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2020年 これは良かった!映画4選

タイトル通り!
私自身の2020年の振り返りも兼ねて今年観た映画の中で特に良かった、楽しめたという映画を4本ほど紹介しておく。
選出基準は2020年に公開あるいは配信された映画であることの1点のみ。
細かいことは抜きにして私個人のエモーションが楽しい!面白い!と感じたチョイスなので石は投げないでほしい。

へヴィ・トリップ 俺たち崖っぷち北欧メタル!

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フィンランド北部、何もない田舎の村。退屈な日々を送る25歳のトゥロは、“終末シンフォニック・トナカイ粉砕・反キリスト・戦争推進メタル”というジャンルを標榜する、4人組ヘヴィ・メタルバンドのボーカルだ。バンドは結成から12年間、一度もステージに立つことなく、一曲もオリジナル楽曲を作ったこともなく、単なるコピーバンドだ。だがある日、遂に自分たちの曲を作るという強い意志のもと、メンバーの試行錯誤の末にとてつもなくキラーな名曲が誕生した。また同時にひょんなことからノルウェーの巨大メタルフェスの主催者がメンバーの家を訪れ、バンドに千載一遇のチャンスが舞い降りる。


バンド名は“インペイルド・レクタム"(Impaled Rektum ※直訳すると直腸陥没)に決定、ハイウェイの自動速度取締機を使って初のアーティスト写真も撮った。だがいざ地元のライブハウスで初の前座を務めたとき、緊張したトゥロが大嘔吐するという前代未聞の惨劇に終わった。ノルウェーのフェス参戦も水の泡と化し、バンドは敢え無く解散した。さらに愛すべきドラマーのユンキがハイウェイを爆走中にトナカイを避けて事故で死んだ。トゥロは亡き友人を想い涙し、自身の不甲斐なさを恨んだ。ユンキのため、仲間のため、そして自身のため、トゥロはバンドを再結成し、ノルウェーに乗り込む決意を固める。残された3人は盗んだバンに墓地から掘り起こしたユンキの棺桶を乗せ、精神科病院からドラマーを誘拐したのちノルウェーへと逃亡。フィンランド警察から追われ険しいフィヨルドを駆けながら夢のフェスを目指す。だが国境では彼らの前にノルウェーの “デルタ部隊”が立ちはだかる。進め!インペイルド・レクタム!目指せ巨大フェス!フィンランドが誇るインペイルド・レクタム誕生の瞬間を、メタル満載、盗難事件あり、バイキング船の堂々たる巡航あり、果てはフィンランドとノルウェーの武力紛争にロマンスもあり!で描く、まさに破天荒な鋼鉄のロードムービーが日本上陸。


http://heavy-trip-movie.com/story/

「何この怪文書?」
と思う方が過半数じゃないだろうか。
気持ちはわかるが、このヤク中の夢日記みたいなあらすじを読んでブラウザバックする前に1度本作を観て欲しい。
たったの90分だから。
荒唐無稽なあらすじかつ端々に出てくるパワーワードに惑わされるかもしれないが、映画の内容は単純明快かつ王道な成り上がり物語だ。
田舎町の冴えない4人組メタルバンドが一発逆転のチャンスを掴み、1度は挫折を味わうものの復活し、立ちはだかる障害を蹴散らしながら夢の大舞台へとその足を進める。
……ね、王道でしょ?
あがり症でシャイボーイなボーカルのトゥロ、早弾きの名人でデビュー曲作成の立役者であるギターのロットヴォネン、バンド内のブレーン的存在でありながら独自の世界観を持つ変わり者ベースのパシ、そして誰よりも前向きでフェス参戦の夢に情熱を注ぐドラムのユンキ。
バンドメンバーのバランスは良く話のテンポも良い。
このキ〇ガイじみたあらすじからはまるで読み取れないが作中で非業の死を遂げるドラマーのユンキ、彼がとてつもなく熱い男なのだ。
本作はユンキという男が生きている時に残した情熱を仲間たちの手で引き継ぐ映画と見ることもできるほど、影の主人公だ。
というのもユンキの死はトゥロがバンドの解散を告げようとも諦めずに行動したが故の死だからだ。
トゥロの失態、フェス参戦の白紙化と立て続けに不幸が続こうとも彼はインペイルド・レクタムのライブを諦めなかった。
故に自動速度取締機で撮ったアー写を警察署から盗みに行き、その帰り道で事故に遭って亡くなってしまうのだ。
親友の死の悲しみに打ちひしがれるトゥロはヒロインからの檄が入ったこともあり、再起するのだがそれ以降のトゥロが本当にかっこいい。
「ホモ野郎」と馬鹿にしてきた不良にはベロチューで反撃し、いけ好かない恋のライバルのバンを奪い取って逃走したりと、人が変わったようにやりたい放題。
新たなドラマーを見つけてもユンキの死体は忘れずに(棺桶ごと)乗せてノルウェーへと向かう。
誰よりも彼がライブをしたいと願っていたからだ。
文脈だけなぞれば間違いなく熱血少年漫画ですよ、ええ。
何か一つのことに情熱を持って打ち込み続けた、そんな期間が少しでもある方にとっては不格好でも我武者羅に走り続けるインペイルド・レクタムの姿が輝いて見えるのではないだろうか。

……あっ、注意点が1つだけ。
本作はあらすじにも書かれている通りゲロを吐くシーンが何度かあるのだが、そのシーンは全てノーモザイクなのでゲロ描写が苦手という方はそれだけ注意してほしい。
でも、笑えて泣ける素敵な映画だよ。


ミッドサマー

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家族を不慮の事故で失ったダニーは、大学で民俗学を研究する恋人や友人と共にスウェーデンの奥地で開かれる”90年に一度の祝祭”を訪れる。美しい花々が咲き乱れ、太陽が沈まないその村は、優しい住人が陽気に歌い踊る楽園のように思えた。しかし、次第に不穏な空気が漂い始め、ダニーの心はかき乱されていく。妄想、トラウマ、不安、恐怖……それは想像を絶する悪夢の始まりだった。https://www.phantom-film.com/midsommar/sp/

『へレディタリー 継承』で1つの家族が崩壊するまでのドロドロギスギスとした地獄を描いたアリ・アスター監督がまたまたやってくれた。
意図せず2連続で北欧が舞台の話になってしまったが別にそういう括りではないです。
私自身、へレディタリーを視聴済だったのでアリ・アスターがそういう監督ということはわかった上で本作に臨んだのだが……それでも想像を超える新たな地獄だった。
1番に語りたいのは数こそ少ないものの粒揃いのゴアシーンだ。
アッテストゥパン……皮剥ぎ……血のワシといった数々の人体破壊ゴアシーン。
中でもアッテストゥパンの完成度は素晴らしいの一言に尽きる。
死にきれなかった老人を見て嗚咽をあげる村人たちの姿にゾクゾクし、木槌でトドメを刺される……。
ここの崩れた顔のゴア描写が本当にすごい。
これだけで元取れちゃうかもしれない。
もちろんただただグロいからという理由だけで本作を挙げたわけではない。
ストーリーに目を向けると本作の最後の被害者である主人公ダニーの恋人クリスチャンの顛末が特に面白い。
クリスチャンはダニーと付き合ってはいるものの、ダニーの鬱気味の性格にうんざりしており、心は離れ気味。
ダニーの誕生日をしっかり覚えてるペレと慌てて誕生日ケーキを準備するところから比較してみても雲泥の差だ。(結果だけ見るとこのペレの方がヤバい奴だったわけだが)
おまけに人の卒業論文をパクろうと急に言い出したり、帰りたがるダニーに「論文書きたいし……」と諭したりと嫌な奴。
初見時でのクリスチャンの最期は(クズとはいえ、これで村人に騙されダニーに捨てられて殺されるのも何だか可哀想だなクリスチャン)という少しモヤモヤした感想だったのだが、後に公開されたディレクターズカット版でクリスチャンの更なる悪行が追加されると(うーん、これは死!)という風に手のひらをすっぱり返せたので、ディレクターズカット版未見の方にはそちらも観るのをオススメしたい。
カタルシスが段違いだ。
家族公認セックスのシーンもより生々しくて楽しいしね!
とりわけ本作の魅力の根底にあるものが悪意であることは間違いないが、悪意を悪意として描いていないというか……もはや日常にまで希釈されているというか……。
薄皮1枚に包んだ恐怖を提供するのがうまい監督だと改めて感じた。
あと本作を見終えた後で生じた(あれって何だったの?)って疑問は、公式サイトの完全解析ページでほとんど全て明かされてるのでそちらも要チェック。
福利厚生が行き届いてて参っちゃうね!


初恋

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欲望うずまく新宿・歌舞伎町。天涯孤独のプロボクサー・葛城レオ(窪田正孝)は稀有な才能を持ちながら、負けるはずのない格下相手との試合でまさかのKO負けを喫し、試合後に受けた診察で余命いくばくもない病に冒されていることを告げられた。
あてどなく街を彷徨うレオの目の前を、少女が駆け抜ける。「助けて」という言葉に反応し咄嗟に追っ手の男をKOする。が、倒した男は刑事! レオは懐から落ちた警察手帳を手に取ると少女に腕をひかれ現場を後にする。少女はモニカ(小西桜子)と名乗り、父親に借金を背負わされ、ヤクザの元から逃れられないことを明かす。さっきレオが倒した男は刑事の大伴(大森南朋)で、ヤクザの策士・加瀬(染谷将太)と裏で手を組み、ヤクザの資金源となる“ブツ”を横取りしようと画策中。その計画のためにモニカを利用しようとしていた。


ヤクザと大伴の双方から追われる身となったレオは、一度はモニカを置いて去ろうとするが、親に見放され頼る者もいないモニカの境遇を他人事とは思えず、どうせ先の短い命ならばと、半ばヤケクソで彼女と行動を共にする。

かたや、モニカと共に資金源の“ブツ”が消え、それを管理していた下っ端組員のヤス(三浦貴大)が遺体で見つかったことを、その恋人のジュリ(ベッキー)から知らされた組員一同。組長代行(塩見三省)のもとで一触即発の空気が漂う中、刑期を終えて出所したばかりの権藤(内野聖陽)は、一連の事件を敵対するチャイニーズマフィアの仕業とにらみ、組の核弾頭・市川(村上淳)らと復讐に乗り出す。ヤスの仇を自らの手で討ちたいジュリもそれに続いた。

一連の黒幕と疑われたチャイニーズマフィアのフー(段鈞豪)もまた、売られたケンカを買ってシノギを乗っ取ろうと、モニカとブツの行方を追うために、構成員のチアチー(藤岡麻美)に命じて兵力を集めにかかる。

ヤクザと悪徳刑事にチャイニーズマフィア。ならず者たちの争いに巻き込まれた孤独なレオとモニカが行きつく先に待ち受けるものとは……。欲望がぶつかりあう人生で最も濃密な一夜が幕を開けた!
https://hatsukoi-movie.jp/sp/story.html

賛否両論の激風が吹き荒ぶ三池崇史監督が描く甘酸っぱいラブストーリー。
タイトルだけならそう思えなくもないが実際のところは、血と硝煙のバーゲンセールなバイオレンスクライムアクション群像劇
とはいえタイトルの『初恋』が完全にタイトル詐欺というわけではなく、見終えた後に(ああ……これは『初恋』だわ)と思わせるのは流石の技量だ。
ヤクでトリップする迫真の演技を見せる裏切り者ヤクザの染谷将太、殺された恋人の復讐のためにバールを振り回して暴れるベッキー、ハードボイルドな武闘派ヤクザの内野聖陽……と右を向いても左を向いてもやべー奴しかいない中で光るのが主演の窪田正孝くん。
彼のことをきっちり認識したのはドラマ版DEATHNOTEの時からなので私はかなりのにわかなのだが、彼が1番光るのはヤベー奴に振り回される一般人の役を演じているだと思ってる。
小西桜子演じるヒロインのモニカを守りながら戦うにしては濃すぎる面子を相手に、等身大の感情を露わにして立ち向かう姿を見ると応援する気持ちが沸いてくる。
モニカの幻覚を少しでも和らげようと頑張ってアドバイスをする彼の姿からは殺意のさの字も感じられず、ただただ普通でホッとする。
緩急の緩をたった1人で担っていると言っても過言ではないのではないだろうか。
と、ここまで本作随一の良心を褒め称えたが私の推しは顔正國演じるチャイニーズマフィアのボス、ワンさん。
生憎と本作ではじめて認識した方なのだが、カンフーキッドという映画シリーズに子役で出演していたらしい。(カンフー映画はあまり抑えていないので無知なのだが有名な作品なのだろうか……?)
彼の片腕ショットガンコッキングが本当にかっこいい。
『ターミネーター2』のシュワちゃんのスピンコッキングといい、男の子はこういうワイルドで派手なガンアクションに目がないのだ。(どっちかというと同作のサラ・コナーの片手コッキングの方が近いけど)
隻腕のハンデをものともせず内野聖陽と切り結ぶクライマックスの彼の姿は「粋」の一言に尽きる。
とにかく人が派手に動き回って派手に散っていく映画が観たい!という方にはピッタリの映画だ。


アンダーウォーター

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クリステン・スチュワート主演。絶体絶命!海底地震で目覚めた未知の生物が襲い掛かるSFパニック・スリラー!海面下約11,000m―。海底研究所でエンジニアとして働くノラは、ある日、大地震に遭遇する。その衝撃で壁が崩壊し、水が激しい勢いで吹き出し、研究所は破壊的な損傷を受けてしまう。なんとか生き残ったノラと他のクルーたちは、潜水服を着て近くの中間基地まで避難することを決める。そんな緊迫した状況の中、地震の影響で深海に潜む得体の知れない生物を呼び覚ましてしまう…。https://www.disney.co.jp/studio/others/1561.html

私と同じくらいの年齢の方の洋画の原風景は地上波のテレビだった、という方も多いのではないだろうか。
金曜ロードショー、土曜プレミアム、日曜洋画劇場、木曜洋画劇場、午後のロードショーetc……。
今でこそ地上波での洋画の放送は少なかったものの当時はほぼ毎日、地上波で洋画が流れていた。
数が多いということはそれだけ打率が低くなる……つまりB級の映画に触れる機会もそれなりにあったということだ。
『ザ・グリード』、『ディープ・ブルー』、『アナコンダ』、『トレマーズ』、『パラサイト』、『スパイダーパニック!』etc……。
これらのモンスターパニック映画で感じたあの気持ちを令和にもなって呼び起こさせるのが本作だ。
海底施設で働く300人余りの職員……が5分で6人にまで減らされるスピード感から、流れるような説明で個性的な6人の生き残りの特徴を描写する手際の良さ。
その6人を狙う未知のモンスターの存在。迫るタイムリミット。
使い古されたとも安心感があるとも言えるフォーマットは人を選ぶかもしれないが、既に挙げたB級モンスターパニックを見て育った私にとって本作の映像は数年ぶりに帰った実家のような安心感を与える。
あの頃に夢中になって観てた面白いんだかつまらないんだかよくわからない、でも確かにワクワクするあの感覚。
中々姿を見せない怪物にヤキモキさせられた時も、そしてその全身が顕になった時のカタルシスも、1人また1人と生き残りの数が減っていく緊迫感も、まるで変わらない。
良くも悪くも、楽しかったあの頃を懐古するにはピッタリの映画ということだけは保証しよう。
……ちなみに本作は日本での劇場公開がされておらず、日本でのソフト化も現在は絶望的なため各種配信サイトにて購入またはレンタルするしか視聴方法が無いのが残念でならない。


総括

以上が今年観た映画の中で選んだ4本だ。『アングスト/不安』とか『異端の鳥』とか『事故物件 怖い間取り』とかたくさん考えさせられたりたくさん笑ったりして、心に残る映画は他にもあるのだが私個人の満足度だけで見て今回の4本を選んだ。
新型コロナウイルスの流行もあり、今年の年末年始は家で過ごすという方も多いと思われるので、年末年始の退屈な時間に今回挙げた作品でも観てみようかと思ってくれる方がいてくれれば私は嬉しい。

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