カップスリーブの心添え
秋の深まりとともに
刻々と、熱々の珈琲が
恋しくなります。
僕は出社すると、
まず最初に向かうのが
オフィスビル5階のコンビニ。
そこで朝食を数品買うのが常です。
レジで、店員さんにヨーグルトと
トマトジュースを渡し、
いつもの一言
「ショートのエスプレッソ」。
会計を済ませ、3メートル程離れた
珈琲カウンターへ。
店員さんが大型の珈琲マシーンで淹れ、
差し出してくれる熱々の珈琲。
カウンターの台の上にはカップスリーブ。
僕はそれをはめます。
カップスリーブ。
熱々の珈琲を断熱するための、
茶色のこの厚紙も
僕の朝のレギュラーです。
僕は長年、この行動を繰り返しています。
だからコンビニの店員さんの変遷も
見てきています。
片や、店員さんたちも、ある程度、
僕のことを認識していると思います。
出社日には毎朝7時前に
必ず現れる客として。
昨日のこと。
いつものヨーグルトと
トマトジュースをもって
レジに向かい、
エスプレッソを注文して、
会計を済ませ、
珈琲カウンターに向かった、その時。
僕の視界にウェットティッシュの大箱が。その瞬間、そうだ、僕の机上の
ティッシュ箱がカラだったと、
はたと気付き、条件反射で、
ウェットティッシュの箱を持って
レジに再び並びました。
いつもと違う、このアクションは
ほんの数秒のこと。
僕はティッシュの会計を済ませ、
珈琲カウンターで
待ち侘びているであろう、
エスプレッソを取りに身体を向けました。
果たして、そこにはありました。
いつもの珈琲が。
でも少し、いでたちが違います。
カップスリーブをまとっていたのです。
ここ数年、顔馴染みの店員さん。
体格の良い、丸顔、
スポーツ刈りの青年。
彼が気を利かせてくれたのでした。
彼もまた、
お客さんのほうを向いている人。
ほんの些細なことかもしれません。
だけど、これだけで
朝の景色は変わります。
10月1日の早朝。
なんか幸先よく年度の折返しを
迎えられました。
15年に及ぶ、僕の朝のルーティンに、
こんな小さな幸せが潜んでいるなら、
今度は僕が、誰かに何かを心添えできる、
そんな気がしています。
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