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バカルディというラム

バカルディというラムをご存知でしょうか

「バカルディは知ってます!」
「でもラムは知りません!」

前に書いた記事でも触れましたが世間的なラムの知識ってそんなもんです
酒販店で働いている私が言うんだから大体間違いないでしょう

ラムと言うお酒を日本に広めたいんだァッ!という気持ちは今回は一度置いておいて、私の好きなラムランキング1位と言っても過言ではないかもしれないバカルディというラムについて書いていこうと思います!

定番オブ定番

このバカルディというラム、名前は知っているという人が多い理由は何なのでしょう?
正解はッ!
どこにでも売っているからッ!
雑な回答になりましたが、コンビニやスーパーなどでも見かける事が多く、価格も比較的安いので手に入りやすいからだと思われます

安いって事は対して美味しくないって事でしょ?

はいそこの人、許しません
嘘です許します

こういう考えの人、多いんですよね
安かろう悪かろうという言葉がありますが、お酒に関しては(他の食べ物飲み物でも言えるかもしれませんが)当てはまらないことがしばしばあります

なぜかと言うと「味覚」なんて人それぞれだからです
私の味覚に対する考えは過去に書いた事があるので、お時間がありましたら読んでみてくれると嬉しいです

で、バカルディの話です
このバカルディ、製法としては「糖蜜」が原料である「トラディショナル製法」です
原産国はプエルトリコですが、キューバ創業の為ある特徴があります

それは「軽い」味わいであること
スペイン語で「ロン・リヘロ」と呼ばれる「軽いラム」である事が最大の特徴となります

軽いって事は味わい深くないんだ?

はいそこの人、最後まで読んで行ってくださいねェ

味覚が作用するものに対し、軽いというのはマイナスイメージを持たれがちです
人間の共通する心理的なものなようですが、味は濃い方が高級なものであるし、食器は重たいものの方が高級感がある、というイメージです

実際はそんな事ないのにねー

特に!ラムを始めとしたウイスキーなどの蒸留酒、スピリッツやハードリカーと呼ばれるものはそういった考え方の人が多いです

実際に味わいが濃いものは「熟成年数が長い=価格も高い」為、高級という言葉を使っても間違いではないかもしれません
しかし「高級=良いもの」という考え方はお酒を「舌」ではなく「頭」で味わっているので、真に「味」を理解しているとは言えないでしょう
味覚が作用するのは舌および鼻ですからね
熟成年数に騙されてしまう日本人が多い事も今度記事に書いてみます

さてさてバカルディの話に戻りますよ
バカルディの定番商品としては
スペリオール、ゴールド、ブラック、クアトロ、エイトの5種類
限定品としてレゼルバリミターダ、スパイストラムのスパイスド、リキュールであるリモンやモヒートなどがありますが基本は5種類のラムだと思ってもらって間違い無いと思います。

スペリオールはいわゆるホワイトラム、色のついていない透明なラムですね
ただ熟成をしていないわけではなく、バーボン樽最低12ヶ月の熟成をしています。
その後、ラムの中ではバカルディが一番最初に取り入れたと言われているチャコールフィルタリングで濾過をします。チャコールフィルタリングとは簡単にいうと活性炭での濾過を指します。活性炭で濾過をすることで雑味や尖りのあるフレーバーを取り除き、透明な色となります。
バカルディスペリオールを飲むと特徴がない、とよく言われます。
カクテルのベース用のラムでそのままでは美味しくないと。

そんな事ないんだよなァ

確かに熟成して色づいたラムと比べると、甘い香りや味わいは抑え気味に感じます
しかしじっくりと向き合ってみるととても柔らかで優しい甘み、ほんのりと香るバナナなどのフルーツフレーバーを感じられると思います。
なので焼酎と同じように飲むと美味しいですよ。
水割り、炭酸割り、お湯割……など
カクテルベースに確かに最適。でも普通に飲んでも美味しいホワイトラムなのです!

お次はゴールド。2年〜3年バーボン樽で熟成したものです。
シンプルに甘さを感じられるラムです。バーボン樽由来のバニラやナッツのような馥郁とした甘み。角瓶が手に入らなくなって寂しい思いをしているあなた!これを機にラムハイボール始めてみませんか!甘みがありますが優しく軽い甘みなので食事の邪魔をしませんよ!個人的には肉料理と相性抜群な印象。

ブラックはヘヴィチャー(よく焦がした)樽で4年熟成したものです。
ゴールドと比べてもだいぶ色味が濃くなっています。
味も当然濃く深くなっております。
ゴールドではあまり感じられなかったスモーキーな風味も感じられます。
そして甘みの他にもビターな味も感じられるでしょう。
スペリオールやゴールドと同じように飲むのもとても美味しいですが、しっかりと濃い味わいなので、ぜひストレート、ロックで飲んでみてほしいです。濃く、強く……書いてる間に飲みたくなってしまいますね。仕事の休憩中に書いてるので飲めないのが残念!

クアトロはスペイン語で4という意味で、その名の通り4年の熟成ものです
ブラックとの違いはバーボン樽ではなくアメリカンオーク樽で熟成しているところ
同じく木の柔らかな香りが感じられますが、バニラ!というよりも「木」という感じ
ブラックよりもどちらかといえばゴールドの少し濃い味わいという感じですね
飲みやすくどんな飲み方も出来ます!褒められた飲み方ではないですがストレートでガブガブ飲んじゃいます!だってスイスイ飲めちゃうんだもの!

お次はエイト
これです!こいつは最高だぞ!
その名の通り8年熟成のバカルディです
小さなアメリカンオーク樽で熟成していて、木の香り、スパイスの香り、フルーツのような香り、全てがバランスよく調和しており、濃く、余韻はあるがベタつきのない軽い味わい。ゆっくりとした時間のお供にはもちろん、ハイボールにしてもとても美味しいです。
ハイボールにする時、いつも通りタンブラーなど背の高いグラスでも良いのですが、ロックグラスなどの背の低いグラスで1:1の割合の濃いめのハイボールも贅沢感があって美味しいですよ。

ちなみにラムの熟成に関してですが、スコッチや日本のウイスキーの熟成年数とは比較ができないです。なぜなら熟成する場所の気候が全然違うから!
ざっくりと説明しておきますと、スピリッツを熟成するときは樽に入れて熟成することが多いですが、熟成をしていると中のお酒がどんどん揮発していきます。エンジェルズシェアとか洒落た呼び方もあったりします。天使の分け前という意味ですね。その揮発する量というのは気温が高ければ多く、低ければ少ないという事になります。日本やスコットランドでは比較的冷涼な場所で熟成します。対してラムは温暖な気候で熟成することが多いです。ラムの産地によって変わってきますが、例えばバカルディの蒸留所があるプエルトリコの気候は年間を通じて20℃を下回ることはなく温暖な気候です。その為スコッチウイスキーの8年とバカルディの8年では全く熟成の度合いが違っていて、暑い地域で熟成されるラムの熟成はスコッチの3倍早く進むと言われています。赤い彗星……いえ、何でもないです。つまり単純計算にはなりますがバカルディエイトはスコッチやジャパニーズウイスキーの24年ものに相当するという事になります。もちろん熟成というのはそう簡単なプロセスではないのですが、飲んでみると確かにスコッチやジャパニーズで8年熟成したものでは味わえない実に深い味わいを感じられます。
長期熟成のウイスキーが好きな方はぜひエイトを試してみてください。この価格でこの味わいなら大満足できるはずですよ。

余談ですがリッチな味わいで知られる「ロン・サカパ」はグアテマラのケツァルテナンゴで熟成をしています。海抜2,300mで年間の平均気温が20℃前後、冷涼な気候での熟成となります。なので20年以上の長期熟成も可能なのですね。まあロン・サカパに関しては熟成方法も少々特殊なのですが、それはまた今度!

さて以上が定番アイテム5種類の簡単な説明となります
残るはスパイスドとレゼルバリミターダ、そしてリキュール達です
先にお伝えしておくとレゼルバリミターダはまだ飲んだことがありませんッ!買おう買おうと思っているのですが、ついまだ飲んだことのない蒸留所のものを優先してしまってですね……今年は買ってみようかなと思っております

スパイスド!ですが甘くて美味しいスパイストラムになります。ちょっと前まで「オークハート」という商品名でした。
スパイストラムとはラムにバニラやシナモンなどのスパイスやフルーツなどを一緒に漬け込んだフレーバーのあるラムです。現地での定番な飲み方で、大昔はスパイスが体に良い作用をもたらす事から薬のような飲み方をしていたという話もあるようです。
スパイストラムで有名なのはキャプテン・モルガンがありますね。ありゃあ優秀なラムだぜ〜。キャプテン・モルガンについても今度書きましょうね〜
熟成による甘さというよりはバニラとシナモンをたくさん使ったお菓子のような甘さです。そのままでも美味しいカクテルのような美味しさですが、コーラとの相性はもちろん、トロピカルフルーツジュースで割ったりするのも絶品です。あとは少量の砂糖とお湯で割ったラムにバターを浮かべるホットバタードラムにもオススメです!

最後にリキュール達。日本で定番品として見かけるのはリモンとモヒートですね。
何となくわかるとは思いますが両方ともバカルディをベースにしたリキュールになります
リモンはその名の通りレモンフレーバーのリキュール、モヒートは炭酸水で割るだけで簡単にモヒートが作れる商品となっております。
リキュールなのでラムとしての評価はしません。しかしやはりバカルディ。癖がなく飲みやすいものに仕上がってますね。ラムってよくわからないけどとりあえずバカルディって名前知ってるしこのリキュール買ってみようかな〜という感じでぜひラムに興味を持っていただけたらいいなという感じです。
興味を持ったら自分の好きなラムでモヒートを作ってみても楽しいですよ!

リキュールに関するちなみの話ですが、色々なハードリカーをベースとしたリキュールがあります
特にバーボンベースのリキュールは酒屋でなくともスーパーなどで見かけることがあります
ハニーリキュールとアップルリキュールが何となく多い印象です
これらは、今はどうなのか分かりませんが、もともとは熟成が上手くいかずウイスキーとして使えなかった原酒の再利用的な商品だったそうです
しかしメーカーの予想とは裏腹に、若者を中心に人気を集め、作り手達は困惑した、という話を聞いたことがあります

スパイストラムとそれらスピリッツベースのリキュールは似て非なるものなので注意が必要になります
ラムベースのリキュールも存在しますしね。ココナッツフレーバーが人気のマリブが有名でしょうか
いずれも気軽にお酒を楽しめる良い商品ですよね

さあ長々とバカルディのラムについて書いてみましたがいかがだったでしょうか
今回は商品の特徴をまとめただけですが、歴史なども紐解いていくと様々な発見や、意外なものとの繋がりがあったりして、とても楽しいです。それらはまたいずれ書けたら良いなと思います

長文でしたが最後まで読んでいただきありがとうございました
また次の記事も読んでいただけたら嬉しいです
よろしくお願い致します!

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