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【architect】あれから10年

10年前の今日そのとき、僕は池袋にある【自由学園明日館』にいた

新たに建築家になる夢を持って勉強をスタートしたときで都内中の建築を自転車で見て回ることを毎日のようにしていた

その日も住んでいた中野から自転車で池袋まで走らせ近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライトの日本における名作である明日館を訪れていた

ちなみにフランク・ロイド・ライト設計の日本での最初の建築である帝国ホテルのオープン東日本は1923年の関東大震災の日だった
帝国ホテルは無傷だったようだ

話を明日館に戻すと、学校ということもかり、ひとつひとつのスケール感が小さく、肌感に近い感覚のする建築だ

椅子やテーブル、窓などライトらしい細やかなデザインが暖かみのある空間に設られている

低い開口や微妙に調整された開口から入る柔らかな光の内部の仄暗さが落ち着きを与えてくれる

そんな名作を見ていると、大きな地震が襲った
それは数回にわたり、歩くのもままならないほどの揺れだった

同じように見学に来ていた人達と共に園庭で揺れが収まるまで待機していた

遠くに見える池袋の高層ビルが目に見えて左右に揺れていた

すぐに家族に電話をしてみたがなかなか伝わらない
とにかく当時住んでいた中野の家が築50年くらいのボロアパートだったので倒壊していないかと自転車で急いで帰ったが、本棚が倒れた程度で無事だった

少しずつ情報が入ってくると東北地方を震源とする大地震であったことがわかった

それからは運送関係のアルバイトをしていたのでガソリンスタンドが使えなくなり仕事がなくなった
スーパーなどでも食品が減ったりしたと思う
夏場には計画停電なんてのもあって一定の時間地域別に停電になった

普段の生活は自転車をメインにしていたが、震災直後は電車が完全にストップして、帰宅困難者が続出した

それでも少しずつすると僕の周りの生活は回復していった
当時の僕はお金も社会的信用もない、自分の事で精一杯で何もできなかった
いや、何かやろうと思えばできたのかもしれないが、行動に移せなかった

あれから10年が経って、結婚をして子どもも生まれた
建築士としての実務もいくらか積むことができた

社会人として微力でも力になれることをしていきたいと思うようになった

正直に言うと、自分の中でボランティアやNPOの精神がうまく理解できていない
どこか他人事だったり偽善的になってしまわないかという気持ちがある

ただこれはみんな持っているものだろう
偽善でも自分のためでもいいから、小さなことから行動に移すことで社会の一員として必要とされる人間になりたいと思う

建築家の坂茂氏は災害現場で建築家の出来ることを考え世界中で実行してきた方だ

普段から社会との関係を考えることがいざというときに建築家に出来ることを考えることに繋がるはずである

この気持ちを忘れないように強く心に刻みたい

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