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経営コンサルタントの教科書

2019年12月16日初版
著者 小宮 一慶 経営コンサルタント

レコメンド⭐⭐⭐

「良い経営」の本質と実践が分かる本

お客さまが買うのは「感動」ではなく、あくまでも良い商品、良いサービスであると商売の基本について、博識な著者の考えを展開している。

誰でも知っているのかどうかは不明だが、一流の経営者・コンサルタントならわかる「正しい答え」をこの一冊に凝縮した一問一答形式でまとめた本。

本書の目的は、これまで長年にわたり経営コンサルタントとして働いてきた著者の経験をもとに、経営コンサルタントという仕事の本質やポイント、コツを、簡潔に伝えることである。著者は、京都大学法学部出身、銀行員を経て、海外でMBA取得。独立後は、名古屋大学客員教授を務め、多くの会社の監査役や取締役を歴任したことから、大企業に社外取締役としてアドバイザリー業務を志望する人向けには参考になると思われる。

著者が特に影響を受けたのは、P.F.ドラッカー氏、松下幸之助氏、稲盛和夫氏、渋沢栄一氏などのマネジメントの大家や、さらに古くは孔子や老子であり、コンサルタントの志向性としては王道である。

というのも、一流の経営者には高い精神性が求められるため、思考が哲学や宗教に近くなる。そのため王道で含蓄のあるコンサルタントの助言は、間違いがなく大企業の創業者や代表者には好まれると思われる。

本書の中で著者が一番伝えたいのは、経営の本質や具体的なポイントとは何か?であり、中心テーマとして取り上げているのが「お客さま第一」の本質とは何か?である。これは、ごく当たり前の質問のように聞こえるが、きちんと答えられる人は多くはないという。

「お客さま第一」とは、最終消費者に近い営業部門で働いてる人は、日々の業務を通して感じていることであろう。しかしながら、本社の管理部門や生産部門になると、直接消費者の顔が見えないため、お客様は架空の存在となり、毎日の仕事は上司の顔色をうかがいながらにならざるをえない。これは会社の規模が大きくなればなるほど顕著になる。

また、コンサルティングの現場では、お客さまの「答え」を導き出してあげなければならず、お客さまの課題に対して「核心を突いた答え」を提供することが、経営コンサルタントに求められていると著者は述べている。しかしながら、それには異を唱えたい。なぜならば、あまりに問題の核心を突きすぎると経営者からは嫌な顔をされる。だから、その核心の突き加減が難しいのだ。また、有名な人の言葉を引用するだけでは、相手にされなくなるだろう。

本書では、一人前の経営コンサルタントならばきちんと答えられなければならないと著者が考えている「質問」に対する「答え」を提示し、なぜそうなのかを解説するというスタイルを採用している。

しかしながら、著者の出した「答え」は会社によって異なるし、経営者の何をもって一流とするかについて、正直なところわからない。そもそも一流の経営者を定義すること自体が難しいと思う。著者が正しい答えと思っていても、相手によって価値観が違うことを疑ってみた方が良いと思う。

たとえば、同じ質問をイーロンマスクと松下幸之助氏にすれば、きっと違う答えが返ってくるだろう。しかしながら、現在のところ売上高においては、圧倒的にイーロンマスク氏の事業の方が大きい。だからといって彼は一流の経営者か、といえば賛否両論あると思われる。

ただ、「答え」は一義ではないことを踏まえ、本書の「質問」と「答え」を読んだところ、合点した質問と答えについて以下にまとめた。


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