スペイン人彼氏K①~Kさんとの出会い~

私には今スペイン人の彼氏Kさんがいる。

出会いは都内のカフェ。その日は仕事で銀座に来ていたのだが、早く着きすぎたのでカフェの2階席に入って窓際のカウンター席で休憩していた。そうすると一人の外国人男性が入店した。今まで何人もの外国人と交際してきたので、外国人男性は割と見慣れている私。外国人だったら誰にでも目がいくわけではない。でも今回はなぜだかすごく目が引かれた。すっごくイケメンというよりは、なんとなくオーラを感じた。大人として成熟している雰囲気のオーラとでも言おうか。そうすると彼とバチっと目が合い、その時「あ、この人後で私に話しかけてくるな」と直感が働いた。一応、ニコっとだけ笑ってパソコンに目を戻した。

彼は私の近くの席に座ってコーヒーを飲み、ふぅっとため息をつきながら外を眺めていた。その姿をガラス越しにチラチラ観察する私。(変態か!笑)

すると私が座っていた席の隣の男性が立ち去り、席が空いた。その途端に先ほど目が合った外国人男性が "May I sit here?(ここに座ってもいいですか?)" とやってきた。

(「ほら、やっぱり話しかけてきた」)と内心にやけながら、でも冷静な態度で、"Sure, why not.(もちろん、どうぞ)" と答えた。

そうすると、彼は突然名刺を差し出し、自分のことを話し始めた。名前はK、スペイン出身。この外が見渡せる席が好きなこと、今日は仕事のミーティングでこの辺に来ていること、忙しくて仕方がないこと、他国で中東系の雑貨を生産する工場を持っており、それを日本でも輸入販売していること。

ほんの30分程度話した後、私は仕事に行かなければいけない時間になり、"Sorry I gotta go today. I have a meeting in 10 minutes.(ごめんなさい、そろそろ行かなきゃ。10分後にミーティングがあるの)" と言って立ち去ろうとしたら、そのミーティングの後は何をしてる?もう一度会ってお茶しよう、連絡先を教えてくれ!と怒涛のアプローチ。結局ミーティングが思ったよりも長引いたため、LINEで今日はお茶は出来ないと伝え、翌日ディナーに行くことになった。

翌日彼のおすすめのレストランでディナーをし、おしゃれなバーに行った。正直その時は私はそこまで彼に興味がなかった。彼が自分の話ばかりするからだ。そこで "You've been talking about yourself too much. Don't you wanna know more about me?(あなた自分の話ばかりしすぎ!私のこともっと知りたいと思わないの?)" とはっきり言った。

そうすると、"I don't need to ask about yourself. I look at your eyes and I know most of the things about you.(聞かなくても目を見れば大体のことは分かる)" と言い、こう続けた。"You are looking for what you want to do in your life but you don't know what's the best for you yet.(君は今人生に迷っているね)" と。おいおい占い師かよ、とつっこみたくなったものの、今まさに路頭に迷っていていたので、図星をつかれてムスっとしてしまった。その他にも細木数子のズバリ言うわよバリにめちゃくちゃ言われ、完全に何も言い返せなくなってしまった。

しかも彼は本当に陽気で、悪く言うとうるさい。ずっとしゃべっていて、ずっと笑っていて、正直雰囲気がいいバーに行ってもムードもなにもない・・・とがっかりした。

私も彼もあまりお酒を飲まないタイプだったので2杯ずつ飲んで、バーを後にすることにし、さて帰ろうかと思ったら、タクシーで送っていくよ、と言われタクシーに乗った。

結局彼は図々しくも私の部屋にも上がり込み、私が作ったウィスキーコーラを2杯飲んで帰っていった。特に何も手は出されていない。彼は翌日も、その翌日も仕事を終えて23時頃にうちに来て、2~3時間しゃべって帰って行った。

外国人との恋愛をしたことがある人なら分かると思うが、日本人のように「私と付き合ってください」という告白の儀式は欧米諸国では存在しない。しかし彼は、"I want you to be my girlfriend. I want a real woman next to me.(僕の彼女になってほしい。本物の女性が横にいてほしいんだ)" と言い続けた。検索したところ、スペイン人のごく一部はそのような告白めいたことをする人もいると書いてあったので、そういうことなのかと納得したが、それでも私は疑心暗鬼になっていた。なぜなら、私に言い寄ってくる男性にしては「高すぎる」からだ。経営者で都内の一等地の有名なタワーマンションに暮らしていて、女性には絶対に困らないであろうルックスをしていて、なぜ私に言い寄ってくるのか。その辺にもっと綺麗な女性なんていくらでもいるはずなのに、何を企んでるんだ、と。

ここが私の悪いところなのだ。外で外国人にナンパされたり付き合う前のデートを楽しんだりするのは大の得意なのだが、実際に付き合うとなると途端に色々と考えてしまうのだ。

ただ、なんとなくこの彼はこのままフェイドアウトしてしまうには勿体ないと思い、はっきりと思いのたけをぶつけてみた。

" I don't understand why you want to be with me. I don't even have proper job now, and as you said, I don't know what I want in my life yet. Why do you still want to date with me? Or is this what you always do to sleep with girls?(なんで私と付き合いたいの?今まともに仕事すらしてないし、あなたが言った通り人生に迷ってる最中だし。なんで付き合いたいのかわかんない.。それともいつも女の子とセックスするためにこういうことしてるの?)" と伝えた。

すると彼は、" Are you out of your mind? Yes, I am handsome, my business is going pretty well, I am economically very stable. I can sleep with any girls anytime if I want. Do you think I take this much time to sleep with you? I told you I want a real woman next to me. I really like you. BAKA!(あたまおかしいのか?確かに僕はハンサムだしビジネスも好調で経済的にも安定してるから、誰かとセックスしたいだけならいつでもできる。セックスしたいがために君にこんなに時間を割くと思う?本物の女性が横にいてほしいって言ったでしょう?君のことが本当に好きなんだよ。ばーか!)" と言ったのだ。

最初は彼のことをうるさくて面倒な男だと思っていたのに、そのころには彼の明るさや精神的に安定している面を知り始めていて、さらにこんな殺し文句を言われて、結局私は彼と付き合ってみることにした。

付き合うと決めた後、彼は帰り際にこう付け加えた。

"If you have ANY questions, you can ask me anything. I am always black and white. I can answer you anything. Don't keep it in your mind. Just ask me, ok?(何か聞きたいことがある時はいつでも聞いてくれ。僕はいつでも白黒はっきりしてるから君のためなら何でも答える。絶対にため込んじゃだめだよ、ちゃんと聞いてね)"

以前日本人の男性と付き合っていた時は、「これを言うと気に障るかな」とかいちいち気にしたり、でも彼もあまり本音で話してくれないから何を考えているか分からずもやもやした経験があったため、彼のこの言葉は幾分か私の気持ちを楽にしてくれた。彼と付き合っている期間は正直に自分の思っていることは何でも話そうと思えた瞬間だったのだ。


こういう恋愛、悪くない。

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