🍛開発レポート『テーマに沿って食材を選ぶ（漢方・薬膳編）』

こんにちは。ゆっくりおいしいねむたいな の左近です。

前回のレポートで、“ポジティブになれて癒されるカレー”を作ることに決まったので、今回はテーマに沿った食材選びを行います。

食材を選ぶために、主に＜漢方・薬膳＞＜栄養学＞＜スパイス・ハーブ＞の基礎を調べたのですが、どの分野も興味深く、端折って説明してもかなりのボリュームになるので、まずはじめに＜漢方・薬膳＞についてまとめます。

端折ってまとめたのにも関わらず、かなりのボリュームになりました...
なるだけ分かりやすい&読みやすいように目次を分けているので、「長い！！」という方は気になる目次のみ読んでください。

※書籍や媒体によって考え方や情報が多少異なります。あくまでも私が拝読したいくつかの書籍・媒体から得た知識ですので、ご覧になる方によっては「少し情報が違うぞ？」と感じられる部分もあるかもしれません。

🍛漢方と薬膳の定義とは

漢方と聞くと苦い薬をイメージしがちですが、それは“漢方薬”であり、漢方の理論に基づいて処方される医薬品のことを指します。
“漢方”は、飛鳥時代に日本に中医学が伝わり、日本独自に発展した医学です。＜薬食同源＝薬も食も健康を保つためには欠かせないもの＞＜医食同源＝薬も食物も源は同じ＞という考え方があります。そして、薬膳は中医学の考え方を用いた料理の一種です。

補足程度に漢方医学の歴史を簡単にまとめます。

【漢方の簡単歴史】

700年代から日本が中国の医学を積極的に導入し始めた
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中国伝統医学の日本化が進み、さまざまな学派も生まれる
医療の担い手が宮廷医から禅僧に替わり、一般民にも医療が広まる
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1600年代、現在の日本漢方の始まりとなる古方派が誕生
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1800年代、西洋医学が日本に導入され、中医学をベースに日本独自に発展した医学のことを「漢方」と呼ぶようになる
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西洋医学の広まりにより、漢方医学が著しく衰退し、民間医療として継承される
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1910〜1920年に発売された漢方医学書に注目が集まり、再び広まる
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2001年に、医学部の教育内容ガイドラインの到達目標に「和漢薬を概説できる」が加えられたことで、大学で漢方医学の講義が増え始めた

🍛五味・五気とは

漢方では、食物には五味・五気という性質が備わっているとされています。
ポケ●ンの、ほのおタイプ、みずタイプ、くさタイプのようなものです。

五味とは...五臓（肝/心/脾/肺/腎）に効果を与える5つの味覚のこと
酸→肝：情緒や自律神経、血の分配や気の巡りなどに効果がある
苦→心：精神や心臓の循環機能などに効果がある
甘→脾：吸収・消化機能、栄養や水分代謝などに効果がある
辛→肺：呼吸、皮膚の機能、水分代謝などに効果がある
鹹（塩気）→腎：生命維持機能全般、生殖機能、泌尿器に関する機能などに効果がある

五気とは...食べた後の身体の変化
熱：体をもっと強く温める作用、興奮作用がある
温：体を温め、興奮させる作用があるが、熱より低く常食に向いている
平：温めたり、冷やしたりする作用はなく、常食に向いている
冷：体を冷やす作用はあるが、寒よりは弱い
寒：体をもっと冷やす作用があり、生での過食は控える方が良い

薬膳では、この五味・五気の考え方を元に自分の体質・体調に合った食材や調理法を選びます。

（カレーの話なのに、現時点でカレーが全く出てこないので、箸休めとして最近作ったカレーの写真を挟みます）

🍛漢方における体質のタイプ

体質・体調にも漢方ならではの考え方があり、身体のエネルギーとされる＜水＞＜気（自律神経）＞＜血＞のバランスによって、体質が分けられます。
＜水＞＜気（自律神経）＞＜血＞のいずれかが不足してる、滞っている、多すぎる...など、どのようにバランスが崩れているのかによって、タイプが分かれます。

例えば、身体に＜水＞が＜不足している＞場合は津液不足タイプと言われ、肌の乾燥や便秘などの症状が目立ちます。
このようにいくつかのタイプに分けることができ、診断方法もあるのですが、全て説明していると膨大な情報になってしまうので、今回は端折ります。＜薬膳　体質　タイプ＞で調べていただくと、より詳しい情報が出てくるので、気になる方はぜひ。

ちなみに、漢方医学の他にも、インド大陸発祥のアーユルヴェーダ医学も体質のタイプを分け、それぞれに合った食事や処方を行います。アーユルヴェーダの場合は、病気の治療と予防だけでなく、哲学なども含まれ、より善い人生を目指すことを目的としています。

アーユルヴェーダにも興味はあるので、勉強したいと思います。

🍛テーマに沿った食材をピックアップする

長々と説明しましたが...やっとカレー開発の話です。

今回作りたいカレーは“ポジティブになれて癒されるカレー”なので、このテーマに沿った体質＜気帯＞＜気虚＞をピックアップしました。

＜気帯＞をざっくり説明すると...
不安感があり、気が滅入って塞ぎ込んだり、気分が不安定になる。
生命力である気の巡りが滞っている状態。

＜気虚＞をざっくり説明すると...
やる気が出ない、肉体的な慢性疲労や、精神的なストレス続きの日常から免疫力が低下している状態。

気＝自律神経なので、自律神経を整えることを目的として＜気帯＞＜気虚＞に効果があるとされている食材を選びました。

気帯タイプに向いている食材
らっきょう、紫蘇、カモミール、シナモン、サフラン、ターメリック、バジル、陳皮（みかんの皮）、ペパーミント、八角など

気虚タイプに向いている食材
玄米、小麦、もち米、かぼちゃ、人参、しいたけ、山芋、栗、ゴマ、牛肉、鶏肉、羊肉、ニンニクなど

こうやってまとめると、カレーで使う材料も多いですね。
漢方の考え方から、最終的に使用した材料はこちらです。

上記の食材＋次回&次々回でまとめる＜栄養学＞＜スパイス・ハーブ＞の切り口から選んだ食材を“ポジティブになれて癒されるカレー”の材料にします。

🍛漢方と薬膳を調べて思ったこと

漢方と薬膳の基礎を調べるまで、薬膳＝高麗人参とか高そうな食材を使う精進料理を想像していたのですが、一般的な食材をベースに考え、定義をカジュアルに捉えると、普段の生活でも取り入れられます。
そして、食にまつわる他の医学についても軽く調べましたが、「どの医学が正解か」ではなく、「どの医学が自分に合うか」が重要だと感じました。

と同時に、「スパイスにも五味・五気の性質もあって、生姜やにんにくも薬膳で使われるけど、俗に言う＜薬膳カレー＞ってどこからが薬膳カレーなんだ...？」という疑問がモヤモヤと出てきました。気になって検索したところ、水野さんのnoteが出てきて同じ疑問を持たれていました。

水野さんの仰っている通り「言ったもん勝ち」だと思うのですが、定義をするならば、「身体のどこかを良くしたい」ことを目的として、漢方の考え方を用いて作られたカレーが薬膳カレーなのかなと、漢方について調べながら思いました。使う食材から定義されるというよりも、概念から定義されるのかなと。（個人的な解釈ですが）
「なぜ、カレーが身体にいいのか」については、弊社で分析を進めているテーマなので、弊社なりの答えを見つけたいです。

🍛次回のレポート

先ほどの話にも繋がりますが、漢方・薬膳を調べてみて納得できる部分もあれば、そうでない部分もあり、「もう少し理論的に食材を選びたい」と感じたので、次回のレポートでは、食材に含まれる栄養素とそれが身体にもたらす効果を調べ、栄養学的に食材を選びます。主に下記の3つの要素を深掘りします。

・幸せホルモン＜セロトニン＞
・気持ちを安定させ、不眠症を和らげる＜カルシウム＞
・イライラやストレスを和らげる＜GABA＞

🍛最後におすすめ漢方・薬膳書籍の紹介

漢方と薬膳のことを学ぶために、いくつかの書籍を拝読しましたが「ゆるーく漢方や薬膳について知りたいな〜」という方には、こちらの書籍がおすすめです。

台所漢方 食材&薬膳手帳

読みやすい&基礎が理解しやすい上に、食材の紹介だけではなく、身体の不調に合わせたレシピも掲載されています。

それでは、また次回🍛