農からはじまる野菜の調理科学研究室・第2回『Small Kitchen お米編』
静かに佇む鍋を前に、お米の品種と構造・栄養素を知る。
日本では、国に品種登録されているお米の数は939品種 。このうち実際に作付され、収穫し利用されているものは440品種 。
主食用として出荷されているものが284品種なのだそうです。講座が始まってすぐに聞いたこの数にまずビックリ。さすが瑞穂の国と感心することひとしきりです。
そして、この数あるお米の中でも、やはり作付け割合の上位を行くのはコシヒカリ一族。講師の中尾さんから、コシヒカリ、ひとめぼれ、ヒノヒカリ…と誰もがその名を知るお米たちの系譜が語られていきます。
福井県出身のコシヒカリ、暑さ寒さに耐えられる品種が開発され、その子孫たちは今や北海道から鹿児島まで日本各地で栽培されている一大勢力なのだとか。
さて、そんなお米たちの栄養素ってどうなってるんでしょうか?
お米の断面図を使って、中尾さんの話が続きます。
ヒトの消化酵素で分解吸収することの難しいと言う食物繊維のくだりでは、大腸で微生物の力を借りて発酵させると聞き、土好きの筆者は「まるで土の働きにそっくりだ!」と思わず手を打ちたくなる場面も。
またデンプンの種類の違いにも話は進みます。
もちもちして甘味が強く、冷めたときにゆっくり老化が進むアミロペクチン、甘味控えめで粒感しっかり、冷めると老化が早く進むアミロース。
デンプンの糊化の仕組み、老化の起こる温度。うるち米は炊くのに、どうしてもち米は蒸すのか?冷めたご飯をどうして冷凍庫で保存するのか?
順を追って聞いていると、日常の台所の作業ひとつひとつが意味を持ち始めます。
さぁ、お米を炊いてみよう!
講座の後半は、お米を実際に炊いていきます。
まずは改めて、お米が炊き上がるまでの4段階を再確認。
洗う、水を切る、水を吸わせる、そして加熱。
「この中でも、それぞれのお米に必要な加水量と、炊くまでに何℃で何分浸水をさせるかがとても重要です」と中尾さんは言います。
これは、お米の種類によって含有するタンパク質の量や、デンプンの種類の違いがあるからだそうです。
お米の袋や売場などによくよく見ると書いてある、加水量や浸水温度や時間は、実はそれぞれのお米を熟知した米農家さんや米屋さんが、この条件を踏まえて教えてくれている「美味しい」情報、という訳です。
ちなみに、お米の糊化は60~80℃で起こりますが、そのちょっと手前、40~60℃ではアミラーゼという酵素が働いて、デンプンをグルコースに分解し、
口の中で甘味を感じるようにしていく過程があります。この時間を長くすることで、よりじっくり甘味を出していけるというわけです。そのためにも重要なのが、事前の浸水温度と時間の設定なのだそう。
洗う、水を切る、水を吸わせる、そして加熱。たったこれだけと思うことなかれ。この工程の何と奥深いことか…。ぐつぐつを泡を立てる鍋を前に唸るしかないのでした。
やがて室内にお米の炊き上がった良い匂いが。参加者のみなさんの顔も自然と綻び、にぎっていただいた塩むすびを「美味しい~」「もちもちしてるな~」と感想を述べあいながら、みんなでワイワイと味わいます。
もぐもぐとおにぎりを頬張りながら、お米がもちもちになった理由、しっかり水分を保っている理由、甘い理由、冷めたときに変化する理由…ホワイトボードを見ながらひとつひとつを思い出します。
美味しいことには理由がある。洗い方ひとつ、浸水の仕方ひとつ、それぞれの方法と理由を知ったからには、昨日よりも美味しいお米を炊くべく、実践あるのみです。
我が家で待つお米たちの浸水時間、どれくらいなんだろう?と思いを馳せながら帰路についたのでした。
レポートする人
今井幸世さん
2021年の夏から野菜づくりの勉強を始める。はじめての土、はじめての野菜、これまで想像もしなかったたくさんの経験と自然のふしぎを通じて、環境と状況の中にある自分を発見。自然の摂理に沿って生き、はたらき、出会い、食べる暮らしを目指し自給農に挑戦中。
NPO法人スモールファーマーズでは、農を通してより良い世界をつくる活動に共感いただける「仲間」を募集しています。
ご自分のペースで、ゆっくりゆる~く関わっていただけたらと思います!
Small Farmersサポートメンバー
NPO法人スモールファーマーズ公式ライン
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