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柵差別

この世界では"柵差別"というものがあって
柵の外の人とは関わってはいけないというルールがある。
自分の住んでいる柵の外にも、内にも柵で区切られた世界は続いていて、自分が生活している柵の外の人は全員、人ではない恐ろしいものに見えている。

私が生きている空間では、青々とした草原の端に柵が存在した。
その柵は私の膝くらいの高さでボロボロの木で作られている。乗り越えようと思えば誰でも乗り越えれるし、壊す事だってできる。しかし、誰も乗り越えようとしない。そもそも柵のある場所に近づく人すらいないのだ。


ある日、何故か私はとてつもなく退屈で、散歩をして区切られた世界の中をうろうろと歩き回っていた。そうすると

なにしてるの?おーーい

と草原のほうから私に向かって話し掛ける声が聞こえてる。
どうやら声の主は柵外の人らしい。


おーーい何してるって聞いてるんだけどさー!


大人や周りの人からは柵外の人とは関わってはいけないと何度も口酸っぱく言われていたので無視をしてその日は家に帰った。

次の日も私は退屈で散歩に出かけた。
するとまた

昨日もいたよねーー声聞こえてるよねーー

と昨日と同じ場所から呼びかける声が聴こえてきた。


しつこい。他の人に何か思われては嫌だと思った私は意を決して誰も近づかない柵の側まで行くことにした。

どんな恐ろしい姿をしているのか、退屈だった私は怖いもの見たさもあり足を進めた。
しかし柵に立っていたのは、自分と全く同じ人間だったのだ。

聞いていた話、それによって想像していたビジュアルからかけ離れてすぎている。私と同じ、普通の姿形をしている目の前の彼を見て狼狽えていると、柵外の彼が少し笑いながら言った。


人が言うことを全て信じてはいけないし、この世界は嘘だらけなんだよ。


緊張がほぐれ、安心し切った私はその日から柵外の彼と何度か会い、色んな話をしに行った。
この世界がどうなっているのか、柵は何個も続いて世界を分断している事。
一番端の最下層と一番上の最上層の人間だけが、自分の置かれている階級を知る事ができる事。
真ん中の層は内にも外にも柵が立っているから、自分の階級がわからないと言う事。
実はこの世界に生きている人全員同じ人間なのに、柵外の人には人外のような見た目に見えるようになっている事や、昨日のご飯のこと。
全て彼が教えてくれた。

毎日退屈だった私のただ一つの退屈凌ぎになった。

ある日、また話をしようと待っている彼の元へ行き、昨日の話の続きをしようとした瞬間。

人の形をしていた彼が真っ黒になった。
黒よりももっと黒いドロドロした闇みたいな色。

驚いて逃げようとするのも束の間



ほらね、嘘だらけって言ったでしょう。



と言ってサバイバルナイフで深く刺された。

そこで目が覚めた

夢でよかった

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