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埃を拭き取って

ひとは、経験が積み重なって、いろいろな感情に慣れていく。

だから、大人になると時間が早く進んでいるような錯覚におちいるそうだ。そういえば、1月はいつの間に終わったんだろう。ホイッスル聞こえなかった。

今僕の目の前には、文庫本が積み重なっている。読まれずに、ずっと積み重なっている本もある。

控えめに言って引きこもりだったころ、近所の古本屋にだけは出かけていた。昔の文庫小説なら、一冊100円。100円で物語が一本読める。”なんてコスパがいいんだ”と感動し、たくさん買った。積み重ねるために買ったわけじゃないはずだ。まあいいや。

平日の昼間の古本屋にいる人たちは、それだけでドキュメンタリーが作れる。すべからくみんな死んでいる。

あの人たちは今何をしてるのだろう。同じように昼間に古本を漁っているのだろうか。

通っていた病院で、僕の隣に座っていたあのサラリーマンは今どんな暮らしをしているのだろう。なんとかなっているだろうか。

時折、僕の記憶に積み重なった、”関係ない人”たちのことを勝手に考える。

僕の人生で、なんとなく同じ場に居合わせたひとを数えていったら、小さな町が作れそうだ。

そんなことをしていたら、今夜も一瞬で終わった。僕は大人だから。

「スキ」を押して頂いた方は僕が考えた適当おみくじを引けます。凶はでません。