【誰しもの小宇宙】『ノマドランド』(クロエ・ジャオ)

ノマドたちが自らを疎外したものの象徴とも言える油を飲む機械仕掛けの鉄の箱を住まいとしていることを筆頭に、放浪という概念とは相反する何かへの執着を隠さない矛盾に慣れるにつれて、ヴァンが車輪の付いた小さな家にすぎず、誰しもの世界が小石の穴から覗く世界すなわちノマドランドであることに気付く。凡庸な世界観だがだからこそ普遍なのか。曙光を浴びて透き通るファーンの左目とそこに浮かぶ虹彩が印象的。

ノマドランド(Nomadland)/クロエ・ジャオ(Chloé Zhao)/2021

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