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【ジビエレザー】ケモノを山に埋める気持ち【狩猟同行3日目】

こんにちは、ともこです。最終日です!
昨日仕掛けたワナを見回ります!動物いるかな・・・ドキドキです。

今日は最終日!見回り後、山を降りる。

さすがに4日も電波の届かないところにいると、
クライアントが困っているかも・・・。

この日は見回りを1回済ませたら、電波の届く現世へ帰還するぞ!

この記事は、電波のこない山小屋に泊まり込み、ハンター(父)の狩猟に同行した3泊4日の記録です。前の記事から続いています。もしよかったら読んでください!
【1日目・2日目の概要】
1日目:ハンターが事前に仕掛けていたワナを見回った。ケモノ発見ならず
2日目:ワナを見回ったあと、新たにワナを仕掛けた。ケモノ発見ならず

▼1日目・2日目の詳しい様子はこちら

※動物の毛皮・遺体の写真が出てきます。苦手な方はここでストップしてください。


ワナの見回りラスト1回!結果は・・・

ケモノ発見ならず!!

むしろ、掘り返されてます!

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「バレバレですよ」と落ち葉をめくってある。ワナにかからないよう、ソッと。やられた〜!ケモノたちのセンサーの鋭さに、びっくりさせられます。職人かよ!と。

ヌタ場の状態から、今回の職人はおそらくイノシシとのこと。ハンター曰く、ワナを見破られることはたまにあるらしい。

・・・やっぱり?初日、ワナ設置の白い標識つけてるの見て、「これケモノでも見ればわかるんじゃ・・・?」ってちょっと思ったもん・・・。

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ただ、それでもワナにかかるヤツがいるってことは、標識はあまり関係ないのでしょう。地面の違和感を、五感でキャッチして見破ってる。鼻やヒヅメのセンサーすごい。まさに職人です。

そして、職人といえども、コンディションによってはミスすることもあるんだろう。ワナ猟はハンターと職人の心理戦ですね・・・。

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ワナを元に戻し、心理戦は続きます。

これで私は山を降りるので、明日からはハンター一人で見回ります。仕留める瞬間が見られなくて、残念でした。また立ち合いにこよう、と気を取り直して、撤収しました。

その翌日、ハンターからまさかの連絡がくることになると知らずに・・・(後日談へ続く!)

ケモノを山に埋める気持ち

この3日間、山小屋に泊まり込みです。夕食のときは、ウイスキーを飲みながらハンター(父)の話を聞きます。と言っても、ほとんどの会話が、テレビ(映る)にチャチャいれしてるだけ。1回だけ、狩猟の話が聞けました。

父や、父の所属する猟友会は、ほとんどの場合、獲ったケモノを持ち帰ります。それでも、ごくまれに、事情があって持ち帰れない時があるそうです。

「動物を食べずに埋める時って、やっぱり、申し訳ないなという気持ちがある」

やっぱりそうなんだ。と、心にストンと入ってきました。

「命をもらったからには、使い切らないと申し訳ない。」いろんな先生に繰り返し教わったこの言葉が、感覚が、新しく聞こえたんです。実際に自分の手でケモノを殺している人でも、だからこそ、そういうふうに思うんだ、と。

私自身も、革を触るようになって初めて、ジビエ料理を食べるようになりました。

食べなかった鹿のその後

ある時、ワナを見回り忘れたことがあったそうです(うっかりですが、ルール違反です)。そのワナにシカがかかってたらしいことに気づいたのは、仕掛けてから半年近く経った頃。

ワナの回りには、明らかに本数の少ない白骨が残っていたそうです。

つまり、山の生き物たちが鹿の体を食べたということ。鳥や小型の獣が、それぞれの食べる分を巣に持ち帰り、共食したということです。

鹿は、天敵がいないから増えている。それは、鹿を殺す生き物が山にいないということです。一方で、死んだ鹿の体を食べる生き物は、山にたくさんいる。

私たちは、死肉を食べません。肉を食べることと動物を殺すことは、いつもつながっている。だからこそ、「食べる」と結びつかない「殺し」にタブーを感じるんだと思います。

私たちの食べない部分まできれいに食べ尽くす、山の生き物たち。食べて、死んで、養分になって木を育てる。山には循環がある。

ケモノの体をどうするのがいいんだろう?

山に置いてきた鹿の話を聞いて、矛盾する気持ちが生まれました。
殺すからには、誠意を持って使い切りたい。
でも、ケモノの体を山から持ち出すと、山の循環から外れてしまう。

革小物ショップisatoも、「使い切る」をサポートするつもりで始めたものです。一方で、山の循環のことも尊敬しています。山の生き物たちの共食を知ると、「私たち以上に、ケモノの体を有効に使いきれる存在がここに・・・」と萎縮します。

これは時間をかけて、これから自分なりの答えを探そうと思ってます。

有害鳥獣駆除は、動物を殺すこと。
それは現代人にとって、とてもハードルの高いことです。
私も、この手で哺乳類を殺したことがありません。

殺した経験がなくても、毎日、生き物を食べています。
私は最近肉を食べていません。でも魚と卵と乳製品は食べます。
野菜も、全部生き物です。めちゃくちゃいい仕事をしてくれてるお豆腐も、元は生き物です。

生きている限り、他の生き物から命をもらい続けます。そして煙になって、雨になって、木や花や野菜になる。私も大きな循環の一部なのかも。

もし自分が猟をするなら、やっぱり父のように「食べなくては、使わなくては申し訳ない」と感じると思う。殺すからには、自分なりの誠実さで精算したい。精算が、「きちんと使い切る」という形であらわれるのかな〜。

※追記
仕留めた動物の体を山に放置してはいけない理由は、「①クマをおびき寄せることになり、危険。②腐敗した肉が川の水を汚染してしまうため、危険」だそうです。

ちょっと毛皮を見せてもらった

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帰る前にちょっとだけ、年末にとったイノシシの毛皮を見せてもらいました。若いメスのイノシシ。脂が硬くて、皮を剥がすのに苦労したそうです。

毛皮はミョウバンで処理し、腐らない状態になっています。生きていた姿がイメージできるので、やっぱり迫力があります。

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裏側。皮を丁寧にはいだのでしょう。穴があまりありません。なんか格子模様がついてます。努力のあとが見えますね。自分でなめしてここまできたのはすごいです。

しかし・・・硬い!!

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皮膚だったところがかなりゴワゴワ

いや、バッキバキです。

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リアルな毛がそのまま残っているのは、確かにかっこいいですね。
古着屋さんとかにある毛皮は、毛を残しつつ、皮膚部分がもっと柔らかいイメージ。

私も、タンナー(なめし業者)さんを探す前は自分でなめすことを考えていました。セルフなめしでも時間をかければ柔らかくなるイメージでした。

結局、東京の山口産業株式会社様にお願いして、"やさしい革"ブランドでなめしていただいています。
参考:【ジビエレザー】なめし方を考えてみた(革の処理方法を考えている時の記事

しかし、セルフなめしの毛皮、こんなに硬いとは!

ハンター「尻敷きにしようかな〜」

尻敷きよくわからないけど、それがいいんじゃないかと思う。狩猟同行おしまい!ここまで読んでいただきありがとうございました。

追記:後日談!その頃、イノシシが・・・

私と夫が山を降り、SAで肉まんを頬張っていたその頃。

ハンターはなんと・・・

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イノシシを仕留めていた!!!!

壮年のオスで、ワイヤーをちぎりそうな勢いで向かってきたとのこと。
ケガがなくてよかった。ちなみにお肉は、とても固かったらしい。

ハンターが下山してきたので、革を受け取りました。

イノシシ原皮を手に入れました!

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手足と、余分な脂肪、お肉を切除してなめし工場へ発送!

1ヶ月ほどでなめし工程が終わるはずなので、
4月にはイノシシ革の作品を出せそうです!

質感を見てからデザインを考えるので、
もしかしたら5月になるかもしれません。

noteでもまたご報告しますね!それではまた!

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