【概念の発見、そのセンス・オブ・ワンダー】『未来のミライ』(細田守)

はじめの嫉妬、サーカス小屋のような子供サイズのテントに入ったあの場面にその後の流れを象徴させたつもりなのだろうか。犬になって家の中を走り回るくんちゃんにお母さんはゆっこ?とペットの名前を囁くのであって、ここに変態マジックリアリズムが始まり、そう僕ゆっこだよ!と矛盾した名付けを喜びを持って全力肯定する奇怪はその突き抜けた疾駆と相まって、簡潔明瞭これ以上なく的確にくんちゃんの心の内を、嫉妬という概念を発見したそのセンス・オブ・ワンダーを表現していたと思う。以降、この調子で並列的に物語は進み、最後くんちゃんは兄となって終わるわけで、単純な4歳児の成長物語としてなんとスマートな映画なことか。終盤のタイムリープは、普通なら種明かしといったメタ空間すら煙に巻いてしまうような気配があって感嘆しかけたが、しかしあそこはやや説明的すぎた。

未来のミライ/細田守/2018

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