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48歳。スロウリーな独立。


こんにちは。クリエイティブディレクターの中島英太と言います。25年間在籍した株式会社電通を昨年末で退社し、独立しました。

新卒で電通に入社したのでほかの会社のことを知らないのですが、自分にはとてもいい会社でした。素晴らしい先輩や同僚、後輩たちと素晴らしい仕事と経験をさせてもらいました。

自分はもともと人前に出たり、何かを声高に主張することは得意ではないのですが、その一方で、思いついたアイデア、企画、表現物、ビジネスモデルが世に出て、触れたひとのこころを動かし、結果大きな流れが変わることに、ものすごい快感を感じるタイプなのです。とてもたのしいのです。唯一の趣味かもしれません。たのしいから、25年間も続けられました。

はじまりは、コピーライター/CMプランナーとして。伝統的なマス広告でたくさん経験を積ませてもらいました。CMはたった15秒です。オンエアが終われば消えます。でも何年経ってもいまだに「あのCM好きなんです」と言ってくれる人がいる。その人の中にはちゃんと残っているんです。消えてない。これまで200本以上つくりましたが、いつもそういう気概でやってきたつもりです。

その後はデジタルクリエイティブの世界へ。ちょうどYouTubeやTwitterが相次いで日本に入ってきた頃で、やれることが爆発的にふえました。すべての仕事が実験で「作り方を作りながらやる」そんな感じでした。そうするとまた欲が出るもので、さらに広い領域で根本的な価値を生み出す仕事をしたいと思うようになりました。

そして広告クリエイティブの川を上流へ向かい、価値のクリエイティブに取り組んでいるのがこの数年。開発作業を中心に取り組んでいます。商品のコンセプトや、ユーザーの体験価値を高めるアイデアを考えたり、企業や事業の価値をことば化してみんなが共有できるものにしたり。広告という枠の外でもお役に立てることはたくさんありました。

思い返すとだいたい10年ごとに軸足が変わっていますが、一方でやってることは変わらないという感覚もあります。広告も事業も人のこころを動かしてナンボ、という意味では。そしてどちらもとてもたのしい。これからはそのたのしさをさらに突き詰めて、純度を上げてやっていきたいと思います。

甘いことを言いますが、お金儲けは二の次三の次です。もちろんお金は大事ですし、日本は資本主義社会です。でも自分というひとりの人間にとっての資本は何かを考えると、わくわくする気持ちだったり、人とのつながりだったり、幸せを感じるちょっといい時間なんです。そういった「マイ資本」の獲得を目指して仕事をしていきます。そしてそれらが世の中にふえることを目指し、会社を設立しました。

名前は、株式会社スロウリーと言います。

新潟の北越急行にスノータートルという名の「超低速列車」が走っています。北陸新幹線の開通により存在意義を失ってしまった路線に、いっそゆっくり走らせたら話題になるかもという理由で生まれた風変わりな列車。時速10キロほどで走るので風景だったり橋やトンネルの構造がよく見えて、とても人気があるそうです。電車は1秒でも早く着くのがエライ、という当たり前の考えからは絶対に生まれなかった列車です。ノロマだけどロックだと思いました。みんながスピードで勝負するなら、こっちは見える景色の美しさで勝負するぜ。みたいな。

早いのがいい、快適なのがいい、便利なのがいい。それもいいけど、そればっかりじゃおもしろくない。ノロマの中にも価値を見出せるのが人間です。人口もGDPも右肩下りの日本がそれでも幸せになるためには、やっぱり発想の転換が必要だと思うのです。資本主義のあり方も変わらないといけない。

48歳になりました。起業するにはまあまあいい歳です。若い人のようにガンガン行くぜ!という感じではありませんが、この列車のように、ちがう歩き方で、ちがうお宝を大事にしながら進んでいきたいと思います。たったひとり、一両編成で。

スロウリー社のやること
価値創造のファーストワンマイル=「コンセプトのデザイン」と
ラストワンマイル=「コミュニケーションのデザイン」


一両編成のスロウリーですが、旅は道づれと言います。もし考えに賛同していただける方がいらしたら、ぜひご一緒しましょう。

お世話になった方々も、はじめましての方々も。
これからどうぞご贔屓に。よろしくお願いいたします。

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というわけで慣らし運転ではじめました「週刊スロウリー」。ものすごく筆がスロウリーな自分の退路を絶ち、毎週かならず記事を書くためのタイトルをつけてみました。開発のこと広告のこと、時には脱線してよもやま話。週に1回書いていきます。

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