ひといちばい敏感な子の接し方、非暴力・共感のコミュニケーション さいかちどブンコ読書記録~かんしゃくの原因、感謝が心を遠ざけるとき
こんにちは。ここさんぽの中川です。
夕方はコオロギが鳴き始めました。
秋が少しずつ近づいてきているようでほっとしました。
さいかちどブンコで借りた本の読書記録です。
子供との接し方や大人同士のコミュニケーションについて、とても考えさせられました。
1.「HSCの子育てハッピーアドバイス HSC=ひといちばい敏感な子」
明橋大二著 1万年堂出版
HSCはHighly Sensitive Childで、5人に1人の割合でいる、ひといちばい敏感な子です。
敏感な子は傷つきやすく、すぐ不安になるようなネガティブなイメージがあります。
ですが、敏感な子はこの世界の良いところにもひといちばい敏感に反応するので、愛や優しさ、美しさを高い感受性で受け取り、ひといちばい幸せな人生を歩むことができるそうです。
とはいえ、人生で困難に会わずに生きることはできません。
困難を乗り越えられる練習をする必要があります。
このため、HSCの子には「自分には味方がいる」という安心感がとても大切だそうです。
このことは、HSCに限らず、すべての子どもに必要なことではないかと感じました。
また、HSCは病気等ではないため、治すものではなく、自分らしさだと受け止めて、伸ばしていくものだということです。
たしかに生まれついての性格や感性を矯正しようとされたら嫌ですね。
「こんなことで泣いて/怒って/騒いで」など非難して矯正しようとするのではなく、気持ちを感じられること、気持ちを表現できることなど色んな面に気づいて、共感していくのが良いのかなと思いました。
HSCの中には、かんしゃくが激しく、文句が多い、いわゆる「育てにくい」と感じる子もいるそうです。
かんしゃくはわがままのように見えてしまいますが、その子が傷ついているサインで、実際に傷ついているし、それをうまく表現できないから親に八つ当たりするしかなく、かんしゃくになっているだけなのだそうです。
また、わがままを言う自分が受け入れられるかが不安で確かめる、試し行動の場合もあるそうです。
そういった事情を考えると、子どものかんしゃくに対してわがままだ、迷惑だ、早く切り替えて、などの注意するのではなく、しっかり子どもの気持ちを受け止めるほうが、早くかんしゃくは落ち着き、自分の気持ちに対処する方法を身に着けられそうですね。
それでもずっと対応する親や保護者は疲れると思います。
悩みを共有できる場を持つ、子どもの世話を手伝ってもらうなどの周りのサポートが必要だと思います。
また、HSCが生き生きと伸びるために、強い語調で叱らないことが必要だそうです。
注意するときでも、強くなく、優しい注意で十分とのことです。
全面否定にならないように、できている部分も必ず伝えるのが良いそうです。
強い語調の具体例としては、
「鉛筆の持ち方間違っているよ」→
「あなたは何をやらせてもダメね」「どうしようもない子だわ」
というようなセリフが挙げられていました。
できている部分を伝える例としては、
「鉛筆の持ち方間違っているよ」→
「あら、この字上手に書けているじゃない!先生の字みたい」
がありました。
鉛筆の間違った持ち方を指摘するにしても、それに加えて全部の行動否定や人格否定が混ざると言われた方は嫌な気持ちになります。
指摘と、小さくてもいいのでできていることを見つけて褒めるのをセットにすると、相手を認めていることが伝わり、相手は気持ちの拠り所を見つけて、アドバイスを受け入れやすくなると思います。
体罰の禁止はだいぶ浸透してきたと思いますが、大きな声や怖い声での威圧、言葉の暴力はまだまだあると思います。
HSCに限らず、ほかの子供、大人同士のやり取りでも大切なことだと思いました。
非暴力のコミュニケーションについては次のNVCの本で詳しく取り上げられています。
さいかちどブンコ つなぐば所有の本棚で読めます!
2.「NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法 新版」
マーシャル・B・ローゼンバーグ 日本経済新聞出版
NVCはNonviolent Communication非暴力コミュニケーションで、相手を評価したり、決めつけたりするのではなく、自分の感情と自分が必要としていることに耳を傾けていくコミュニケーション方法です。
自分では暴力的ではないつもりで話していても、相手や自分を傷つけたり、苦しめるきっかけとなる言葉を使ってしまうことがあるということです。
NVCの4つの要素は
(1)観察
(2)感情
(3)必要としていること
(4)要求です。
具体的には
(1)自分の人生に大きな影響を与えている具体的な行動を「観察」する
(2)観察したことについて抱いている「感情」
(3)そうした感情を生み出している信念、価値観、願望等、
「必要としていること」
(4)人生をより豊かにするための具体的な行動の「要求」
この4つの情報を自分から相手に率直に表現することがあります。
逆に、相手からこの4つの情報を聞き、共感をもって受け止めることもあります。
自分の4つの情報を率直に表現する例としては
「階段の床におもちゃが3つ置いてあると(観察)、
お母さんはイライラしちゃうよ(感情)。
階段を歩くときに躓いて危ないから、みんなが使う階段はいつも安全にしておきたい(必要)。
階段のおもちゃは、おもちゃ箱か子ども部屋に置いてくれる?(要求)」
などです。
これらに対して、道徳を持ち出したり、比較をしたり、責任を回避すると、思いやりを妨げる暴力的なコミュニケーションになります。
「おもちゃを出しっぱなしだなんてだらしない」、
「お兄ちゃんはちゃんと片付けているのに、散らかすのはあなただけ」、
「あなたのせいで家の中が片付かない」
などです。
「~のせいで」という言い回しはよく使われていますが、自分の感情と思考に自分が責任を負うことの自覚を曖昧にする言葉となります。
「あなたが●を〇すると私はこう感じる」というような言い回しでは、自分の感情や思考の原因が相手にあるような印象を強めてしまいます。
「●が〇されていると私はこう感じる」というように状況が自分の感情を刺激していることがわかるよう言い換えることも大切です。
相手の感情や要求を聞き取ることについても、具体例を挙げて詳細に説明されています。
著者が紛争地域にNVCのプレゼンに行ったときに参加者から
「人殺し!」と呼ばれた場面でどう対処したかに始まり、
「あなたほど傲慢な話し手を迎えたことはない!」、
「十代の未婚出産は、もっと社会的制裁を受けるべきだわ!」
などの言葉から始まる非常に緊張感のある場面でのNVCの対応について、とても鮮やかに取り上げられています。
また、観察は非常に大切ですが、評価とすり替わらないように注意する必要があります。
観察した事実と、自分の主観が入った評価が混ざらないよう、「私は◯と思う」「私の考えは◯」など、自分の主観である場合はその旨明示することが大切です。
×「あなたは無責任だ」 〇「やりっぱなしの家事を見てがっかりした」
×「あなたは冷淡な人だ」 〇「あなたに断られて傷ついた」
×「あなたはあまりにも気前が良すぎる」
〇「昼食代をすべて人にあげてしまうなんて、私には気前が良すぎるように思える。」
×「Sはサッカー選手としての技術が劣る」
〇「Sは20試合に出場して一度もゴールしていない。」
×「Jは醜い。」 〇「Jの外見は私にとっては魅力的ではない。」
ネガティブな評価が暴力的なコミュニケーションとなる一方、感謝も評価となってしまっては、肯定的な言葉だったとしても、心と心を遠ざけてしまうコミュニケーションとなります。
「この報告書はよく書けている」
「あなたは非常に感性豊かな人だ」
「昨夜、車で自宅まで送ってくださって、ご親切さま」
などです。
これらの相手への賛辞・感謝は、話し手の心の中で起こっていることを表現していません。
話し手は評価する人、相手は評価を下される人として分断されていて、心の距離を遠ざけてしまいます。
NVCの感謝の要素は3つあり、
1.わたしたちの幸せに貢献した行動
2.それによって満たされた、私たちの必要としていること
3.必要としていることが満たされたことで生まれた心地よい感情
です。
これを、
「あなたは〇をしてくれました。
私は〇と感じています。
私が必要としていた〇が満たされました。」
という形で表現します。
著者は、NVCワークショップの参加者に
「あなたは素晴らしかったです!」と言われても、喜べないそうです。
著者の言動のどの部分が参加者の人生を豊かにしたのか、
その言動を聞いてどう感じたのか、
その言動は参加者が必要としていたどんなことを満たしたのかを聞き、
初めて参加者の感謝の言葉を共に喜ぶことができました。
NVC流に言い換えるとこのようになるということです。
「あなたがこの2点をおっしゃるのを聞いたとき、
希望が湧いてきました。
そしてほっとしました。
私は、息子と気持ちを通い合わせる方法をずっと探していたのです。
あなたのおっしゃったこのふたつのことは、
私に手がかりを与えてくれました。」
懲罰的な力の行使についても触れられていて、著者は体罰に明確に反対しています。
これは子育てハッピーアドバイスシリーズでも繰り返し言われています。
子どもの行動を体罰で矯正していると、
「間違ったことをした人を叩いてよい」というメッセージを子供に送ることになります。
これにより、その子どもはほかの子を叩いたり、
年老いた親が子どもの意に沿わないことをしたときに、親を叩くことになります。
また、罰としての力の行使は、体罰だけではありません。
非難の形で相手の人格を貶めること、
「悪い」「わがまま」「未熟」とレッテルを貼ったりすること、
好きなものを取り上げること(お小遣いを減らす、車の運転を減らす)
などがあります。
「ごはん食べないとデザートないよ」、
「おもちゃ片付けないとテレビ消すよ」
など子どもの好きなものを取り上げることをちらつかせるのは、
うちでも取引的に使ってしまう手段でした。
ですが、そのような誘導・取引は、
相手の感情や要求に配慮していない、
どうして自分がその行動を要求しているのか相手に伝えようとしていない、
強制的に相手に言うことを聞かせている
という点で問題があることがわかりました。
お互いの感情と要求を共感をもって話し合えるよう、気を付けていきたいと思います。
そのためには時間と気持ちのゆとりが大切ですね。
章の途中で挟まれる著者の詩や著者の友人の詩も、とても奥深く、思いやりにあふれていてよい詩でした。
怠惰な人、愚かな子供、コックを一度も見たことがないと歌っている不思議で面白く、洞察に満ちた詩もあります。
さいかちどブンコ shizukibooksで読めます!
さいかちどブンコは9月で終了し、今後は映画上映会での本の貸出を行っていきたいと思います。
9月7日土曜日が最終としょ係です。
今後もよろしくお願いいたします。
遊んで学んで休みたい!ここさんぽ 中川
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