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あなたは、あなたで、素晴らしい|柳谷 由美

私のセクシュアリティは、レズビアンだと思っている。
「いつから自分のセクシュアリティに気付いたのか?」と聞かれると、少し戸惑ってしまう。

私は、小さい頃から男の子と一緒に遊ぶことが多く、サッカーをしたり、ドッジボールをしたりして過ごすワンパクな女の子だった。
自分のセクシュアリティについて小さい頃はよくわからなかったが、性別にとらわれた生き方にはなぜか抵抗があった。

小学生時代、学校行事で行う演劇では「走れメロス」のメロス役に、「白雪姫」の王子様役に立候補をして男役を担った。女の子が男役をやったっていいじゃない、そう思った。

高校生の頃に、女の子から告白をされて初めは少し驚いたが、嬉しい気持ちもあった。
性別に関係なく、「私という人間」を好きになってくれたこと、それが嬉しかった。

レズビアンとして生きることになったのはこの頃から。かれこれ20年くらい前になる。
「いつから?」と聞かれると20年前からと答えるが、私の中で物心ついた時からセクシュアリティにとらわれた生き方をしてこなかったので、同性からの告白も、ごくごく普通のことだった。

この頃、自分がレズビアンであることをアウティングされ学校でいじめを受けたことがある。相談できる人もあまりいなくて苦しかった。高校の記憶はほとんど覚えていない。


学校に馴染めず1カ月で大学を辞めたこともある。「もっと女らしい格好をしたら?」と友達になった女の子から言われ、短髪なのに無理やりヘアピンをつけた。私なりの精一杯の「女の子らしい格好」だった。
でも、どう考えても私らしくなかった。周りを見れば、異性愛が当たり前のような環境に「せっかく合格したんだから、、」というオトナの声は、なんの効力も持たなかった。
そしてその後、浪人して別の大学へ行き直すこととなった。


大学を卒業後は、失恋もあって働くことがしんどくなり誰にも相談出来ずに、北海道へ帰ってきた。この頃、自分の中で人生最大のどん底を経験したと思っている。


高校時代のいじめ、大学を1カ月で辞めたこと、北海道へ帰ってきたこと、
私はありのままの自分で生きることを大切にしてきたつもりだったけど、一方で自分自身を嫌ったり、否定したり、「普通じゃない」と思っている自分もいることに気付いた。


私はレズビアンとして生きて、同性を好きになることも、性別にとらわれた生き方をしないことも自分の中では当たり前で自然のことだと思って生きてきたけれど、その一方で周囲との人間関係や置かれた環境でのトラブルを、どこか「レズビアンというセクシュアリティである自分のせい」と思って生きてきたのかもしれない、と感じた。
自分で自分を肯定できないことほど、辛いことはないと知った。


そして塞ぎこんで生きる日々も続いたが
「もう自分のことを否定して生きるのは辞めよう」と心に決めた。
両親にカミングアウトをして、もう誰にも自分を隠さないで生きることにした。
私の中で、とっても大きな決断だった。その決断のあとに、心が軽くなったことを覚えている。

カミングアウトをすることが正しいというわけではないが、その行動が私自身の存在を肯定する力となった。もしかすると私は、今までずっと周囲の社会と戦ってきたのではなく、自分自身と戦ってきたのかもしれない、そう思った。


「ありのままで生きる」ことは、簡単なことじゃない。
ありのままで生きることを、まずは自分自身が肯定しなければ、ありのままで生きられないから。


私は10年前から、札幌で行われている「LGBTパレード」のボランティアや運営に携わってきた。それも、ありのままの自分で生きることを肯定するための一つの手段となっている。


「ありのままで生きる」ことは、「自分のセクシュアリティを肯定すること」だと思う。私も、自分のセクシュアリティに対して、周囲と違う違和感を感じていたかもしれないけれど、そのおかげでありのままの自分を肯定することが、自分らしく生きるために何より大切なことなのだと、気付くことができた。


私は今。レズビアンで良かったと思っている。
この先も、レズビアンとして生きているのかはわからないけれど、今はレズビアンである自分に誇りを持っている。


今年も9月12日(土)にLGBTパレード「さっぽろレインボープライド」が開催される。

コロナ禍により、仲間同士集い密になることも許されないような環境も続いているが、こういう時だからこそ「私達はここにいること」「1人じゃないこと」そして「共に生きていること」を伝えたい。違いを否定するのではなく、違いを互いに祝福し合える。そんな社会でありたいと思うし、そんな社会を作っていきたい。


もし今自分のセクシュアリティに悩んでいる人がいたら伝えたい。
どんなセクシュアリティであっても「あなたは、あなたで十分素晴らしい」ということを。
そして「あなたは、1人じゃない」ということを。

柳谷 由美(さっぽろレインボープライド実行委員会 実行委員長)

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プロフィール
さっぽろレインボープライド実行委員会 実行委員長
にじいろほっかいどう 理事長
北海道LGBTネットワーク 副代表
2010年より、オープンリーレズビアンとして活動を開始。
女性や若者向けの交流イベントやクラブイベントを主催したり、講演活動などを行い、誰もが自分らしく生きられる社会作りを目指している。

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