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逆に考えてみよう

以前の記事に、アルトシューラ―少年が目撃したという、「氷がクレーンの代わりになった」発明について書きました。

同じ著作『And Suddenly the Inventor Appeared』の中で、ゲンリッヒ・アルトシューラ―(Genrich Altshuller)は、シンプルな例題としてチョコレートキャンディの問題を紹介しています。

それは小さな女の子の誕生日パーティ。招かれたゲストの一人がチョコレートキャンディの大きな箱を抱えてやって来ました。
キャンディは小さな瓶の形をしていて、中はラズベリーシロップで満たされています。

みんなでキャンディを食べていると、あるゲストが「このキャンディってどうやってつくるのだろう?」と呟きました。

「そりゃあ、最初に瓶の形のチョコレートをつくって、それにシロップを詰めるんだろう」と、もうひとりのゲスト。

すると三人目が続けます、「だとしたら相当濃くてどろっとしたシロップじゃないと、チョコレートの瓶は簡単に壊れてしまうな...でも、そんな濃いシロップをチョコレートの中に流し込むのは難しそうだぞ」、「シロップを温めれば流し込みやすいだろうが、それじゃ今度はチョコレートの瓶が溶けてしまう。いやあどうしたらいいんだ?」

そこに「発明家(Inventor)」が現れます。
「私にはアイデアがあるよ。簡単に、しかも不良品を出さずにこんなキャンディをつくる方法がある。そのトリックはね...」

さて、どんなトリックでしょう?

彼の説明はこうです
「まず流し型にシロップを入れてそいつを凍らせるんだ。その後で、型から出した凍ったシロップを、溶けたチョコレートの中に浸せばいいんだよ」

この問題は、当時のソ連で若者向けの雑誌に掲載された問題だそうです。

このシンプルな問題には...といっても、私自身はアイデアを思いつかなかったので、「シンプル」と言う資格はありませんが(涙)...、TRIZ(トゥリーズ)手法の中でよく使われる二つの着眼点を示唆してくれます。

一つ目は、「逆に考えろ」という着眼点です。
他のゲストは全員流し込みやすくするためにシロップを温める方向で考えていたのに、「発明家」だけはその逆を考えて、冷やしてみたらどうか、凍らせたらどうかと考えました。

二つ目は、「物質の状態(固体・液体・気体)の変化を利用しろ」です。「発明家」は固体と液体の相変化を利用することで、この問題をうまく解決できないかと考えました。
一昨日の記事の「氷がクレーンの代わりになった」のアイデアも、まさにこの二つ目の「相変化を利用する」着眼点から生まれています。

言われてみると「そりゃそうだろう」みたいに感じるかもしれませんね...
でもどうでしょう?
難題にぶつかってウンウン悩んでいるとき、隣の誰か(競合メーカ)はTRIZが示唆する着眼点でどんどんアイデアを出して先に行ってしまう、自分はその背中を茫然と眺めている...
どうせなら背中を眺める方じゃなく、眺められる方がいいのでは?


TRIZを実際に活用して革新的な製品開発・技術開発に取り組んでいる企業にインタビューしている記事を載せています。是非読んでみてください。


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