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記憶の蘇生

Podcastの「いんよう!」をきっかけで本書を買うことになった。定期的にサンキューたつおさんが出演されるようになり、きっと、頭の片隅に残っていたのだろう。

実際のところ、著者のサンキューたつおさんは元々知っていた。『落語』という話芸に関しては、アニメの「落語心中」「超入門!落語 THE MOVIE」あたりから興味を持ちはじめていて、「渋谷らくご」に行きたいなぁーと思っていたからだ。ナマで落語を聞く敷居をグッとさげている活動と個人的には思う。
(残念ながら日程が合わず、1度も行けていない.......休み取ろう。)

特に対話コミュニケーションとして、間の取り方、言葉のチョイス、引き込まれる話の展開と話し方は、仕事にも通ずるのでは?と違う角度で落語を見始めたら…ってこれが書きたいことではないので、やめておこう。落語の素晴らしさを語れる方は、自分よりもたくさんいらっしゃるので。

さて、今回は『これやこの サンキュータツオ随筆集』(KADOKAWA)を読んだ。

普段、随筆集というジャンルはあまり買わないのだけれど、自粛期間中に書店によく足を運んでいたので、ちょうど平積みされており反射で手に取った。

実際読んで見ると、これがなかなか引き込まれる文章で、東京が地元の私には、特に情景が浮かぶ部分を多く感じられた。
具体的なオススメはどこ?と聞かれたら、

「読んでくれ。」

の一言につきる。

正直、ダラダラとあれこれ内容について書くのは無粋なのだけれど、さすがに、自分の読書&思考記録にならないので、少しだけ。

本書は、帯にある「記憶を語り継ぐ」のとおり、すでに亡くなられてしまった、著者と関わりのある方々の追憶集という感じだった。時間軸によるものもあるかもしれないが、それぞれの物語のボリュームが異なるところも、記憶を紡いているところが感じられて、ホント素晴らしかった。

本書を読み進めるなかで、僕自身も祖母との記憶が蘇った。その当時の気持ちもすべて。かなり鮮明に・・・。

その記憶というのは、生きていた頃の思い出はもちろんだが、亡くなる前後のあたりの情景は、自分でも驚くほどに蘇ったのだ。亡くなる直前から葬儀までの数日間を断片の写真でなく、動画として…。

これほどまでに強烈なイメージが残っていたはずなのに、毎年墓参りには行っているのできっかけがはあるはずなのに、どうして10年以上思い出すことがなかったのだろうか…。

僕にとってはとても大切な記憶、そして想い。それを思い出させてくれた本書には感謝しかない。本の感想として、良い本だった、面白かった、勉強になったなど、これまでもさまざまあったが、「感謝する」なんていう気持ちになったのは正直初めてだった。

この本には、自分に投影や共感できる物語がきっとあると思うので、海馬の隅っこの方にいる物語を抱えた細胞にフォーカスを当てててくれる、そんな本でした。図らずも、この読書記憶ノートに近いところも、予想以上に刺さったのかもしれない。