真新しそうな角川文庫の「江戸川乱歩ベストコレクション」から読んでみました。

 乱歩の代表作がかなり網羅されているので、なかなか楽しいセレクションでした。
 また、コレクションの配本ではないですが、これに短編集『D坂の殺人事件』を加えると、21編ある”明智小五郎” シリーズのうち8編読むことができます。※一覧で太字になってる話が収録されています。


 

 とりあえず、残りの”明智小五郎” シリーズも読みたいと思っているのですが、読もうとするなら、光文社や創元の全集を読むしかなくなっちゃうんで、”明智小五郎” シリーズ関係巻だけというのもですね~って感じなのです。

 まあ、この後の作品は、図書館で昔の本を探すか、本という体裁にこだわらなければ、Kindle版の全集を購入するかって話になるんですよね。


 某読書サイトで読書管理してるので、できればKindle版全集の形態は避けたいところなんですが、現状では電子図書が一番いいのかなって思っているところなのです。


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 正直に言うと、”明智小五郎” シリーズって、本格ミステリーの名探偵のように推理していく場面ってあんまりないんですよね。
 特に長編になると、怪奇趣味、嗜虐趣味等々、エログロに溢れながら、闇に生きる怪人たちとの対決が中心の、冒険スリラーみたいな感じなのです。
 本格とは呼べない作品が多いんですが、怪人二十面相に連なる、由緒正しい名探偵VS怪人の物語が楽しいんです。

 完読がいつになるかは分かりませんが、慌てずに読み進めていこうと思っています。



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