Splatoonシリーズはスベっているし、Splatoon3は盛大にスベっている

まえがき:タイトルの「スベっている」は売れ行きの話ではありません。


自分はSplatoon3からSplatoonシリーズを始めた。PvsPのゲームはあまり好きじゃないという食わず嫌いがあったけど、やってみると結構楽しいので、発売1年が経とうとしてる今でも結構な頻度で遊んでいる。

プレイ以前はスプラシリーズに対して、アートやデザインのこだわりが半端ではないという印象を持っていた。
「ゲームのためだけに独自のフォントを作った」
「独自の音声言語も作った」
「秀逸な音楽とキャラデザで、3Dホログラムのライブは満員御礼」
「バリエーションが異常にある着せ替え」
等々、プレイ以前から界隈で小耳にはさむことが多かった。
だから、プレイ以前の"ガワ"しか知らない状態でも「シューティングゲーには珍しく、アートやデザインに凝ってるらしい」という印象が強かったので、結構そこに期待していた。
しかし実際にプレイし始めてみると、期待してたのとは少し違った。アートやデザインへのこだわりは確かにすごくて、それが世界観の演出に一役買っているのだけど……そもそも世界観とゲームとの噛み合いが根本的に弱い、というかサムいのが気になってしまった。

「イカたちがインクを塗って、潜って、撃ち合う」このゲーム自体は物凄く面白い。ゲームそのものの楽しさはやっぱり、遊びを起点にゲームを作る任天堂の本領だ。
でも「イカたちがなぜこんなにバトルを繰り広げてるのか?=なぜ自分はこのゲームをするのか?」という点は(訳アリで備わった強い闘争本能とかの”裏設定”はあるみたいだけど)結局「イカしたやつになるため」というサムいギャグでしか説明がされてない。
イカたちはただそのためだけに、オシャレに着飾り、バトルで上に昇り詰める日々を過ごしている……のだという。

理由付けとしては物足りない、というか、はっきり言ってそのギャグはスベっている
そんなオヤジギャグを動機に、ここまでファッションに凝るか?こんな過酷な撃ち合いをするか?こんな音楽作るか?となり、世界観に親しみを持てないのだ。
それなら初期のマリオとかゼルダみたいに、「よくわかんないけどキノコとカメが溢れてる世界にぶちこまれた」「なんか剣渡されて魔王倒さなきゃいかんっぽい」程度のちぐはぐさをキープして、ゲームとしての面白さを重点的に提供してくれる方が良い気がする。

残念なことにシリーズ3作目のSplatoon3では、この、表面だけをつかまえたうすっぺらさによるスベりが、もっと強まってしまっている要素がある。
この作品、「3」に異様に固執してるのだ

・目玉新武器は3連弓
・新スペシャル、トリプルトルネード
・新スペシャル、ウルトラショット(巨大弾3発×3回)
 ↑この辺までは偶然かもしれないが
・アイドル枠のすりみ連合(魚のすりみと「スリー」「3(み)」をかけてる)はもちろん3人組
・フェスは3チーム対抗戦
・フェスボーナスマッチの倍率は最大333倍
・ストーリー主人公は順当にいけば「5号」のはずが「新3号」として活躍
・ストーリー最終戦は制限時間3分33秒
 ↑これらはさすがに露骨である。

まだ探せば他にもありそうだけど、代表的なのはこんなところだと思う。
「だから何?」と思うだろう。そう、そこなんですよ。「だから何?」としか思わない。
せめて3の数霊(成功、繁栄)とか、三位一体(聖書の父・子・霊)とか、そういう記号学的裏付けでもしてくれていれば、「お~、深い」ととりあえずは思えるのだけど。
ちなみに最近のSwitch以降のポケモンは、そういう「お~、深い」的な裏付けをアホほど盛り込んでいたりする。

こういうゲームの裏にあるヘンテコなこだわりは「なんで?」と思った人が発掘すべき隠れた背景(いわゆる考察対象)であり、これによって作品の深みがぐっと増して、作品への愛着心を養うことに貢献する。
しかしSplatoon3は、やたらめったら「3」にこだわるくせに、今のところなぜこんなに3まみれなのかという考察に対する答えがぜんぜん見当たらない。だから、「制作陣がご利益にあやかろうとして、3をぶち込めるだけぶち込んだのかな?」という下品な考察が成り立ってしまう。
つまり、今作の「3」へのこだわりは残念なことに「(イカだけに)イカした奴を目指す」とかいうオヤジギャグレベルにくだらないものであると言えてしまう。
特に最終戦の制限時間3分33秒はわざとらしすぎて、プレイしてて一番盛り上がるところなのに僕は「もう3はわかったからキリ良い数字にしろや」という感想が湧いてちょっと冷めてしまった。

さらに致命的なことには、根本のゲームデザインに「3」の要素はない
このゲームはあくまで「4対4」の「2チーム対抗戦」が基本デザインだ。おや、「3」を徹底できていないじゃないか!と基本的なところにチグハグが生じているので、より盛大にスベッている感を感じる。
一応、フェスという期間限定イベントでは「3チーム対抗戦」が発生するが、それも現状ゲームデザインが上手くいっていない。
3チームのどの陣営に加わるかは自由なのだが、どうしても参加率に不均衡ができてしまう。そのせいで、実質的な2チーム対抗戦になったり、特定の1チームの1人勝ち状態になったり、という展開がお決まりとなっている。

つまり「3」に中途半端にこだわったことで、デザイン的に欠陥のある遊びを提供している始末なので、それもスベり感に拍車をかけている。

さて、さんざんにこき下ろしてしまったが、爆売れしているのは事実だ。というか、ここまでスベり倒しておきながら、目立ってひんしゅくを買ってる様子もないのは、かなり凄いことだと思う。
やっぱりこのゲームの持ち味の「ユーザーフレンドリー」「ゲーム自体の面白さ」に加えて、圧倒的なアートやデザインの完成度が、こういうスベりを抱えておいてなお有り余る魅力を創出してるのだろう。

実際僕もプレイしてるときはこういうサムさは忘れて「うおおおおおおおお!」と叫んで熱狂している。ちなみに愛ブキはわかばシューター。縁の下の力持ちをする立ち回りが好きです。シャケしばきも楽しいよ。みんなもスプラやろう!!!

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