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【書評】和久井光司『ヨーコ・オノ・レノン全史』

オノ・ヨーコについていつか詳しく調べたいと思いつつ、日常に忙殺されて何となく日々を消化していた。そんな時にこの人についての決定版評伝が出ると聞き、いてもたっても居られず入手して読破した。評伝の難しい所は書かれる対象と筆者の距離感で、それが遠すぎても、近すぎても興醒めしてしまう。そして適度な距離感を保ってオノ・ヨーコの面白い評伝を書くのは間違いなく凄く難しい。

例えば彼女がやってきた芸術活動に対して叫び声を上げてるだけとか、ジョンの曲が聴きたいのにアルバムに交互に曲が入ってるせいで嫌々聴かなきゃいけないとか、お世辞にも道徳的とは言えない私生活等々批判しようと思えば材料が山ほど有る中で、あくまで事実に立脚しそれでいて愛と平和という綺麗事に終始しないのだから和久井さんは凄いとしか言いようが無い。でも事実を追ってくとやっぱジョンにはヨーコが必要だったんだよなーと思えてくるのが不思議だ。

そして本書は最近の評伝とかに有りがちな読者より先に書き手が盛り上がってしまう大いなる過ちにも陥っていない。300ページ超の厚さに白を基調としたシンプルなカバーデザインも良い…ホワイトアルバムっぽいし、最近の新書で有りがちな筆者のデカデカとした顔写真が掲載されていないのも素晴らしい。それと1ページごとにこれでもかとばかりに外人の固有名詞が出てくるのでお勉強にもなる。オノ・ヨーコが大好きな人もアンチも決して気持ち良くならない本だけど、本来評伝とはそうあるべきだし、この本がバンバンバンバン売れれば良いなーと思いました。

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