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嫌われる勇気
エピソード#33 呆れるほど転職する
働かざるもの食うべからず。人間は生きていくために働かねばならない。
公務員として同じ職場で定年まで勤めあげた両親にとって、私はふらふら転職をする呆れた娘であった。お盆休みや正月に実家に帰ると、「仕事はまだ続いているのか?」と毎回同じ質問をされるようになった。
そのような質問を受ける度、自分は欠陥人間であり、精神的な病を患っているのではないかと不安になってきた。その頃、不眠症の薬を処方してもらうために通院していた心療内科の先生に相談してみたが、「転職する気があるぐらいなら心配ない」という楽観的な診断をもらった。
この頃、すがる思いで読んでいたのが「嫌われる勇気」という本だった。
フロイト、ユングと並ぶ心理学の巨頭であるアルフレッド・アドラーの教えをわかりやすく対話形式で解説された本であり、世界で500万部を超えたベストセラーである。
これまで人の思考の歪みや行動に異常があれば、その原因は過去の体験にあるという考え方が主流だった。それに対してアドラーは、たとえ辛い過去の体験やトラウマがあっても、いまこの瞬間からでも幸福になれるとした。(ざっくりな理解で申し訳ない)
そして、アドラーは、「人間の悩みは、すべて対人関係から生じる」と主張した。両親の期待を裏切りたくない、他人から嫌われたくないというような動機で物事を決断していくことは、自分の人生を生きているとはいえない。
他人がどのように思うかは他人の課題であり、それを自分の判断の拠り所にするべきではないとしている。さらに、他人からの承認欲求から解放されれば、自分の人生を自由に生きられると結論づけている。
過去の連続で現在が成り立つのではなく、目の前に起きている事象は過去からの延長線上にあるものとは限らず、単なる出来事の点である。そこに100%の因果応報が成り立つわけではない。過去にこだわる必要もないし、現時点で悲観的な未来予想をしても仕方がない。
また、アップルの創業者スティーブ・ジョブズは大学卒業式で、次のようにスピーチした。
「将来を予想して、点(知識や経験など)と点をつなぐことはできない。 後々の人生で振り返った時にしか、点と点をつなぐことはできない。 今やっていることが、将来、自身の役に立つ(点と点がつながる)と信じて取り組みなさい」
そのスピーチから生まれた「Stay hungry, Stay foolish」の名言に、世界中の人々が感動した。
結論、そういうことだ。
どんな酷い目にあったとしても、自分自身を惨めに感じてはいけない。
どんなに他人からバカにされ、嘲笑されたとしても、自分の可能性を信じられるのは自分だけだ。
転職することは、ちっとも悪いことなんかではない。自分を必要としてくれる場所で働くことができれば、会社にとっても自分にとっても幸福である。
働くことは苦しいことではないし、働くことを楽しむことはできる。
自分に合う職場で働きたいと思うことは自然なことだし、だから転職するのだ。
「これを最後の転職にする」、私はそう心に誓った。
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