【ある監督と女優の悲劇的ラブストーリー】『サンセット大通り』(ビリー・ワイルダー)

監督は映画もしくはカメラによって、16歳の少女を殺し、そして女優という生命を吹き込んだのだ。彼女は女優としてしか生きられなくなった。そして罪深い監督にとって少女=女優は自らの産んだ子供であり同時に一方で伴侶、無償の愛と永遠の愛の対象となった。その彼女の命がいまや、風前の灯火。時の残酷のせいだけではない。自らの罪に対する責任感の誤解とその誤解に発する間違った愛による延命処置のせいでグロテスクさを増す彼女の姿。事件発生。罰を受け、責任を果たす時、今一度彼女に最大の愛を、尊厳死を。それをもって彼女を生かし愛した映画そのもので彼女を再び殺すのだ。1秒24コマの死。レンズは銃口、フィルムは弾丸。映画の中で安らかに眠れ。愛する彼女は言う、クロースアップを、私を殺して、自分ではない監督の名前を呼びながら...
脚本家の幽霊が回顧する、ある監督と女優の悲劇的ラブストーリー。

サンセット大通り(Sunset Boulevard)/ビリー・ワイルダー(Billy Wilder)/1950

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